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■ウクライナの挑発で全面戦争に誘導されるロシア。背後で笑う米国の思惑とは MONEY VOICE 2018年12月2日 高島康司

2022-03-04 04:28:39 | 日記

 


■ウクライナの挑発で全面戦争に誘導されるロシア。背後で笑う米国の思惑とは

MONEY VOICE 2018年12月2日 高島康司

https://www.mag2.com/p/money/592378


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・アゾフ海におけるウクライナ海軍艦艇の拿捕


11月25日に発生した黒海近郊のアゾフ海におけるロシアとウクライナの衝突について解説したい。

これは下手をすると、両国の全面戦争にまで発展する危険性を内包した事件だ。


日本でも報道はされているものの、さほど大きな扱いにはなっていないので、まずは事実から確認したい。


25日朝、ウクライナ海軍の小型砲艦「ベルジャンスク」と「ニコポル」、曳航艇「ヤナ・カパ」は、黒海のオデッサ港からアゾフ海のマリウポリに向かっており、アゾフ海の入り口にあるケルチ海峡を航行するところだった。


アゾフ海はロシアが2014年3月に併合したクリミア、ロシアと敵対関係のウクライナ、そして東部ウクライナの独立派を支援しているロシアの3つの地域に挟まれた海域である。

ロシアはアゾフ海が自国の排他的な海域であることを強く主張し、ロシアによるクリミア併合を認めないウクライナも同様の主張を行っている。


ケルチ海峡には、ロシアとクリミアを陸路でつなぐためにロシアが建設した大橋がある。

アゾフ海が自国の領海であることを主張するロシアは、この大橋にタンカーを停留させ、ケルチ海峡を封鎖していた。


ウクライナ海軍の艦艇はこの封鎖を突破しようとして、ロシア連邦保安局(FSB)の監視船に体当たりしたが、逆に監視船から発砲され、3隻が拿捕された。

ウクライナ海軍は、ロシア側が曳航艇に体当たりし、艦艇の進行を阻止しようとしたと説明している。


このとき、ウクライナの発表では6名の乗組員が負傷したとされている。

ロシアの発表では、負傷者は3名だったという。

 

・ロシア批判の大合唱と紛争のエスカレート


一見するとこれは、比較的に些細な事件で、ロシアとウクライナの交渉で早期に解決するように見えるが、事態は深刻である。


アメリカを中心とした欧米諸国による御定まりの激しいロシア非難の大合唱になっている。

3隻のウクライナ艦艇への攻撃と拿捕は、海軍艦艇であっても領有権が主張されている海域の自由な航行権を認めている国際法にロシアは違反したとして、ロシアを厳しく非難した。EUの主要メディアも同じ論調の報道である。


そうしたなか、アメリカの要請で国連安全保障理事会が開催されたが、ロシアとウクライナの相互の批判で終わった。

その席上、アメリカのニッキー・ヘイリー国連大使は演説し、ロシアとの関係改善は不可能であるとした。これはホワイトハウスの見解を反映しているという。

 

・ウクライナの戒厳令発令と全面戦争の可能性


そうしたなか、ウクライナのポロシェンコ大統領は軍と情報機関の権限を最大限強化することを内容とした戒厳令を発令した。


有効期間は30日だ。

ポロシェンコ大統領によると、ロシア軍が地上戦を準備しているための対応だとしている。


さらにポロシェンコ大統領は、ウクライナのテレビとのインタビューで、ウクライナ国境に接するロシア軍の基地では戦車部隊などの大規模な増強が見られるので、ロシアとの全面戦争が迫っているとの見方を明らかにした。

今回のケルチ海峡の衝突が、規模の大きい戦争の引き金になるということだ。

 

・アメリカとウクライナによる誘導


これが、日本を含めた欧米の主要メディアの報道だ。

国際法を無視してウクライナを攻撃し、全面戦争さえしかねない国としてロシアを強く非難する論調だ。


トランプ大統領も強い不快感を表し、11月30日にアルゼンチンのブエノスアイレスで行われるG20のサミットでは、予定されていた米ロ首脳会談の中止を示唆している。

しかし、このケルチ海峡における今回の衝突を詳しく見て見ると、これはアメリカとウクライナによって計画的に誘導されて引き起こされた事件である可能性が極めて高いことに気づく。


これは、ロシアを挑発し、より規模の大きな戦争を引き起こして、ある特定の目的を実現するために画策された事件であると見ることができる。


当メルマガでは、2010年12月に北アフリカのチュニジアから始まり、中東全域に拡大した「アラブの春」や、2004年から2007年ころにかけて中央アジアの旧ソビエトの共和国で広まった「カラー革命」のような民主化要求運動が、米国務省によって準備され、仕掛けられた事件である事実を詳しく紹介してきた。


アゾフ海のケルチ海峡における今回の衝突も、同じように仕掛けられたものである可能性は大きい。

 

・2003年の取り決めと、9月の航行


このように言うと、なんの根拠もない陰謀論ではないかとの印象を持つかもしれない。


しかし、ロシアやウクライナの英語メディアなどから情報を集めると、やはりこの事件の背後には、ロシアとの戦争を画策するアメリカやウクライナの計画があると言わざるを得ないのだ。

確かに国際法からすると、海軍の艦艇であっても海峡通過などの平和的な目的であれば、どの国の排他的な海域であっても、事前通告なしに通過できることになっている。


1989年、当時のソ連とアメリカはこの取り決めを明確化し、それが現在の国際法になっている。

その意味では、ウクライナ海軍の艦艇はケルチ海峡を自由に通過する権利があるので、それを攻撃し拿捕したロシアは非難されてしかるべきだと見える。


しかし、旧ソビエトが解体し、ウクライナが独立してからは、アゾフ海の領有権が問題となった。

そして2003年の両国の取り決めでは、アゾフ海はロシアとウクライナ両方に帰属する海域となった。


この取り決めで重要なことは、両国の船舶がケルチ海峡を通過するときの規則が定められたことである。

ロシアもウクライナも、自国の船舶が通過するとき、クリミア、ケルチ港の当局に事前に連絡し、通過する旨を伝えることになっているのだ。


この2003年の取り決めはクリミアがロシアに併合された現在も生きており、両国はこの規定にしたがって海軍艦艇を含む船舶の海峡通過を処理してきた。

事実、今年の9月にはウクライナ海軍の艦艇がこの規定に従い、問題なく安全に通過している。


海峡を通過するとき、ロシア安全保障省の係官がウクライナの艦艇に乗り込み、水先案内をしている。

ロシアは今回の攻撃の発端となった海峡通過が、ウクライナ海軍による事前通告なしに強行され、それはロシアを挑発する意図のもとになされたとウクライナを非難している。


もし2003年の取り決めがいまも生きているとすれば、今回はウクライナがこれをあえて無視したということになる。

 

・アメリカとウクライナの共同声明


このように見ると、今回の事件は偶発的なものではなく、ウクライナがロシアとの緊張を高めるために意図的に引き起こした事件である可能性が高い。


だとしたら、その目的はなんだろうか?

実はこの目的を明確に示す文書が米国務省から公開になっている。


それは、11月16日のマイク・ポンペオ米国務長官とウクライナのパヴロ・クリムキン外務大臣との間で合意された「アメリカーウクライナ戦略的パートナーシップ」の共同声明であった。

そこには、「安全保障とロシアの攻撃に対抗する」という項目があり、そこには次のように書かれている。


「アメリカは、黒海、アゾフ海、そしてケルチ海峡における国際的な船舶の、ウクライナの港に向けての航行に対するロシアの攻撃的な行動を非難する。アメリカとウクライナ両国は、ロシアのアゾフ海における攻撃的な行動が、アゾフ海と黒海地域において、安全保障、経済、社会、そして環境に対する新たな脅威となっていることを強調する」


このように、黒海とアゾフ海におけるロシアの脅威を主張するとともに、以下のようにもある。

「アメリカとウクライナ両国は、ウクライナとロシア国境を含む、ロシアのコントロール下にあるドンバスに、国連決議に基づく強力な国際部隊を配備することこそ、「ミンスク合意」を実行するための安全保障上の条件になると決定した」


これは、いまウクライナからの分離独立を目標にしてキエフの中央政府と戦闘状態にある東部のドンバスやルガンスクの地域に、国連決議に基づいた国際部隊を展開するということだ。

ドンバスは11月11日に選挙を実施して首長と議員を選んでおり、独立した政府樹立の動きを加速させている。これはこの動きを押さえ込む目的もある。

 

・ウクライナによる全面戦争の挑発か


このように見ると、ケルチ海峡通過にともなうウクライナ軍艦艇の攻撃と拿捕は、ロシアを挑発して戦争を引き起こし、これを口実にして東部ウクライナに強力な国際部隊を展開する目的がある可能性が高いと思われる。


ウクライナのポロシェンコ大統領は、ロシアとの全面戦争もあり得るとしていま戒厳令を敷いているが、おそらくこれは本気なのだろう。

これから本気でロシアとの全面戦争を仕掛け、それにアメリカに支援されたNATOの国際部隊をも巻き込む構えなのではないだろうか。

 

・東部の親ロシア地域に


これを実現するための重要なステップとしてウクライナ政府が計画しているのは、東部の親ロシア派が支配している地域の沿岸に軍港を建設することである。


もしこの軍港ができると、アメリカを中心としたNATO軍がウクライナ海軍とともにこの軍港に展開することになるだろう。

すると、NATO軍がアゾフ海の領有権を奪還を目指して、ロシア軍と全面的に対峙することになる。


NATO軍とロシア軍との間に万が一戦闘が始まると、欧米のメディアは国際法を無視したとしてロシア非難の大合唱になるだろう。

そのようにして、2014年以来続いているウクライナ内戦を一気に終結させて東部ウクライナを再併合すると同時に、ロシアが併合したクリミアを奪還するという計画だ。


今回のケルチ海峡の事件は、こうした目標を実現するために意図的に準備された、最初の引き金なのかもしれないのだ。

 

・ロシア政府高官の発言


ケレチ海峡の衝突が発生する少し前、ロシア政府の高官はこれからの状況の悪化を示唆する不気味な発言をしている。


10月28日の英紙「エクスプレス」によると、今月、国連総会第一委員会に出席したアンドレイ・ベロウソフ大統領補佐官は、「ロシアが戦争準備をしている」という米国の指摘に対し、そのことを認めて以下のように発言した。


「ロシアは戦争に“向けて”準備しているが、米国は“戦争の”準備をしている。そうでなければ、なぜアメリカは『中距離核戦力全廃条約(INF)』から離脱し、核潜在力を高め、新しい核ドクトリンを採用するのだろうか?」


これはちょっと分かりにくい発言だが、要するにアメリカはロシアを攻撃する戦争の準備をしているが、ロシアはアメリカの攻撃があることを想定し、それに向けた準備をしているということである。

 

・これから起こる一触即発の危機


このように見ると、これからロシアとウクライナの全面戦争が始まってもおかしくない状況になるのかもしれない。

ロシアとウクライナの間で起こった今回のケルチ海峡の衝突は、その始まりを予告している。


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ウクライナの挑発で全面戦争に誘導されるロシア。背後で笑う米国の思惑とは
MONEY VOICE 2018年12月2日 高島康司
https://www.mag2.com/p/money/592378


■【解説】 ロシアはウクライナを侵攻するのか 現状について数々の疑問 BBCニュース(英国放送協会) 2021年12月24日

2022-03-04 04:28:22 | 日記

 


■【解説】 ロシアはウクライナを侵攻するのか 現状について数々の疑問

BBCニュース(英国放送協会) 2021年12月24日

https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-59767571


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・ロシアの思惑


プーチン大統領は西側に対し、ウクライナ問題でロシアにとっての「最後の一線」を越えてはならないと警告している。


では、その一線とは何なのか。

NATOの一層の東方拡大が、その1つだ。


ウクライナやジョージアへの拡大も、これに含まれている。

ロシアはNATOに対して、東欧での軍事活動を中止するよう要求している。


これは、NATOがポーランドやバルト三国(エストニア、ラトヴィア、リトアニア)から部隊を撤収させ、ポーランドやルーマニアなどの国々にミサイルを配備しないことを意味する。

要するに、ロシアはNATOに1997年以前の境界まで後戻りしてほしいと思っている。


ロシアは流血を避け、外交による解決を望んでいるとプーチン氏は言う。

この要求は実現しようもない。


しかしプーチン氏はアメリカとの協議でも、この要求を議題の中心に据えるつもりで、これについて「ボールは西側にある」と述べている。

ロシアは、自国が支援するウクライナ東部の勢力に対してウクライナがトルコのドローンを飛ばしていることや、黒海で西側が軍事演習をしていることを懸念している。


プーチン氏の目には、「自分たちの家の玄関先で」アメリカがウクライナに軍事支援を行っていると映っている。

プーチン氏は今年7月、政府ウェブサイトに長文を掲載。


ロシアとウクライナを「1つの国」と呼び、ウクライナの現指導部について、「反ロシア計画」を実行中だと決めつけた。

ウクライナは30年前に崩壊したソ連の一部だったが、プーチン氏は1991年12月に起きたその出来事を、「歴史的ロシアの解体」と表現している。


ロシアはまた、ウクライナ東部の紛争停止を目的とした2015年のミンスク和平合意がほとんど履行されていないとして、不満を募らせている。

分離派が優勢な地域では、独立監視団を受け入れた選挙がまだ予定されていない。


紛争の長期化について、ロシアが原因の一部となっているとの批判があるが、ロシアはこの見方を否定している。

 

・NATOのウクライナ支援


西側軍事同盟のNATOは防衛が目的だ。

イエンス・ストルテンベルグ事務総長は、すべての軍事支援は純粋に、この目的に沿ったものだと明確にしている。


イギリスは、ウクライナの2カ所で海軍基地建設の支援を予定している。

黒海のオチャキフと、アゾフ海のベルジャンスクだ。


アメリカは、対戦車ミサイル「ジャヴェリン」をウクライナに供給。

米沿岸警備隊の警戒艇2隻もウクライナ海軍に提供している。


ロシアは、ウクライナのNATO加盟を断固認めない方針だ。


一方、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、NATOによる明確なスケジュール提示を求めている。


「ウクライナのNATO加盟の準備がいつ整うのか。それは、ウクライナと(NATOの)30の加盟国が決めることだ」というのが、ストルテンベルグ氏の立場だ。ロシアには「拒否権も、手続きに干渉する権利もない」と、同氏は主張している。


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【解説】 ロシアはウクライナを侵攻するのか 現状について数々の疑問
BBCニュース(英国放送協会) 2021年12月24日
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-59767571


■欧州「移民受け入れ」で国が壊れた4ステップ~これから日本にも「同じこと」が起きる~ 東洋経済 2018/12/30

2022-03-04 04:28:03 | 日記

 


■欧州「移民受け入れ」で国が壊れた4ステップ~これから日本にも「同じこと」が起きる~

東洋経済 2018/12/30

https://toyokeizai.net/articles/-/256915


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・「平和ボケ」が「国のかたち」を変えてしまう


改正出入国管理法が国会で可決され、外国人単純労働者の事実上の受け入れが決まった。

今後5年間で最大約34万人の受け入れを見込んでいる。

2025年までに50万人超を受け入れるという話もある。

事実上、日本の移民国家化に先鞭をつけかねない、つまり「国のかたち」を変えてしまいかねない重要法案であったにもかかわらず、審議は拙速だった。

衆参両院の法務委員会での審議は合計38時間にとどまった。

たとえば、今年7月のカジノ解禁に関する法案(IR実施法案)の可決に比べても審議は短かった。

周知のとおり、欧州をはじめ、移民は多くの国々で深刻な社会問題となっている。

にもかかわらず外国人単純労働者を大量に受け入れようとするのであるから、受け入れ推進派は最低限、欧州のさまざまな社会問題から学び、日本が移民国家化しないことを十分に示さなければならなかった。

現代の日本人はやはり「平和ボケ」しており、移民問題に対する現実認識が甘いのではないだろうか。

そんななか、欧州諸国の移民問題の惨状を描き、話題を呼んだ1冊の本の邦訳が先頃出版された。

イギリスのジャーナリストであるダグラス・マレー氏が著した『西洋の自死――移民・アイデンティティ・イスラム』(中野剛志解説、町田敦夫訳、東洋経済新報社)である。

欧州諸国は戦後、移民を大量に受け入れた。

そのため、欧州各国の「国のかたち」が大きく変わり、「私たちの知る欧州という文明が自死の過程にある」と著者のマレー氏は警鐘を鳴らす。

昨年、イギリスで出版された原書は、350ページを超える大著であるにもかかわらず、ベストセラーとなった。

その後、欧州諸国を中心に23カ国語に翻訳され、話題を巻き起している。

イギリスアマゾンのサイトでみると、現在、レビューが750件以上もついており、平均値は4.8である。

イギリス人に大きな支持を受けているのがわかる。

著者は本書の冒頭に次のように記す。

「欧州は自死を遂げつつある。少なくとも欧州の指導者たちは、自死することを決意した」。

「結果として、現在欧州に住む人々の大半がまだ生きている間に欧州は欧州でなくなり、欧州人は家(ホーム)と呼ぶべき世界で唯一の場所を失っているだろう」。

本書では、「英国をはじめとする欧州諸国がどのように外国人労働者や移民を受け入れ始め、そしてそこから抜け出せなくなったのか」「その結果、欧州の社会や文化がいかに変容しつつあるか」「マスコミや評論家、政治家などのインテリの世界では移民受け入れへの懸念の表明がどのようにして半ばタブー視されるように至ったか」「彼らが、どのような論法で、一般庶民から生じる大規模な移民政策への疑問や懸念を脇に逸らしてきたか」などが詳細に論じられおり、非常に興味深い。

 

・入れ替えられる欧州の国民と文化


イギリスをはじめとする欧州各国では、大量移民の影響で民族構成が大きく変わりつつある。

本書で挙げられている数値をいくつか紹介したい。

各国のもともとの国民(典型的には白人のキリスト教徒)は、少数派に転落していっている。

2011年のイギリスの国勢調査によれば、ロンドンの住人のうち「白人のイギリス人」が占める割合は44.9%である。

また、ロンドンの33地区のうち23地区で白人は少数派である〔ちなみに、この数値を発表したイギリスの国家統計局のスポークスマンは、これはロンドンの「ダイバーシティ」(多様性)の表れだと賞賛したそうである!〕。

ロンドンではすでに数年前に白人のイギリス人は少数派になっているのだ。

2014年にイギリス国内で生まれた赤ん坊の33%は、少なくとも両親のどちらかは移民である。

オックスフォード大学のある研究者の予測では、2060年までにはイギリス全体でも「白人のイギリス人」は少数派になると危惧されている。

スウェーデンでも今後30年以内に主要都市すべてでスウェーデン民族は少数派になると予測されている。

国全体としても、スウェーデン民族は現在生きている人々の寿命が尽きる前に少数派になってしまうと推測される。

民族構成が変わるだけでなく、欧州諸国の文化的・宗教的性格も変容する。

イギリス国民のキリスト教徒の割合は、過去10年間で72%から59%と大幅に減少し、2050年までには国民の3分の1まで減る見込みだ。

2016年にイギリスに生まれた男児のうち、最も多かった名前は「モハメッド」であった。

同様に、ウィーン人口問題研究所は、今世紀半ばまでに15歳未満のオーストリア人の過半数がイスラム教徒になると予測している。

オーストリアは、それ以降、イスラム国家になる可能性が高いといってもいいだろう。

 

・欧州社会を統合していたキリスト教の信仰は風前の灯火


著者は、欧州諸国でイスラム教徒の影響力が増大すれば、宗教や文化が大きく変容するだけでなく、政治文化も変わってしまうと懸念する。

欧州が伝統的に育んできた言論の自由や寛容さが失われてしまうのではないかというのだ。

従来、欧州の知識人層は、移民出身者であっても、欧州で長年暮らすうちに自由民主主義的価値観になじみ、それを受容するはずだと想定していた。

しかし、実際はそうではなかった。

言論の自由や寛容さ、ジェンダーの平等などの価値を共有しようとはしない者は決して少なくないと著者は述べる。

たとえば、欧州ではイスラム教徒に対する批判を行うことはすでにかなりハードルが高くなっている。

批判者が「人種差別主義者」「排外主義者」などのレッテルを貼られ、社会的地位を失いかねないからである。

イスラム教徒の利害を守る圧力団体が欧州各地で数多く組織化されているという。

あるいは、シャルリー・エブド事件など、イスラム教に不敬を働いたという理由で襲撃される事件もさほど珍しくない。

伝統的に欧州社会を統合していたのはキリスト教の信仰である。

近代以降は、キリスト教的価値観が世俗化されたものとして「人権」などの自由民主主義の原理がそれに取って替わっていると考えられることが多かった。

移民の大規模な流入により、世俗化され、自由民主主義という原理によって結び付けられた欧州という前提が脅かされつつある。

キリスト教の伝統、あるいは自由民主主義に支えられた基盤が掘り崩され、いわゆる欧州文明がこの世から消え去ってしまうのではないかと著者は大きな危惧を抱くのである。

本書の描き出す欧州の現状は、先ごろ改正入管法を国会で可決し、外国人労働者の大量受け入れを決めた日本にとってもひとごとではない。

本書を読むと、移民の大規模受け入れに至った欧州の状況は、現在や近い将来の日本によく似ているのではないかと感じざるをえない。

たとえば、欧州諸国の移民大量受け入れを推進した者たちの論拠は次のようなものだった。

「移民受け入れは経済成長にプラスである」「少子高齢化社会では受け入れるしかない」「社会の多様性(ダイバーシティ)が増すのでいい」「グローバル化が進む以上、移民は不可避であり、止められない」。

本書の第3章で著者は、これらの論拠について1つひとつ証拠を挙げながら反駁(はんばく)し、どれも説得力のないものだと示す。

だが、欧州の指導者たちは、1つが論駁(ろんばく)されそうになると別の論拠に乗り換え、一般庶民の懸念を巧みに逸らし、移民受け入れを進めてきた。

 

・同じことが日本でも起こる


この4つの論拠は外国人労働者や移民の受け入れ推進の主張として、日本でもよく耳にするものである。

日本でも今後、推進派の政治家や学者、評論家、マスコミは、おそらく、これらの論拠を適当に乗り換えつつ、実質的な移民受け入れを進めていくのではないだろうか。

そのほかの点でも、本書が描き出す欧州の過去の状況をたどっていくと、今後の日本の外国人労働者や移民受け入れの議論がどのように展開するか、大まかな予測が可能ではないだろうか。

次のようなものだ。


1:学者やマスコミは、「政治的な正しさ」(ポリティカル・コレクトネス)に過敏になり、移民受け入れに肯定的な見解や調査結果は積極的に報道する一方、否定的なものは、「報道しない自由」を行使し、大衆の耳に入りにくくする(たとえば、「移民受け入れは財政的に大きなマイナスだ」という研究結果は報道されない)。


2:同様に移民の犯罪についても、「人種差別だ」というレッテル貼りを恐れて、警察もマスコミもあまりはっきりと犯人の社会的属性や事件の背景などを発表しなくなる。


3:「ドイツのための選択肢」(AfD)といったいわゆるポピュリスト政党の躍進など移民受け入れを懸念する動きが一般国民の間に広がった場合、マスコミや政治家は、その第一の原因としての従来の移民受け入れ政策の是非をきちんと吟味することはせず、懸念を表明する人々のほうばかりに目を向け、ことごとく「極右」「排外主義」「人種差別」などと攻撃する。
つまり、「問題そのものではなく、問題が引き起こす症状のほうを攻撃する」ようになる。


4:こうしたことが続く結果、政治家や大手メディア関係者といったエリート層と一般国民の間の意識のズレがますます大きくなり、国民の分断が生じてしまう。


西欧諸国に比べて、ハンガリーなどの東欧諸国は、近年、移民受け入れに対し断固たる抑制策をとることが多い。

著者はこの相違に関して、過去の植民地主義や第2次大戦中のナチズムなどのために西欧諸国は、欧州の文化に対して自信を失い、贖罪意識を持っていると指摘する。
自文化への自信の喪失や贖罪意識が、移民受け入れ政策を方向転換することができない理由の1つとなっているというのである。

自文化への自信の喪失や歴史的な贖罪意識という点でも、西欧諸国と日本は似ている。

改正入管法をめぐる日本の国会審議は、欧州の失敗例をほとんど分析せずに終わってしまった。

手遅れになる前に、本書『西洋の自死』を多くの日本人が読み、欧州の現状や苦悩を知り、日本の行く末について現実感をもって考えてほしいと思う。


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欧州「移民受け入れ」で国が壊れた4ステップ~これから日本にも「同じこと」が起きる~
東洋経済 2018/12/30
https://toyokeizai.net/articles/-/256915