先週、父を見送ってきました。
いつかは来ることとはいえ、やはり寂しさはぬぐえません。
今はただ、安らかにあれと願うばかりです。そして、私にとって素晴らしい人生を残してくれたことをひたすら感謝する毎日です。
昨年から入退院を繰り返し、食欲が落ち、あんなに畑の世話をしていた父が寝てばかりの生活になり、やせ細り、最後には骨と皮になり、病に蝕まれて衰えていく姿を見守ることしかできなかったのが残念で、悔しくて、父がかわいそうで、悲しくなります。
それでも、顔を見せると嬉しそうに声をかけ、元気そうに振舞ってくれるので、心のどこかで不安に思いながらも私たちに希望を持たせてくれたのが救いでした。
春休みに娘たちと一緒に実家に行った時も、やせ衰えたとはいえ、まだまだ会話もでき、娘たちに頑張れよと声をかけてもらい、二人とも、その声に応えて笑顔で帰ることができ、それが最後となってしまいました。
一ヶ月後、入院していた父が誤嚥性肺炎になったと知らせを受け、土日をはさんで出かけました。家には寄らず、直接病院に着くと、妹が出てきて、寂しそうに笑いかけ、
「お姉ちゃん、びっくりしなさんなよ」
と言ってドアを開けてくれました。
そこには今までの私の知っている父ではなく、まるで骸骨のような、苦しそうに息をする見知らぬ老人が横たわっているのでした。
“びっくりなんか、するものか”
気持ちを立て直して近寄り、片手を上げて空(くう)をつかもうとしている父の手を握り、
「お父ちゃん、来たよ~」
と、話しかけました。
細く開いた目でわたしをじっと見つめ、しばらく動きませんでした。
妹が後ろから
「お父さん、おねえちゃんが来てくれたんよ、わかる?」
と、声をかけると、ぱっと顔に表情が戻り、何かを話しかけてくれました。
でも、もう声は出ず、はあ、はあ、と息が漏れるだけです。
「お父ちゃん、何言ってるかわかんないよぉ」
笑顔で言ったそのあと、思わずこみ上げてきて握り締めたその手を抱え込んで、ぽたぽたっと涙を落としてしまいました。
妹も後ろで泣きながら
「昨日からずっとそうやって手を上げとるんよ。握ってやっておろしてあげるんだけど、すぐ上げるんよ。」
「こないだからお母さんやキヨシと交代で泊まって様子を見よるんよ。看護婦さんがついててあげてくださいって。」
「・・・・じゃあ、今日は私が泊まるね。普段はできんもんね」
私は最後の夜を父と過ごすことになりました。
いつかは来ることとはいえ、やはり寂しさはぬぐえません。
今はただ、安らかにあれと願うばかりです。そして、私にとって素晴らしい人生を残してくれたことをひたすら感謝する毎日です。
昨年から入退院を繰り返し、食欲が落ち、あんなに畑の世話をしていた父が寝てばかりの生活になり、やせ細り、最後には骨と皮になり、病に蝕まれて衰えていく姿を見守ることしかできなかったのが残念で、悔しくて、父がかわいそうで、悲しくなります。
それでも、顔を見せると嬉しそうに声をかけ、元気そうに振舞ってくれるので、心のどこかで不安に思いながらも私たちに希望を持たせてくれたのが救いでした。
春休みに娘たちと一緒に実家に行った時も、やせ衰えたとはいえ、まだまだ会話もでき、娘たちに頑張れよと声をかけてもらい、二人とも、その声に応えて笑顔で帰ることができ、それが最後となってしまいました。
一ヶ月後、入院していた父が誤嚥性肺炎になったと知らせを受け、土日をはさんで出かけました。家には寄らず、直接病院に着くと、妹が出てきて、寂しそうに笑いかけ、
「お姉ちゃん、びっくりしなさんなよ」
と言ってドアを開けてくれました。
そこには今までの私の知っている父ではなく、まるで骸骨のような、苦しそうに息をする見知らぬ老人が横たわっているのでした。
“びっくりなんか、するものか”
気持ちを立て直して近寄り、片手を上げて空(くう)をつかもうとしている父の手を握り、
「お父ちゃん、来たよ~」
と、話しかけました。
細く開いた目でわたしをじっと見つめ、しばらく動きませんでした。
妹が後ろから
「お父さん、おねえちゃんが来てくれたんよ、わかる?」
と、声をかけると、ぱっと顔に表情が戻り、何かを話しかけてくれました。
でも、もう声は出ず、はあ、はあ、と息が漏れるだけです。
「お父ちゃん、何言ってるかわかんないよぉ」
笑顔で言ったそのあと、思わずこみ上げてきて握り締めたその手を抱え込んで、ぽたぽたっと涙を落としてしまいました。
妹も後ろで泣きながら
「昨日からずっとそうやって手を上げとるんよ。握ってやっておろしてあげるんだけど、すぐ上げるんよ。」
「こないだからお母さんやキヨシと交代で泊まって様子を見よるんよ。看護婦さんがついててあげてくださいって。」
「・・・・じゃあ、今日は私が泊まるね。普段はできんもんね」
私は最後の夜を父と過ごすことになりました。