残照亭の日日

残り少ない日々、自分の日常や古い話などを時々書きます。
故「藤沢周平」のファン。思い出の作品などを書いてます。

「藤沢周平」⑭~たそがれ清兵衛は、藤沢自身か?~

2023-09-30 | 藤沢周平作品

*敬称略 悪しからず

藤沢作品に「たそがれ清兵衛」という短編が有る。

映画になり、ずいぶん話題にもなった。

*映画のパンフレット

作品は、藤沢の苦労時代そのままである、大方はそう評しているが

現実は、もっと苦しく切なかったのである。

最初の妻を亡くした直後は、乳飲み子を抱え、子守り兼に

呼び寄せた母は目を患い、身動き取れないほどの大変さに

なってしまう。

誰でもいいから、助けて欲しい。手を貸してほしい。

この時期、藤沢は誰かれなく「結婚」を迫ったようである。

後年、藤沢はこの時期の自分を恥じたかのように、封印している。

四度の結婚も隠して措きたかったかもしれない。

「たそがれ清兵衛」に書かれたのは、その当時の一部であろう。

故郷鶴岡への、恨みも封印したままであり、決して語ることも

書くこともなかったのである。

*「たそがれ清兵衛」初出誌 小説新潮 1983年9月号 

昭和58年 56歳

最初の妻「悦子」没後、20年の歳月が過ぎている。

売れっ子作家として活躍し、生活に余裕が生まれて数年経っている。

藤沢にとって、一番良い時期に入っていた頃ではなかったろうか。