kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

クライ・マッチョ

2022年01月22日 | ★★★★☆
日時:1月19日
映画館:バルト11


まず、ストレートな感想から言うと「泣いた、最後に泣いた」。

じゃあ、「泣ける映画」なのかというと、改めて考えるとそうではない。
その理由は追々。

さて、物語から。
1980年、若いころロデオで鳴らした主人公マイク・マイロだったが、事故を契機に引退し、齢を重ねていた。そんな折、昔から世話になっているテキサスの牧場主から「離婚して本国に帰ったメキシコ人嫁が連れて帰った一人息子ラフェを自分のところに連れて帰ってこい」と依頼される。
メキシコに入国したマイロはラフェをすんなり発見し、誘拐まがいにテキサスに連れて帰る旅を始める・・・

イーストウッドでよく見るロードムービーものだ。砂漠の荒れた道を砂埃上げながら走るさまも美しい。
もちろん、連れて帰るのを阻止すべくギャングやマフィア、警官が襲い掛かってきて、いたるところで銃撃戦・・・にはならなんだ。
それにここにはジェオフリー・ルイスもベン・ジョンソンもハリー・ディーン・スタントンもいない。この景色に彼らがいないなんて悲しい。

途中、車を盗まれ、さらに官憲から身をひそめるため、片田舎の町で過ごすふたり。そこで野生馬の調教を手伝いながら、小食堂の家族と絆を深めていくが、やがて、テキサスに向け出発する時がやって来る・・・。

正直なところ、脚本はご都合主義的で各人のキャラクターも掘り下げが甘い。
imdbの評価では5.7とえらく低い(ワタシは7.0代を予想したが)のだが、単体の映画として観たらそうかもしれない。

【以下、ネタばれあり】
先に「泣いた」と書いたのは、やはり「イーストウッドの映画」として観ているからなんだな。
これまでイーストウッドの演じる主人公はカッコよくて、バカな男どもには年代に関わらず憧れだったが、実際には早撃ちのガンマンや暴力的な刑事になれるわけもなく、ずっと遠い存在だった。
ところが、しょぼくれて使いっぱしりでもかくしゃくとしたジジイなら、ようやく何とか真似できそうかと身近に思えてくる。
それでも91歳になってもあんなカッコいい色気を漂わせるなんてさすがだ。

イーストウッド作品は大概、死の匂いがプンプンしてて、最後は誰がツライ思いをするか死なないと終わらない。本作も最後にイーストウッドが撃ち殺されるか、国境を越えられないか、逮捕でもされるかと内心ひやひやして観ていたのだが、これがなんと誰も死なない。しかもミッションクリア。
さらに途中で知り合った小食堂の女主人とも仲良くなって、そこを終の棲家にする。たぶん年齢差30歳!
イーストウッド映画にしたら、信じられないようなハッピーエンド。

イーストウッド映画はたいがい辛くて2回観たいとは思わないのだが、この映画は何度でも観れる!(もちろんマカロニのドル3部作は全く別の話。)
血と暴力の歴史をたどってきた男が静かな晩節を迎えたかと思うと、もう胸が熱くて熱くて泣かずにはいられなかった。
しみじみ…

ところで、この映画製作の話は元々、40年くらい前からあったらしい。そう思うと主人公は70歳くらいのイメージではないかと思う。
90歳のイーストウッドが演じるなんてまさに「イーストウッドのイーストウッドによるイーストウッドのための映画」でしかないのだが、これを普通に映画化されていたら、見過ごしていただろうな。






題名:クライ・マッチョ
原題:Cry Macho
監督:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド、ドワイト・ヨーカム、エデュアルド・ミネット、ナタリア・トラヴェン
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