kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

ハウス・オブ・グッチ

2022年01月23日 | ★★★★☆
日時:1月21日
映画館:サロンシネマ


リドリー・スコットが描く1996年に起きたマウリッツィオ・グッチCEO暗殺と主犯である妻パトリッィアとの愛憎の物語。

物語は1978年にイタリアで二人が知り合うところからスタートするが、同時代のイタリアでマウリィツィオと言えば、グッチではなく、マカロニ犯罪映画、ポリツィオッテスキで活躍したメルリの方だ。同時代の雰囲気がよく出ていて、パトリッィアが勤めていたトラック運送会社なぞ、いつ犯罪の舞台になるのかとそちらの方に関心が行ってしまう。(もちろんそうはならない。)

ふたりは愛し合い、一族の経済格差も乗り越えて結婚。元々、弁護士志望だったマウリィツィオもグッチブランドの会社経営に関わっていく。

狂乱の80年代に入り、グッチブランドの方針をめぐり顔もファッションも喋りもくどい面々の思惑の相違が徐々に表面化してくる。ちなみにこういった場面でカッコいいのは、何をするでもないのに黒いスーツに細身のブラックタイでブランド王侯たちの後ろでかしずいている面々。

その内紛にパトリッィアは積極的に関与していき、マウリィツィオも徐々に感化されていく。マウリィツィオを操ろうとするパトリッィアはマクベス夫人のようでもあるのだが、事態はさらに悪い方向に進んでいく。
ポスターに名前の出ている登場人物は暑苦しい圧を持つ人ばかりなのだが、パトリッィアを演じるレディ・ガガの圧力(いろんな意味で)がなかなか迫力で、ひんむいた目元ばかり思い出してしまう(笑)
だから逆に図体のデカイ男にしか見えないアダム・ドライバーが映えるし、その行動も際立つのだが。

宮廷ドラマかソープオペラのようなゴテゴテした展開なのだが、これが実話なのだからイタリア人はこわい。
面白いのは各人とも私利私欲ではなく、真面目にグッチブランド維持のために動こうとするのだが、それが全て裏目に出ていくところ。金持ちは大変だ。
そう思うとリドリー・スコット映画の登場人物って、良くも悪くも真面目なのだが持てるエネルギーの使い方を誤るキャラクターが多いような気がする。

あと、やはり素晴らしいのはそのプロダクションデザイン。ロケを含めて画面の背景への手間のかけ方、金の掛かり具合が半端でなく、ドラマへの効果絶大な吸引力を持っている。

逆に惜しむらくは顔ぶれがオールスター過ぎて、どうしても先入観や余分な情報が入ることと、セリフが英語って点。これが地味な俳優で、イタリア語と英語で会話したら、しびれるほど面白い傑作だったと思う。

そんな中、ブラックスーツのジャック・ヒューストンがマカロニな悪役感を出していていい感じです。

ところで、見終わったらいつものマカロニ病が再発して、ポリツィオッテスキドキュメンタリー「ユーロクライム! 70年代イタリア犯罪アクション映画の世界」を再見しているワタシは病根が根深い。






題名:ハウス・オブ・グッチ
原題:House of Gucci
監督:リドリー・スコット
出演:レディ・ガガ、アダム・ドライバー、ジェレミー・アイアンズ、アルパチーノ、ジャレッド・レト、サルマ・ハエック


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