>いまだに思い出すのは、壁に吊るしてあった何本かのネクタイである。
朝、私が新しいネクタイを取ろうとて手を伸ばすと、ゴキブリが四方八方へと逃げだした。
私は卑屈な気持ちで、
やはりゴキブリの巣となっているらしい不潔な安食堂で食事をしなければならなかった。
ゴキブリと同居し、ひどいものを食べ、未来に何の希望もない
これが私の人生のすべてなのだろうか?
私の切なる願いは、読書のための余暇であり、
遠い学生時代に夢見ていた本を書く時間であった。
今の2つの仕事に就いてから、読書をする習慣が全くといっていいほどなくなった。