キリン、サントリー  統合が独禁法に抵触しないか公取委の判断を仰ぐことになる

2009-07-15 | 社会

日経新聞 社説1 海外で飛躍めざすキリン、サントリー(7/15)
 国内の食品産業最大手であるキリンホールディングスと2位のサントリーホールディングスが経営統合に向け協議を進めていることが分かった。実現すれば世界でも有数の規模を持つ食品会社となり、海外で欧米の大手と互角に戦う態勢が整う。食品業界はもとより、人口減による国内市場の縮小に悩む他の内需型産業にとっても、今後の成長戦略の手本となる可能性は高い。
 両社は低価格のビール系飲料や高級ビールのヒットなどで、2008年12月期の決算はともに最高益を更新した。足元の経営は順調だ。しかし長い目で見れば、少子高齢化により国内の食品市場は縮小が避けられない。原材料である食糧価格の先行きも不安定要因だ。
 もともと日本の食品企業は海外大手に比べ利益率が低く、経営基盤は盤石とは言えない。小売業界ではセブン&アイ、イオンの2グループを軸に再編が進み、価格交渉などの場で小売りの力が増している。景気後退で消費者が節約志向を強めたことも経営環境を厳しくしている。
 統合は物流などの効率化につながる。小売り各社との様々な条件交渉でも有利になる。国内での収益基盤の強化は海外でのM&A(合併・買収)の積極展開に役立つ。両社は近年、円高を生かしアジアなどの有力企業を買収してきた。M&Aや原料調達で欧米勢と対抗するため規模のメリットが加わる意味は大きい。
 内需型産業にとって海外、特に中間層が育ち、今後の消費拡大が見込めるアジアなどの新興国にビジネスの舞台を広げることは成長のカギとなる。中流向けの商品開発を得意とする日本の消費財メーカーやサービス業には好機ととらえるべきだ。
 両社は飲料を中心に医薬品や外食などに事業を多角化しており、幅広い業種を巻き込む再編に発展することも考えられる。今回の統合交渉は食品産業だけでなく、新たなビジネスモデルを模索する他の内需型産業に広く刺激を与えよう。
 国内市場に注力してきた生活産業が、まずアジアでトップを目指すなど明確な目標を掲げ、本格的な国際企業に脱皮する。統合が実現すれば、そうした時代の幕開けとなる。
 統合後のビール系飲料の国内市場シェアは約5割となる。統合が独占禁止法に抵触しないか公正取引委員会の判断を仰ぐことになる。各国の独禁当局の間では、国境をまたいで競争が行われている分野は世界市場を視野に判断するのが潮流になっている。飲料・食品メーカーはまさにグローバル競争のただ中にある。

くらべる一面「編集局から」日経
 食品最大手のキリンホールディングスは14日、2位のサントリーホールディングスと経営統合の交渉に入ったことを正式に発表しました。本紙は「食品メジャー キリン・サントリー統合交渉」のタイトルで15日付紙面から緊急連載を開始しました。初回は業界勝ち組の両社がなぜ統合交渉に踏み込んでいったのか。そのインサイドストーリーです。2人のトップがひざ詰めで統合の可能性を語り始めたのは実は1年半前にさかのぼります。世界にはスイスのネスレや米ペプシコなど競争力の強い食品メジャーがひしめいています。キリン・サントリーがその一角に食い込めるかどうか。交渉から目を離せません。(井)


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