電気を流した。「豚は一瞬、金縛りのように硬直して、聞いたことのない悲鳴のような鳴き声を上げた」

2010-05-24 | いのち 環境

殺処分、過酷な作業 獣医ら「終わりが見えない」
 asahi.com2010年5月24日19時18分
 家畜の伝染病、口蹄疫(こうていえき)との闘いが続く宮崎県。4月20日に始まった殺処分の対象の牛や豚は5月23日時点で14万4千頭を超えた。獣医師や県職員、自衛隊員らが連日、作業を続けているが、処分を終えたのは半分超の約7万5千頭にとどまる。国がワクチン接種後の全頭処分を決めたことで、新たに14万6千頭が対象に加わる。終わりの見えない過酷な作業に、焦りと疲労が募る。職員らに話を聞いた。
 県土整備部に勤める50代の男性職員は、5月のある土曜日、午前7時に出勤した。県庁前には、事務職員も含め、各部局からかり出された男性約100人が集まり、4台のバスで口蹄疫が猛威をふるう同県川南町に向かった。
 男性は殺処分をする獣医師の補助員をすることになり、約1200頭の豚を飼う農場に向かった。白い防護服に身を包み、「立ち入り禁止」の農場に足を踏み入れた。ウイルスを持ち出さないように、作業中は原則として、一度入れば、作業が終わるまで出ることができない。
 男性は、他の職員と豚を追い立て、逃げないように板を持って「壁」をつくり、10頭ほどを豚舎の通路の隅に寄せた。動き回る豚に押され、何度も倒れそうになった。「手袋に豚の鼻が当たると、柔らかくて温かかった」
 獣医師が、大きな剪定(せんてい)ばさみのような器具で豚の腹を左右から挟み、電気を流した。「豚は一瞬、金縛りのように硬直して、これまで聞いたことのない、悲鳴のような鳴き声を上げた」
 排泄(はいせつ)物が防護服に飛び散り、マスクをしていても、強烈なにおいがした。息絶えるまでに、1~2分。「つらい時間だった」
 獣医師は電気を通すとき、一呼吸置いて、逃げようとする豚を器具でしっかり押さえた。本来なら、動物の命を助ける仕事。「苦しめないように、せめて短時間で済ませようとしていたんだと思う」。1頭を処分するたびに、獣医師は汗だくになっていた。
 農場主の男性は、畜舎の外で座り込み、ぼうぜんとした表情で作業を見ていた。県職員が豚の扱いにてこずっているのを見ると、豚の追い込みを手伝ってくれた。「農場主には、豚もおとなしく従った。それが切なくて……」
 午前中は50頭を処分するのがやっとだった。食欲はわかなかったが、体力を保つため、弁当をかき込んだ。
 午後は効率を上げるため、二酸化炭素による殺処分に切り替えた。2トントラックの荷台に豚25~26頭を乗せ、シートをかぶせてボンベからホースでガスを送る。10人がかりでシートを押さえた。しばらくすると中で豚が一斉に暴れて、鳴き始めた。シートを突き破ろうと当たってくる豚を、必死に押さえた。シャツも下着も、汗でぐっしょりぬれていた。
 午後6時半までに処分したのは約300頭だった。
 発生農場での防疫作業を一刻も早く終わらせることが、感染拡大の阻止につながる。「見たくないし、聞きたくないが、目をそらすわけにはいかない」と男性は語った。
    ◇
 家畜への「医療行為」が伴う殺処分は、獣医師でなければできず、県外からも約120人が派遣されている。
 応援に来た40代の男性獣医師は、1日約600頭を薬殺する。必死にもがく豚を2人1組で押さえつけ、注射針を刺す。「仕事とはいえ、生き物を殺すのは、つらい」
 作業を終えると、町役場に帰り、全身を丁寧に消毒する。周りは皆疲れ果て、言葉数も少ない。
 「終わりが見えない。肉体的にも精神的にも、通常業務の3~5倍は大変」という。(今村優莉、松井望美)

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ハイチの“マザーテレサ”医師 須藤昭子さん(クリストロア宣教修道女会)に聞いてみたい。牛や豚のこと


1 コメント

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Unknown (rice_shower)
2010-05-25 23:44:05
口蹄病に罹らなくとも最終的には殺されたのに、どういう心理から「可哀想」という感情が喚起されるのか、私には理解出来ません。
純経済動物として生を受けたのだから、その価値を失う或いは損なうとなれば、経済的損失の最小化処置が取られるのは、絶対的に合理的な判断。  
薄っぺらな偽善は勘弁してもらいたい。
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