☆映画の旅の途中☆

色んな映画をどんどん観る旅

『小説吉田学校 』(1983)

2015年11月20日 | 邦画(クラシック)
『小説吉田学校 』(1983)

監督:森谷司郎
出演者/森繁久彌、芦田伸介、リック・ジェイソン、池部良

【作品概要】
戦後GHQ占領下の日本を独立させるべく、首相・吉田茂(森繁久彌)はライバル政党との確執などをくぐり抜けながら腐心する。やがて、ついに日本独立という悲願が達成させるが、その後吉田は政権にしがみつくようになり、三木武吉(若山富三郎)は彼を首相の座から引きずり下ろすべく、暗躍を始めていく…。 (Amazonレビューより)

【感想レビュー】
いや~面白かったです‼

権力とは…かくも恐ろしいものだなぁと思いました
日本独立という壮大な目的を果たしたあと、総理大臣の地位に固執していってしまう様がリアルに描かれています。国のためという崇高な思いも、いつしか私利私欲に絡み取られてしまい、側近の意見や娘にさえ耳を貸さなくなり、意固地になっていくという変遷が、森繁久彌さんのリアル過ぎる演技によって展開されていく。吉田茂氏にそっくりでそっくりでびっくりしました…‼凄い役作り…!!
でもちょっとほっそりしている時とふっくらしている時があって、、それは時系列的におかしかったので、撮る順番とかが違ったのかしらん。。

一方で、国でただ一つのポストに君臨し続けるその孤独感が、窓越しの荒れ狂う竹林や波打ち際をバックに、しばしば一人で佇む様子が浮かび上がらせる。。こういう人物の心内というのは…一体どんなものなのだろう。。
三千年、いや四千年生きたいっていう台詞に人間の業を感じるし、同時に諸行無常を思い知る…。権力の座についても、身体を壊したり病気で亡くなったりする人もいるわけで…。

また、お馴染みの現役政治家達の名前が飛び交い、改めて世襲制の根強さを思い知ります
劇中では、池田勇人氏と宮澤喜一氏の仲良しぶりだけが唯一ほっこりするシーンかも…。宮澤喜一氏を角野卓造さんが演じているのですね~とってもお若いですっ!
石田純一さんの若き熱い事務官ぶり。
65歳頃の池部良さんのスマートさ…ビックリ
お声が一体お幾つ?!と思うほどお若かった…!!
…とまぁ、群像劇なので、魅力的な俳優さんが多く出てきて、政治家達の曲者ぶりが見事に演じられていきます終始シビレっぱなしなのでした

『劇場版 MOZU』(2015)

2015年11月09日 | 西島秀俊さん☆映画
『劇場版 MOZU』(2015)

監督: 羽住英一郎
出演: 西島秀俊、香川照之、真木よう子
【作品概要】
家族を失った警視庁公安部の捜査官・倉木が、殺し屋「百舌」を追ううちに巨大な陰謀に巻き込まれるという壮大な物語を、個性的なキャストが熱演、話題を集めたドラマ版。劇場版はさらに、最強のラスボス「ダルマ」をビートたけし、その配下のテログループメンバーを伊勢谷友介、松坂桃李といった超豪華キャスト陣が参加。シリーズ最大の謎「ダルマ」との対決を描き出す。(MOZU公式HPより抜粋)

【感想レビュー】@theater
初日に観て来ました。結論からいうと、大満足でした‼‼‼

地獄の黙示録や北斗の拳(←大好き)のような印象を持ちました

思いがあり過ぎて、以下長くなります

正直、ドラマ→WOWOW→劇場版ときて、そもそもが混み入ったストーリーではないので、内容量的にはWOWOW→劇場版位でちょうど良いのになぁ、シリーズ長いんだよなぁ…などと偉そうに思ったりしていました…。一方で、各シーンの照明や構図などの映像の素晴らしさ、躍動感ある迫力のアクション、そして奇想天外な展開や俳優陣の意表を突く演技などを楽しんでいましたし、惚れ惚れと観ていたりもしました
ただ、如何せん長いなぁ…という印象も拭えず。。
それで、初日にいかなくてもいいかなぁ…と思っていたのですが、王様のブランチで、西島さんが『地獄の黙示録』のアクションチームがフィリピンロケのアクションをトップで指揮したと仰っていたので、俄然行く気になり最終で行ったのあります
『地獄の黙示録』へのオマージュが散りばめられていたので、そのヒントを得てとても観やすかったというのがありました。先月、爆音上映で観たので記憶に新しかったのもあり、ラッキーでした

ダルマを演じるたけしさんのフォルムが、ジャングル奥地に自分の王国を築いた、カーツ大佐にソックリ…‼あれはワザと似せているに違いない…。あのラスボス感…
ハードボイルドでポーカーフェースな西島さん演じる倉木は、カーツ大佐の暗殺を命じられるウィラード大尉と重なるわ重なるわで
『地獄の黙示録』もストーリーがあるようなないような…混沌とした感じだし
『MOZU』も、正義と悪という境界線が混沌としていく様が面白かったです。
そして、MOZUシリーズにはドラマ版から北斗の拳のような印象を持っていますが、劇場版もまたさらに

登場人物の不死身さ
汚れても汚れてもまた同じような感じの倉木の服装…ケンシロウと同じ…
女の色気には眉一つ動かさない倉木の感じ
極たまにニヤリと笑う倉木…これがたまらない
ユリアを探し続けるケンシロウと真実を追い求める倉木が重なる……いや笑ってはイケナイ‼…
マミヤにつれないケンシロウと真木さん演じる明星美希につれない倉木が重なる…
また、御都合主義的な展開とかもでも私はそんな感じが好きですけども‼

とまあ、そんなわけで、劇場版MOZUには大満足なのでした。西島さんのアクションにもシビレたし、松坂くん×池松くんのアクションにもシビレたし、伊勢谷さんや長谷川博己さんの演技にもシビレたし、真木さんがちょっとふっくらして、明星のハードボイルド感が薄れて倉木に恋する乙女ちっくな感じにもなんだか幸せを感じたし、相変わらず香川さん演じる大杉の人間味にホッとして、たけしさんの存在感に震えて、あっという間に時間が過ぎました

それにしても、運動神経のある俳優さんばかりで、見応えがありました。吹き替えなしなのですから、本当に凄い‼
そいでまた、文芸映画が似合う俳優さん達なので、内向的なエネルギーやクールぶりが漏れつつ、キレッキレのアクションをする‼‼…というところに、もうただただ感激したのでありますっ‼

また劇場で観たいです


西島さんがこの2年間、MOZUの中で倉木としてブレずに存在したことにもじんわりしました。人を食ったような意表を突く演技が魅力的だった西島さん、そしてCUT以降の徹底的な役作りをするようになった西島さん。尊敬するたけしさんから、もう壊したらという助言を得て、いったいこれからどんな風になっていくのか。とってもとってもワクワクします
公開を控えている映画もありますし、本当に楽しみです



『シーヴァス 王子さまになりたかった少年と負け犬だった闘犬の物語』(2014)

2015年11月08日 | 西洋/中東/アジア/他(1990年以降)
『シーヴァス 王子さまになりたかった少年と負け犬だった闘犬の物語』(2014)

監督・脚本:カアン・ミュジデジ/出演:ドアン・イスジ、ムッタリップ・ミュジデジ、チャキル(シーヴァス)
2014年/トルコ・ドイツ合作/97分/1:2.35/DCP/配給:株式会社ヘブンキャンウェイト(ユーロスペースHPより)

【作品概要】
トルコ東部、アナトリア地方。戦いに敗れ瀕死の闘犬シーヴァス。その再生と壮絶な生き様が、少年アスランの幼い眼差しに深く刻まれていく…。

【感想レビュー】@theater
トルコ映画はおそらく初めて観賞したと思います
その土地に住む人々の生活、直面している苦悩、喜び、生き方みたいなものを垣間見ることができる、こういったタイプの映画を観ることが好きです。

剥き出しの土地。埃っぽそうな乾燥した風の音。鶏、家鴨、牛、馬などの家畜たちの鳴き声。大地の荒々しいエネルギーを感じさせます。
そしてそこに小柄な少年。確かにユーロスペースのHP記載の通り、『友だちのうちはどこ?』などと同じ系譜というのに納得でした。

長年飼ってきた馬が使い物にならないから捨ててこいと父に命じられ、少年とその兄が馬を放ちにいくところがある。文句の言えない馬の、しかし濡れた瞳に静かに見つめられている様子に胸が苦しくなる。。
言葉での説明は少ない映画だけど、そういったシーンの積み重ねが、少年の内面の変化と自然に連動していて思わず惹き込まれます。
娯楽の乏しそうな土地。若者達は有り余るエネルギーをどのように発散させているのだろうと思わず考えるが、そこで闘犬の登場なのだ。
闘犬同士で闘うシーンは、もの凄い迫力で、グルルルと鳴く声や揉み合いの音は臨場感たっぷりだった!!
あれは一体どうやって撮ってるのかしらん…。
それにしても、中東圏の映画はこれからも要チェックだなぁと思いました。それぞれの周辺の地域で一体どんな事が起きているのか。民族の多様性を考えると、トルコ映画といっても単純に一括りにはできないのだろうし、色んな民族出身の監督達が、独自の視点で撮った映画をこれからも観たいと思いました


『東京の日』(2015)

2015年11月07日 | 邦画(1990年以降)
『東京の日』(2015)

2015年/日本/102分/カラー/1:1.85/DCP/配給:マジックアワー
監督・脚本:池田千尋/出演:趣里、佐々木大介、浅野千鶴、渡辺真起子、香川京子

【作品概要】
孤独と人情が交差する東京の片隅で、二人は愛を見つけることができるのか?痛くて情けなくてリアルで、すべての瞬間が愛おしいラブストーリーの誕生!(HPより)

【感想レビュー】@theater
今回は、『東南角部屋二階の女』の監督・脚本や黒沢清監督の新作『クリーピー』の脚本を手掛ける池田千尋さんの作品ということなので、是非観ることにしました~

渡辺真起子さんと香川京子さんに惹かれたのもあります
若手俳優陣は存じ上げない方ばかりだったけど、そういうのも東京という街の匿名性が出ていて私は好きでした
ストーリーはふわふわと展開していくのだけど、とある日からとある日までを切り取った日常の、でも少しずつズレていく感じが面白かったです。
三叉路?だったかの角にある、味のある民家に面した道を来る日も来る日も通る。出掛けたり、戻ってきたり、その日中には戻ってこなかったり。。

同じ道、同じ階段、同じ住まい。でも少しずつズレていく。ふわふわとたゆたうような日常にも小さなドラマがある。突然ポンと現れた女性の視点によって、自分の日常がつまらないものに感じたり、そんなに捨てたものでないことに気付いたりする。
面倒をみているのだかみられているのだか

タイトルの『東京の日』、香川京子さん、少しずつズレていく日常、住まいの屋上から眺める東京。それらから小津安二郎監督の『東京物語』へのオマージュが感じられるのだけど、なんだかとっても良かった。
『東京物語』で若者を演じていた香川京子さんが『東京の日』では素敵なマダムですから。。そのシーンはとっても素敵な時間でした