【法廷から】被害者1人の犯行に死刑判決は  「新潟女児殺害」結審2019.11.28 小林遼被告

2019-11-28 | 死刑/重刑/生命犯

【法廷から】被害者1人の犯行に死刑判決は 新潟女児殺害公判
 産経新聞 2019.11.28 11:00 
 新潟小2女児殺害事件の裁判員裁判公判は、殺人や強制わいせつ致死などの罪に問われた小林遼被告(25)が「事件を覚えていない」などとして説明責任をほとんど果たさないまま結審した。検察側が「まれにみる悪逆非道な犯行」と死刑を求刑したのに対し、弁護側は「傷害致死罪にあたり、長くても懲役10年」と主張。女児の遺族と被告の家族は法廷で、ともに切ない胸の内を明かし、それぞれ極刑と情状酌量を求めた。被害者が1人の殺人事件で死刑判決が下されるケースは少なく、12月4日の判決が注目されている。

揺れる司法判断
 「被害者が1人の事件ではありません。娘は何度も何度も殺された。人数以上の被害を受けた」
 被害者参加制度を利用して出廷した女児の母親は意見陳述の場で“被害者数”にこだわりをみせた。最高裁が死刑選択の判断基準として示した「永山基準」は、犯行の動機や態様などのほか、「特に殺害された被害者数」と言及。これに基づき、被害者が3人以上で死刑判決となるのが“相場”とされていることを踏まえた発言だ。
 「被告人にふさわしいのは死刑しかない。前例にとらわれずに判断してほしい」。いまでも女児の食事を3食つくり続けているという母親は、陳述をこう締めくくった。
 しかし、司法の判断は揺れている。判例をみると、平成16年に起きた奈良小1女児誘拐殺害事件では、奈良地裁が死刑を言い渡し、元死刑囚が控訴を取り下げて刑が確定。25年に執行された。一方、29年の千葉小3女児殺害事件では、千葉地裁が無期懲役の判決を下し、控訴審で争っている。

「覚えていない」
 これまでの公判では、殺意の有無や強制わいせつ致死罪の成否が主な争点となった。検察側は「女児の首を5分以上絞めた」という小林被告の捜査段階の供述や解剖医の証言などで罪を追及。これに対し、弁護側は「6、7割の力で絞めた」「気絶させようとしただけだ」と反論した。
 小林被告本人は、犯行を認めた供述を翻し、「事件をほとんど覚えていない」「取調官に話を合わせた」と繰り返した。
 「信じてもらえると思うのか」と問いかける山崎威裁判長。裁判員らが見守るなか、小林被告は「信じてもらうのは不可能に近いと思っている」と静かに答えた。「最低限の償いは真実を述べること。真実を話さないなら、最低限の償いの気持ちもないと理解される」。山崎裁判長がこう諭す場面もあった。

無表情の小林被告
 小林被告は常に黒いスーツに青いネクタイを締めて出廷。無表情のまま、法廷の様子を見つめ続けた。
 自身の母親が証言台で、「息子の愚かで身勝手な行動により大切なお嬢様の未来を奪ってしまった」と謝罪した上で、「誹謗(ひぼう)中傷の手紙がポストに入っていた」「死んでおわびするしかないと思うこともあった」と家族の苦境を涙ながらに語った際にもほとんど感情を表に出さなかった。
 また、女児の母親から「(娘が)帰ってきたら、ぎゅっと抱きしめてあげようと思っていた。この男に娘が触られたかと思うと、頭がおかしくなりそうだ」「幼い子を物のように扱い、命まで奪った。娘をいますぐ返してください」と口を極めて非難されても宙を見つめるばかりだった。
 拘留中に「反省心はない」「死刑になっても構わない」と精神科医に話したという小林被告だが、求刑後の最終陳述では「私の身勝手な行いで娘さんを死なせてしまい、申し訳ありません。正しい心を手に入れ、苦しみ、罪を償っていく」と言葉を詰まらせながら話し、3回にわたって深々と頭を下げた。
 遺族と被告の言葉は、裁判員らの心にどのように響いたのか-。答えは、12月4日に出される。
 起訴状によると、小林被告は昨年5月7日、新潟市西区の路上で、女児に軽乗用車をぶつけて車に乗せ、駐車場に止めた車内でわいせつな行為をした上、首を絞め殺害、遺体をJR越後線の線路に放置し、列車にひかせて損壊するなどしたとしている。

■永山基準
 連続4人射殺事件の永山則夫元死刑囚(犯行時19歳)に対する昭和58年の最高裁判決が示した死刑適用基準。(1)犯行の罪質(2)動機(3)犯行態様、特に殺害方法の残虐性(4)結果の重大性、特に殺害された被害者数(5)遺族の被害感情(6)社会的影響(7)被告の年齢(8)前科(9)犯行後の情状-の9項目を総合的に考慮し、やむを得ない場合に死刑選択が許されるとした。

 ◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です  *強調(=太字)は来栖
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* 新潟女児殺害事件 小林遼被告に死刑求刑 検察「凄惨の極み」 新潟地裁 2019/11/22 

  
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【新潟女児殺害】小林遼容疑者を逮捕 死体遺棄容疑など  2018/5/14 
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〈来栖の独白〉
 被害死者1名で死刑となった事件、記憶にあるのは「闇サイト殺人事件」、「奈良女児誘拐殺害事件」。

<闇サイト殺人事件 10年>母「娘思い出さない日は一日もない」2017/8/24
「奈良女児誘拐殺害事件 2004/11/17」小林薫公判最終弁論要旨/奈良地裁判決/控訴取り下げ、死刑確定
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* 『年報・死刑廃止2009』 「死刑100年と裁判員制度」命より大切なものがあるという倫理観にとって代わられた   
永山則夫事件 判決文抜粋(所謂「永山基準」) 
正義のかたち:裁判官の告白/1 永山事件・死刑判決

 


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