kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

ROMA/ローマ

2019年03月10日 | 年間ベスト3
日時:3月9日
映画館:イオンシネマ広島西風新都
パンフレット:未発売

配給・公開方法を巡ってカンヌで一騒動あり、アカデミーでも話題だった本作、3月7日に日本公開発表、3月9日に公開ってムチャやん。
当然、チラシもポスターも前売りもありません。故に映画の詳細もあまり伝わっておらず、普通なら無理してまで見ないのだが、監督が「トゥモロー・ワールド」「ゼロ・グラビティ」のアルフォンソ・キュアロン。無理して観ますよ。

1970年のメキシコ、ローマ地区で家政婦を営むクレオが描かれる。家政婦というと遺産相続で揉めるのを目撃したり、勤め先の若い男の子とイケナイ関係になったりするものだが、残念ながらそういう映画ではありません。

クレオが勤めるのは歯科医の一家、夫婦、妻の母親、4人の子供とワンコの面倒を見ている。つつましやかなだが、変化に満ちた毎日だが、大きな事件が起きるでもなく、最初の方は少々退屈。

しかし、モノクロームで描かれる70年代のメキシコの様子、美術や町並み、エキストラが実に見事で、70年代中盤に撮影された映画かと錯覚するくらい。フレデリック・ワイズマンのドキュメンタリーを見ているかのようだ。この味わいはモノクロならではだろう。

さらに画角を目一杯に使った構図にキュアロン監督お得意のワンシーンワンショットなど撮影技法のオンパレードで、どんどん映画に引き込まれていく。

新年のパーティーシーンなどビスコンティの「山猫」を彷彿とさせる興奮感に満ちた中盤を飾る名場面だ。

やがてクレオの望まない妊娠が発覚、雇い主の医者も愛人と駆け落ちしたりで、クレオの日々の生活が大きく変化していく。
残された医者の家族とクレオの絆が深まるが、世の中では学生運動が過激化し、一部で暴動化していく・・・。

ある時点から映画が一気に緊迫化していくあたり、実はまんまある映画と一緒なのだが、高度な撮影技術とその緊迫感に観ているうちにどんどん涙が出てきた。一連のシークエンスが終わる時には、いろいろあって涙が止まらない。

その後、もう1シークエンスがあるが、こちらも別の緊張感に満ち、クライマックスなどキュアロンの鬼の撮影技術が炸裂、画面全体からヒリヒリ感が伝わってきて、非常に疲れる。で、またいろいろあって号泣。

世の中の冷たさとさりげない優しさに満ちたストーリーにタイムスリップしたかのような美術、気の狂いそうな撮影技術が噛み合った名作で、無理してでも観て良かった一作。

ところで、この作品がネッフリでないと再見できないかも知れないなんて、酷いなあ。






題名:ROMA/ローマ
原題:ROMA
監督:アルフォンソ・キュアロン
出演:ヤリッツァ・アパリシオ、マリーナ・デ・タビラ、フェルナンド・グレアディガ





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