さざれ石が固まって大きな岩になる  リーチ・マイケル主将ら外国出身選手「君が代」斉唱=多様性の集団がワンチームになる

2019-11-30 | 文化 思索

風来語(かぜきたりて かたる)
 リーチの君が代 主筆 小出寛昭
 中日新聞 2019.11.30 Sat 朝刊

 自分はどんな存在であるかを表す「アイデンティティー」という言葉がある。
 日本人としてのアイデンティティーなどというが、何とも訳しにくい単語である。辞書には同一性とか自己同一化といったこなれの悪い訳が載っているが、日本語に詳しいベトナム政府の高官が、こんな分かりやすい説明をしてくれたことがある。
 「それは『魂(たましい)』のことですよ」
 この秋は、私たちのアイデンティティーを何度も思い起こされる季節だった。天皇陛下の即位を祝う日の丸の波、ラグビーW杯の会場にこだまする君が代。その光景に多くの人々は胸を揺さぶられ、感動の思いに浸った。
 愛国心というと押し付けがましくなる。ナショナリズム(民族主義)では生臭い。やはり「日本の魂」に響く、自然と風土に恵まれた情感なのだろう。
 ラグビーの試合前、リーチ・マイケル主将ら多くの外国出身選手が「君が代」を斉唱していた。いつ、どうして、彼らはこの歌を覚え、歌うようになったのか。
 担当記者によると、7月の宮崎合宿で君が代を歌い、意味を理解することが大きな課題だった。メンバー31人のうち外国出身が15人。文化も背景も異なる選手が、どうチームの一体感を生むか。歌の意味が心に染みた。細かい石(さざれ石)が固まって大きな岩(巌=いわお)になる。多様性の集団がワンチームになる
 リーチ主将ら全員が日向市の神社にある巨大なさざれ石を見学。岩の前で君が代を歌った。
 君が代の元歌は古今集にある。9世紀、朝廷の歌人・石位左衛門が伊吹山麓(今の岐阜県・揖斐川町)に移り住み、山の石灰石が雨水に溶け、数万年かけて無数の小石を凝結して巨大な岩になった大自然の風景に「わが君は 千代に八千代に さざれ石の巌となりて 苔のむすまで」と詠んだ。
 やがて主語が「君が代は」に変わったが、わが君は、だとぐーん情感が近くなる。リーチ主将たちは「わが友は、千代に八千代に」の魂でスクラムを組んだのだろう。

 ◎上記事は[中日新聞]からの書き写し(=来栖) *強調(=太字)は来栖

 


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