西村伊作旧自邸 国重文指定申請へ  刑死から100年、大逆事件大石誠之助医師を名誉市民に

2009-11-24 | 死刑/重刑/生命犯
紀州ジグザグ:修復保存へ加速、西村伊作旧自邸 国重文指定申請へ--新宮 /和歌山
 ◇記念館、市への所有権移転終え
 新宮市名誉市民で文化学院(東京都千代田区)創設者、建築家などとして知られる西村伊作(1884~1963)。伊作の旧自邸で国登録有形文化財「西村記念館」(同市伊佐田町)建物の市への所有権移転登記が終わり、市は国重要文化財指定を目指し来春、文化庁に申請する予定だ。【神門稔】
 伊作は、新宮市仲之町の大石家の長男として生まれ、3歳の時に母方の実家、西村家(奈良県下北山村)の養子となった。伊作の名は、熱心なクリスチャンだった父余平が旧約聖書の「イサク」から名付けた。明治天皇暗殺を企てたとして死刑判決が下った大逆事件(1910年)で処刑された医師、大石誠之助は叔父。
 旧自邸は、1914(大正3)年、30歳の時、伊作自らが設計し完成した2階建て洋風住宅で、延べ約250平方メートル。明治から大正へと時代が移る中、封建的な気風を打破し、家族生活を中心とした欧米のリビング様式を取り入れた住宅として知られる。
 1階は家族の日常の場の居間、食堂など、2階に寝室や浴室などを配置している。交流があった陶芸家、富本憲吉、歌人、与謝野寛・晶子、佐藤春夫ら数多くの文人墨客が訪れ、滞留したことでも知られる。
 築90年余で老朽化した旧自邸の修復を計画する市は、西村家と所有権移転手続きを進め今夏、移転登記を終えた。大江清一・市教育長は「西村家の協力で所有権が移ったことで整備計画は前進する。修復には1億円以上が見込まれる。国重文に指定となれば国の補助があり、費用は2分の1となる」と話す。
 修復費の募金活動を続ける市民グループ「西村記念館を守り伝える会」事務局長の筒井三輝朗さんは「建築士会に依頼し建物の現状を調査したが、地盤沈下で傾いていることが分かった。早急に修復を進めてほしい」と期待する。
毎日新聞 2009年11月22日 地方版
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大石誠之助:大逆事件で処刑された医師、名誉市民に 新宮市長に要望 /和歌山
 ◇反戦の主張など評価を
 大逆事件(1910年)で処刑された医師、大石誠之助(1867~1911)を名誉市民にする運動を進める新宮市の「『大逆事件』の犠牲者を顕彰する会」(二河通夫会長)は20日、田岡実千年市長と奥田勲市議会議長に、「大石を名誉市民に推挙を」と要望した。市長は「皆さんの思いは分かった。しっかり研究したい」と述べた。【神門稔】
 大石は現在の新宮市仲之町で医院を開業。貧しい患者を無料で診察し、反戦・反差別などの主張で知られ、文学者でもあった。芥川賞作家の辻原登さんが毎日新聞に連載した小説「許されざる者」で、主人公「槇隆光」のモデルになった。
 要望書は「大石は事件の犠牲となったから偉大ではない。大石を名誉市民として顕彰することは、曽祖父、曽祖母たち、祖父や祖母たちの誤りを指摘し、大石の行いを真っ当に評価し、この地の歴史を正確に学び、若い人々に向かって語り続けることにもなる」としている。
 顕彰する会は「西村伊作、佐藤春夫、中上健次らの名誉市民も、大石の感化を受けた。新宮の文化的土壌を考えると、大石の進歩的な思想を抜きにしては語り得ない」と強調した。
 新宮市議会は01年9月、顕彰する会の要望を受け、事件に連座させられた大石ら「紀州・新宮グループ」の6人の名誉回復を決議した。二河会長は「来年は刑死から100年になる。3月議会で議決をしていただきたい」と話した。毎日新聞 2009年11月21日 地方版

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