かみなり

心臓に人工弁を、耳に補聴器をしている昭和23年生まれの団塊世代です。趣味は短歌です。日々のよしなしごとを綴っていきます。

大正時代の毒婦、伊藤野枝

2019-05-14 04:22:34 | ブログ記事
NHKBSで「バカリズムの悪女伝説」という番組で
関東大震災のときに思想家、大杉栄とともに憲兵に虐殺された伊藤野枝を取り上げると知って録画しておいた。

伊藤野枝のことは、むかし文芸春秋だったと思うが、
瀬戸内晴美が『美は乱調にあり』という小説に書いていたのを読んだことがある。

今回のこの番組も、瀬戸内寂聴氏が進行役であった。

瀬戸内寂聴氏は伊藤野枝の生きざまにぞっこんである。

伊藤野枝の何がすごいかと言えば、
あの時代に不倫をものともせずに自分の思うように生きたその強さであろう。

伊藤野枝は親戚の援助で東京の女学校に遊学させてもらうのだが、
卒業してから親の命令で結婚させられたのに
婚家から出奔して女学校時代の憧れの恩師の家に飛び込むのである。

恩師の辻潤は当時女学生に人気の先生であったらしい。

その先生のところに行って、その恩師を陥落させるのである。

垢ぬけない田舎娘の伊藤野枝のその行動も驚きであるが、
彼女は、その後、無政府主義者、大杉栄と恋仲になり、
子供まで成していた辻潤を捨ててしまうのである。

大杉栄もモテ男だったらしく、
伊藤野枝とそういう関係になったとき、
当時大杉栄の恋人だった神近市子に大杉栄が刺されてしまう。

大杉栄には当時妻もいたというから、呆れる。

同棲を始めても、大杉栄は伊藤野枝に、
伊藤野枝ひとりが彼の恋人ではないというようなことを言ったらしい。

伊藤野枝は、それには納得しなかったという。

伊藤野枝は、大杉栄との間にも5年間に4人の子を成している。

伊藤野枝は野生児であったから、その子育ても野性的であったらしい。

赤ん坊がおしっこをしたオムツも洗わずにそのまま干してまた使ったりするから、
家中悪臭が漂っていたという。

大杉栄と同棲しても、経済的に逼迫していたから、
伊藤野枝は実家のある福岡県糸島郡今宿村に大杉栄とともに帰省していた時期もあったらしい。

そのとき、親戚の人が見た話では、
オムツの洗濯の時間も惜しんで本を読んだりする伊藤野枝であったから、
見かねた大杉栄が大きな体を折って、おむつの洗濯をしていたという。

あの大杉栄にオムツの洗濯をさせる伊藤野枝もすごいが、
彼女がすごかったのは、夜の生活であったらしい。

当時の憧れのインテリだった辻潤が伊藤野枝に夢中になったのも、
伊藤野枝のこの夜の生活の故であったという。

とにかく子育てにしろ、夜の生活にせよ、世間の道徳など糞くらえの女であったから、
あれほど世の男を夢中にさせたのか。

現代のわれわれが聞いても驚く話ばかりであるが、
当時も、どうして田舎娘の垢ぬけない彼女がそれほどモテるのか、
女性たちの間では侃々諤々であったらしい。

そのやっかみもかなりのものであったと。

最後は憲兵に惨殺されて28歳の生涯を閉じるのだが、
それも見方に依ればカッコよくないこともない。

女ざかりのまま死ねたのだから。

だから、今でも語り草として彼女の生きざまは話題にのぼるのであろう。

最近、獄中結婚した現代の鬼女、木嶋佳苗も垢ぬけない女性らしいが、
男性を惹きつけてやまなかったこの伊藤野枝と、どこか通じるところがあるだろうか。

 *

☆みかけではあらぬ女の魅力など考へさせる鬼女伊藤野枝

☆大男大杉栄に洗わせし赤子の襁褓(むつき)はためきし空

☆金盥つかひ作りしすき焼きを食べさせられし平塚らいてう

☆伊藤野枝つくる料理に恐れなし逃げ出したとふ平塚らいてう

☆七十を超えて羨(とも)しく思ふのは花の姿で殺されし人

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
毒を吐く女 (lemonwater2017)
2019-05-14 07:13:55
まさに毒を撒き散らしたモンスターですね。

複雑な生い立ちが奇怪な生き様を産むの典型ですが。愛人や亭主や世間や自分にまでも毒を吐く伊藤野枝は、別の意味で"自由の悪女”なんですかね。

つまり毒こそが、彼女の最高の魅力であり、最大の武器だったんです。そして憲兵の理不尽な暴力で虐殺されるという、最後のオチにしては見事過ぎる。

逆にそのまま糸島の田舎で、のんびりと小説でも書いてたら、毒女の運命も変わってたでしょうが。でもやり放題やって若いまま死ぬのも彼女にとって本望だったのかもです。
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転象さんへ (びこ)
2019-05-14 10:33:09
そうですね。彼女の場合、その無鉄砲が魅力になっているんでしょうね。世間の常識にとらわれないところが。

長生きしないで若くして憲兵に殺されたというのも、彼女にとっては勲章だったかもしれないです。

男は、こういう野獣のような女に惹かれる?(笑)
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