残照亭の日日

残り少ない日々、自分の日常や古い話などを時々書きます。
故「藤沢周平」のファン。思い出の作品などを書いてます。

「藤沢周平」⑱~鴎外病・周五郎病~

2023-10-16 | 藤沢周平作品

*敬称略 悪しからず

時代小説作家として、直木賞は受賞したものの、まだ売れっ子

になる前の藤沢周平、昭和50年初めの頃の話である。

どんな本を読み、好きな作家はいたのだろうか?

藤沢「「ジャッカルの日」や「オデッサファイル」なんか読みますよ。

面白いですからね。チャンドラーなんかも・・」

なるほど、そういえば「彫師・伊之助」なぞに雰囲気が出ているナ~

藤沢「伊藤圭一さんなんかいいですよね。大学の先生と作家の兼業で

うらやましい。小説だけに集中しているのはね~・・・」

藤沢「他の作家の時代小説は、直木賞受賞後はあまり読まないですね。

時代小説には「鴎外病」「周五郎病」というのがあって、どうしても

真似が出る事が有るんですよ。"高瀬舟"とか"婦道記"の影響がね~」

藤沢の作品は、士道ものにしても市井ものにしても、独自の世界を

描いていく。

藤沢「「赤穂浪士」の話というと、大佛次郎さん。

「宮本武蔵」は吉川英治さん」という、凄い作品が有るでしょう。

だから、私が書くとしたらネ~、どうかくか・・まだね・・」

藤沢は、この時期まだ雌伏の時代だったようである。

再初期の作品の多くの話は、のちの作品の中で、少しづつ形を変えて

出てくる。それは暗味が薄れて行くにしたがって、作品の明るさに

通じていくのだが、時折、思い出したように姿を現すのは"業"の

なせるところだったのだろうか。