☆映画の旅の途中☆

色んな映画をどんどん観る旅

『エロス+虐殺』(1970)

2015年05月17日 | 邦画(クラシック)
『エロス+虐殺』(1970)
監督吉田喜重
細川俊之/岡田茉莉子/楠侑子/高橋悦史

【作品概要】
松竹ヌーヴェル・ヴァーグ出身の吉田喜重監督が、大正のアナーキスト大杉栄が三角関係のもつれから刺された事件を取り上げ、大正時代と現代(昭和40年代)のそれぞれの風俗と人物たちを、時間軸と空間軸を交錯させ前衛的な手法で描いた愛と憎しみのドラマ。(Yahoo!映画より)

【感想レビュー】
うあぁ…
凄まじい映画を観てしまった…‼

165分バージョンの方を観ました。最後に予告編を観たら、無かったシーンがあったので、216分のロングバージョンだったらあるのかもしれない。そうか…こちらもレンタル出来たのに気付かなかった

…何だろう。はっきり言って難しかったです。解るようで解らない。混沌としている感じ。
主旨はなんとなく解しても、一つずつのシーンの意味が解せないところも多いし…でもまぁ、大体でいいかな
ここはひとつ…分からないところがあっても感じれば…

そういう事で言うと、分からなくても楽しめるところが沢山あります…‼
終始スタイリッシュで格好良い画の構図。衣装、髪型、小物、背景のインテリアなどがいちいち格好良いですし

ホテルの廊下を引きで撮ったところ。こういうアングルの画で、今まで観た中で一番ときめいたかもしれません

モノクロ映像での光と影の陰影、眩いくらい発光する白、暗闇の中の黒、シャワー室の迸る水…あげたらキリがなくて、それらの表現に圧倒されます。モノクロであるがゆえの表現の多様さ

台詞も面白い。大正時代と現代が交互に進行していき、やがて現代に大正時代の登場人物が現れ、現代の人物がインタビューしたり、ラストは写真を撮ったりするのですが…。

現代の方の台詞は、たとえ会話をする設定の時でさえ、何か自分語りをするようで噛み合わず、自己完結していくようだった。原田大二郎さんが格好良かった…!←衝撃

そして大正時代の方は普通に会話が成立するのですが、大杉栄の思想が凄い…‼自由恋愛論者なのですが。
妻がいながら愛人を二人もつ⇒二人目の愛人が身籠る⇒一人目の愛人に刺される…

…と言った具合なのです。しかし細川俊之さん演じる大杉栄が二枚目過ぎてドキドキします

細川さんてお若い頃はこんなだったのですね



そして相変わらず岡田茉莉子さんはお綺麗です本当に美しいです


現代の方のまるでダンスのような大きく動く立ち回りも、大正の方の愛人に刺される派手な立ち回りも、無茶苦茶格好良いです
大正の方は日本家屋を利用した画が面白くて、居なくなった⁉と思ったら襖が開いて現れるアクションにびっくりしましたまた、襖という襖がバタバタ倒れていくところも斬新…‼

襖に倒れた大杉栄は、まるでキリストの磔刑を彷彿させるかのように両手を拡げている。
また、現代の方では、男女が十字架を挟むように立ち、両手を拡げて磔刑のようなしぐさをするシーンがある。
こちらは笑顔で。

大杉栄を見せしめのように虐殺した国。そして映画が作られた1970年、この頃の学生運動の隆盛と衰退。国家に対しての個々人の生き方…のようなものを考えさせられる。

こういう作品があるのですね。凄い映画でした
そして吉田喜重さんの旅は続く


心に残った台詞メモ
伊藤野枝『…私はずるい女だったのかもしれません。貴方のこと、スプリングボードにして、ちょっと生活を変えようとしただけかも。結び目をひとつ解こうとしただけなの。』
大杉栄『結び目を解こうとしたら、全体が解けてしまった。』

和田究『解ったぞ。
彼は死を選んだんだ。
つまり死は最高の快楽と考えたのさ。
死は価値を逆転させるんだ。』

正岡逸子『貴方は自分から逃げたいのね。破綻したのは理論じゃなくて、革命そのもの。つまり貴方自身と知っているのよ。その不安から逃げ出す為に罠を仕掛けたんだわ。』

大杉栄『革命とは自己否定に過ぎん。僕とっては僕を抹殺すること。それは、刃を飲み込んだまま愛と恐怖を囁きながら近づいてくる。君のように。並の人間には怖いが、これに勝る恍惚はない。』

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