☆映画の旅の途中☆

色んな映画をどんどん観る旅

『青い山脈』(1949)

2016年10月17日 | 邦画(クラシック)
『青い山脈』(1949)

東宝=藤本プロ/白黒/スタンダード/1時間32分

■監督:今井正
■原作:石坂洋次郎
■脚本:今井正、井手俊郎
■撮影:中井朝一
■音楽:服部良一
■美術:松山崇
■出演:原節子、木暮実千代、池部良、杉葉子、伊豆肇、龍崎一郎、若山セツコ、藤原釜足

【作品概要】
戦後の映画史を語るうえで欠かせない青春ドラマの金字塔。田舎町の女子高で、自由恋愛をめぐり巻き起こる騒動を軽快に描く。原は、都会から来た進歩的な女教師・雪子を演じ、代表作の一本とした。

【感想レビュー】@theater
一ヶ月ほど前に行ったのですが、書きかけで放置していました
神保町シアターの特集上映『一周忌追悼企画 伝説の女優・原節子』。

もうほぼ池部良さんが観たくて行ってきました

1949年ですから、戦後4年とかですよね。『青い山脈』といえば、藤山一郎/奈良光枝さんの歌が朧げに浮かんできます。昭和の歌謡曲をランキングで紹介していくような番組をなんとなしに聞いていて、メロディーの断片が記憶にある程度ではありますが。。
多用される付点のリズムやあのメロディーの調子に、軍歌とそうは変わらない作りに思えるので、どうにも古めかしく聴こえるわけで、とにかく化石のようなイメージを持って映画を見始めわけです。

ところが…!!!!

その古めかしい音楽とは裏腹に、生き生きとした豊かな世界がそこには拡がっていたのです!

相当に古いフィルムなので、音も割れるし、もちろん映像だってボヤけているのですが、景色も俳優陣も台詞も、何もかもがエネルギーに満ち溢れていて衝撃的でした

地方の町が舞台で、父権的な習慣や考えが頑なにあるものの、そこに原節子さんが当時の最先端な現代性をもった教師として存在していて、気品がある上に強くお美しいのであります

1960年代に流行したはずのパンタロンのような物を穿いていらっしゃるわ、殿方の頬を叩くわでビックリしました👀‼️

また、学生の池部良さんや杉葉子さんも、本当にリアリティのある存在でした。
ちょっと不良?な池部良さん演じる青年にキュンキュンします



商店の留守番をする息子:池部良さんとそこに卵を現金に換えてくれと訪れる女学生:杉葉子さん。
このやり取りが、なんだかちょっと危険なような…それでいて当時にもこんな大らかなことがあったのかな、とも思わせるドキドキなシーンなのです

杉葉子さんと池部良さんといえば、『暁の追跡』(1950)でも恋人役でしたが、その時もお二人の海水浴シーンが出てきて、水着姿でした。当時としては露出している方だと思うのですが。。(青い山脈では後編のシーン)

とにかく、お二人ともスラッとしていて、当時の日本人の平均的な体型を軽く凌駕しているのでなないかと思いました👀‼︎

そういう意味でも(し、失礼)、旧式と新式の対比が面白かったです。戦後の日本人の価値観が多様であったことも伝わってきて、なんだか観ていてワクワクしました


そんな学生達の淡い恋を周りが放っておくわけもなく…。

そして後編へ物語は続くのでした



『ダゲレオタイプの女』(2016)

2016年10月16日 | 邦画(1990年以降)
『ダゲレオタイプの女』(2016)

監督、脚本:黒沢清
キャスト:タハール・ラヒム(ジャン)、コンスタンス・ルソー(マリー)、オリビエ・グルメ(ステファン)、マチュー・アマルリック(ヴァンサン)、マリック・ジディ(トマ)、バレリ・シビラ(ドゥーニーズ)、ジャック・コラール(ルイ)

【作品概要】
世界最古の写真撮影方法「ダゲレオタイプ」が引き寄せる愛と死を描いたホラーラブストーリー。

【感想レビュー】@theater
ヒューマントラスト有楽町の初日舞台挨拶付き上映に行って参りました

黒沢清監督のお話しを生で聞いてみたいのと、西島秀俊さんがゲストということもあって、このお二人ならではのお話しも楽しみにしていました。
トークのお話しはおいおいに…。

映画はというと、とにかく、とにかく映る背景のすべてが美しく、131分のどこを切り取っても画になるのだろうなぁと思いました。

はて、この感じ今年どこかで…と思い出したのが『ホース・マネー』。
大胆に暗い照明使いや照明自体がそのシーンを大きく作用する要素を担う、そういった点が『ダゲレオタイプの女』と通ずるものがあるなぁと感じました。
ほの暗い室内をサーッと曲線を描くように射す照明は、ボヤけた室内の在りようを照らします。するとその瞬間、妙に生々しくその空間がリアリティを持ち始めて、グっと惹き込まれました。

そういったことはこれまでの作品、また『クリーピー』の照明使いも記憶に新しいですが、今回やはり違うのは、室内のインテリアもお屋敷も街も俳優陣も、映る世界がフランスなので、本当に不思議な感覚でした👀!!

美しいコンスタンス・ルソー
青いドレスに白く細い首が良く映えて…
あの青いドレスが、ゴシック調の美術や照明と、もうこの上なく絶妙だったのですが、女性の幽霊が迫ってくるといえば『叫』の赤いワンピースが真っ先に浮かびますけど、今回は青いドレス👗。“青”、に意味があるのかないのか、気になります


白々しい蛍光灯、無機質なコンクリートの建物のヒビ割れ、半透明のカーテンなどの遮蔽物…などなど、黒沢清作品といえば!なアイテムは今回は控えめ。あ、でも温室や屋敷の玄関などは半透明といえば半透明だったかな…それに当たるのかしらん
細部をもう一度観たいです
そんな中で、柵越しのアングルなどは健在で、印象的でした


階段が印象的に使われていて、映画としてギアが入る瞬間でもあって、すごくテンションが、上がりました
これは、小津安二郎監督の『風の中の牝雞』(1948)をヒントにされたのかなぁと思いました。『黒沢清、21世紀の映画を語る』の著書の中で『風の中の牝雞』のことをお話しされていたこともありますし。ふむ。

現実と異界の境目が朧げだったり狭間を往き来する。そんな不確かで浮遊する時間や空間を体感できる素晴らしさ

それで、黒沢監督といえばスクリーンショットで撮る車中シーンとその車窓の異界ぶりというのが、今作では普通の景色に観えたわけで👀(‼︎)逆に驚いたのですが。。はれ!?と思い至った考えは、現実と異界の境界線が、もう既に曖昧だったから、あえてそのままの景色にされたのかしら…というもの。
ドレスの色とともに、どこかの媒体で明らかにならないかしら、もうなっているのかしら、と悶々としております。
観る前はインタビュー記事など、情報を遮断していたのでチェックはこれからです

それにしても。

やはり、撮影地が違うと色んな変化があったり、でももちろん黒沢監督作品の香りもしたりで、楽しかったです

男女のベッドシーンとか、黒沢監督は気恥ずかしくなっちゃうからと避けがちなはずが、今回は俳優陣の提案で取り入れることになったらしいし👀
チュッチュチュッチュ💋 キスもかなりしていますし。でもやっぱりそれがフランスなら普通だろうと観ているこっちも思うし、やはり文化や習慣で変わるよなぁと思いました。


照明、美術、俳優陣とも、現実と異界の狭間を自由に往き来きして、誘われるようにスクリーンに惹き込まれました。


【初日舞台挨拶の覚書き】
監督だけ日本人だったけど、優秀な通訳のおかげできちんと伝わったこと。
日本の撮影だと曖昧な表現をしがちで、フランスでもまぁそんな風に話したものの、通訳の方が端的に伝えてしまうので、逆にスタッフ陣はテキパキ動いてくれていたという…
日本での撮影では…の監督のお話しの時に、西島さんが笑いながら『飲んでもいいし飲まなくてもいい、みたいな』のような感じで仰っていて監督と俳優の枠を超えたお二人の間柄が感じられてほのぼのしました


また思い出したら書きたいと思います



『日本春歌考』(1967)

2016年10月12日 | 邦画(クラシック)
『日本春歌考』(1967)

監督:大島渚
脚本:田村孟、田島敏男、佐々木守、大島渚
音楽: 林光
出演: 荒木一郎/小山明子/田島和子/伊丹一三

【作品概要】
青春のエネルギーと性の欲望を持て余した若者たちを描く。大まかな筋だけを決めて撮影に挑んだという大島渚監督の冒険作。(Amazon DVD)


【感想レビュー】
ネットレンタルで観ました
届いてから観るまでが長かった…。今週末、10/15(土)に黒沢清監督の『ダゲレオタイプの女』が公開されるのですが、その黒沢監督が著書でこの『日本春歌考』のことを繰り返し仰っていたこともあり、ついに奮起しました

大島渚監督の作品なので、思想とエロス…な作品で難しく、分からない面もあるのですが、なんとなくで観ました


1967年という時代。(昔の映画を観ると、親の年齢で考えてしまいます。父の22歳頃だなぁとか。)
学生運動に参加しない学生も、もちろん多かったわけですよね。この世代の人口がそもそも多いわけですし

色んな運動が盛んだったとはいえ、そこに参加するところまではいかない学生達のリアルが伝わってきます。それをノンポリと呼んでしまうのは…それもちょっと違うような青年達。そして、正しく(?)、エロな妄想をあれこれする青年達
当時は、何かを高らかに語っていないとノンポリと揶揄されたりしたのでしょうかねぇ。どうなのかしらん。。

煙草を2、3本一気に吸う姿に青年達の鬱屈とした悶々さが表れていました
ちょっと凄いです。


また、黒い日の丸を掲げたデモ行進と青年達の対比とか、いちいち格好良かったです。 なんか、構図もいちいち格好良くて、見惚れてしまいました。
黒い日の丸というのは、1966年に「建国記念日」2.11として再び祝日となり、紀元節が復活したことに反対する運動だそうです。
黒い日の丸を掲げるデモ行進と、黒い学生服の青年達と、白い雪のすべてが、異様な光景を醸し出しています。カラー作品なので、特に強調されていると思います。



また、たくさん歌が出てきます。のびのびと歌う集団に被せるように違う歌を歌い出すシーンは特にシビれます。思想のぶつかり合いに歌の果たす役割は大きく、でも「歌」なので、クドくないという…‼︎


それにしても。
荒木一郎さんのお眉は太く凛々しく濃かった
小山明子さんは美し過ぎた…
伊丹一三さんもお若かった…




…“よさホイのホイ”が頭から離れませぬ。。。


うぅ…夕飯作りながら鼻唄でもしますか