残照亭の日日

残り少ない日々、自分の日常や古い話などを時々書きます。
故「藤沢周平」のファン。思い出の作品などを書いてます。

「藤沢周平」⑳~時代小説で人が死ぬわけ~

2023-10-21 | 藤沢周平作品

*敬称略 悪しからず

初期の藤沢作品では、登場人物がよく亡くなっている。

藤沢「~まあ~、あんまり本当は殺さないで済めば良いんですけどネ

だけどね、僕は戦争には行かなかったけど、

人間は死ぬものだって事が、非常にネ、病院生活をしていたんで、

いづれ人間は死ぬものだって言うのが一つ、それから自分はいづれ

死ぬんだって、こういったことで、死って物が頭に入ってくるんでネ・・

手術をしましてね、肋骨を5本ばかりやってね、手術をやったんですよ。

あの時だって、死ぬのと紙一重でしたネ。助かるとは思ってなかったしね。

そういう風な経験が基調として残ってるんじゃないかナ~。

それと、人は中中死なないもんだと、言う所もあるんですよ。

本当にもう、明日にも駄目かって病人がネ、どうにか手術に漕ぎ着けて、

元気になって退院して行く例を見ましたね。

逆に、非常に強い人が、あっけなく死んで行ったりネ。

だから、戦争には行かなかったけど、人が死んで行くのは随分見て

きましたネ。

だから、人を殺すってのいうのは、別に僕が惨酷なわけでなくてね、

人間の儚さって言うのを僕はいつも観てるわけですよね。

だから、こう、死ぬ場面って言うのは、一人の人の死というよりは、

人生の儚さっていうのを書きたいと思うわけですネ。

やっぱり、だから殺しちゃう場面も有るわけですね。

・・・別冊小説現代にネ、300枚位のを書いたんです。

注:〈狐は黄昏に踊る〉

これもネ、随分考えたんです。なるべく死なないようにしょうってネ。

でも、結末を着けるために、全部殺しちゃったんです。

結局は、人生観の問題だと思いますネ。(略)

だから、僕は明るい明朗な作家と言えないわけですネ。

「又蔵の火」に書いたとおりです。根底には有るわけですね。」

◎別冊小説現代「狐は黄昏に踊る」昭和51年新秋号 初出

・・単行本は「闇の歯車」と改題

藤沢の作品は、まだ暗味を歩いている頃の作品