見逃せない遺族感情の変化「死刑になるな。生きて帰ってこい」…宮崎家族3人殺害事件・奥本章寛死刑囚に

2015-04-25 | 裁判員裁判/被害者参加/強制起訴

【見解】見逃せない遺族感情の変化 論説委員・久保田正広
 西日本新聞2015年04月17日(最終更新 2015年04月17日 11時22分)  
■死刑と裁判員 
 5月で実施6年となる裁判員裁判。議論すべき重い課題の一つに、死刑適用の判断を一般市民から選ばれる裁判員が担っていることが挙げられる。プロの裁判官でも身構える難問。裁判員には過酷な面があるのは間違いない。
 九州で初めて裁判員裁判が死刑を言い渡したのは宮崎市で2010年に起きた殺人事件だった。妻と生後5カ月の長男、義母の3人を殺害したとして、事件当時22歳だった奥本章寛死刑囚の刑が昨年10月に最高裁で確定している。
 宮崎地裁の裁判員、裁判官の評議は8日間に及んだ。刑事責任の重さの認識は一致しているものの、被告が若く更生の可能性が否定できない点や、被告への義母の言動が理不尽で同情の余地がある点で評価が割れたとみられる。
 結論を左右したのは「法廷で極刑を求めた被害者遺族の生の声だった」と弁護人を務めた黒原智宏弁護士はみる。
 刑事裁判への被害者参加制度は08年に導入された。法廷が遺族の悲しみや怒りで満たされることも多い。量刑判断への影響は計り知れない。
 裁判官だけが担当する控訴審で、弁護側は奥本死刑囚の心理鑑定を求め、証拠採用された。判決は、義母から追い込まれていった心理状態や反省は認めながらも、死刑はやむを得ないとした。
 上告した弁護側は一審の法廷で極刑を望んだ遺族の1人である男性の上申書を提出した。「命は大切であり、奥本死刑囚が死刑になるべきかすぐに判断できない。裁判員裁判をやり直し、慎重に判断してほしい」との趣旨だった。
 この男性は拘置所の奥本死刑囚と面会し反省を感じるようになったという。福岡県内にある奥本死刑囚の郷里にできた、家族らを「支える会」との交流がきっかけだった。
 最高裁の判決で上申書が考慮されることはなかった。上告審は法令や判例に違反するかどうかの判断が中心で、新たな証拠を出すこともできないからだ。
 死刑確定後、男性は奥本死刑囚を訪ねた。「死刑になるな。生きて帰ってこい」と何度も語り掛けたという。
 どんな事件の被害者、遺族でも感情の変化はあり得る。それを反映する制度が必要ではないだろうか。特に死刑判決の場合は、最高裁までその努力をすべきだと考える。 =2015/04/17付 西日本新聞朝刊=

 *◎上記事は[西日本新聞]からの転載・引用です
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TBS「報道特集」確定死刑囚の告白(2015/4/11 放送)
 5年前、宮崎県で夫が、妻とその母、生後五ヶ月の長男を殺害した事件。逮捕・起訴された夫には一審で死刑判決が下され、控訴・上告したが、死刑が確定した。確定死刑囚が罪と向き合う日々をTBS記者が10回にわたる面会などを通じて取材。一審で死刑を求めた被害者の遺族や判決を下した裁判員の思いも詳細に伝える。
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「“確定死刑囚”の告白 ~裁判員、遺族の想いは~」 宮崎 家族3人殺害事件 奥本章寛死刑囚
◇ 「宮崎 家族3人殺害事件」奥本章寛死刑囚…義母と妻、長男との生活は我慢の連続 義母から逃れたかった
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