南シナ海を戦略原潜のための「聖域」にしたい中国

2013-04-19 | 国際/中国/アジア

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集
南シナ海を戦略原潜のための「聖域」にしたい中国
WEDGE Infinity2013年04月18日(Thu) 岡崎研究所
 3月9日付米カーネギー財団のサイトで、Iskander Rehman同財団核政策プログラム・アソシエイトは、中国が外国の軍事活動を許さないとの強硬姿勢を取っているのは、領土問題もあるが、本当の理由は、南シナ海を中国の戦略原潜の基地に接続する原潜の展開水域として確保したいからである、と述べています。
  すなわち、南シナ海は海南島の三亜を基地とする中国の戦略原潜の展開水域であるが、中国は、対潜水艦兵器や海洋調査船を展開している米国と、インド・太平洋地域の米国の同盟国網によって、第一列島線の中に閉じこまれかねないと感じている。そして紛争の際には、戦略原潜が第一列島線の外に出る前に、米海軍に発見され、無力化されてしまうのではないかと懸念している。
  中国が南シナ海で外国の軍事活動にますます不寛容になっているのは、この懸念のためである。
  中国は南シナ海での外国の軍事活動に対して、公には領土問題の観点から抗議しているが、中国の為政者たちは内々には戦略原潜が基本であり、如何に将来の原潜による抑止を守るかが重要な関心事である、と言っている。
  冷戦中、ソ連の戦略原潜は遠隔のバレンツ海やオホーツク海を基地としていたが、中国が原潜の基地として選んだのは世界で最も重要なシーレーンの真っ只中である。
  中国の原潜は最近まで旧式であったが、最近は新型の「晋」級戦略原潜に、射程距離4600マイルの弾道ミサイルを搭載するものと見られ、おそらくこの原潜は海南島を基地とするだろう。第二期のオバマ政権は、領土紛争があるのみならず、世界で最も危うい核のホットスポットに急速に姿を変えつつある地域の緊張に対処するという有難くない任務を抱えることとなる、と論じています。
    * * *
  中国の南シナ海における強硬姿勢が、単なる領土主権の主張に留まらず、戦略原潜展開の必要性に基づくものであるとの見解は、第一列島線、第二列島線の概念を中心とする中国の海洋戦略、そして戦略ミサイル搭載原潜という大きな抑止力を持つ対米核抑止戦略に照らせば、当然のものでしょう。論説も中国の為政者たちが、内々このような見解を述べていると説明しています。
  このような見解は、日本でも述べられてきています。中国は南シナ海を、かつてソ連が冷戦中に対米核戦略の拠点としたオホーツク海のようにしようとしている、あるいは南シナ海を、中国の戦略原潜のための「聖域」としようとしている、といった見解です。
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増大する赤い脅威は冷戦時代のソ連を凌ぐ! 日本も「中国の研究」に一流の人材を投入せよ2012-03-06 | 国際/防衛/(中国・・・) 
  増大する赤い脅威は冷戦時代のソ連を凌ぐ! 日本も「中国の研究」に一流の人材を投入せよ
(SAPIO 2012年2月22日号掲載)
文=古森義久、中嶋嶺雄
 アジア全域の駐留米軍を射程にした中距離ミサイルの増強、空母の保有のみならず、衛星破壊兵器、宇宙基地、さらにはサイバー攻撃とアメリカを挑発しつづける中国。一方のアメリカも近年、中国の軍事的脅威に対する研究を強力に進め、その規模と深度はかつてのソ連研究を凌ぐほどになっている。
 このほど『「中国の正体」を暴く─アメリカが威信をかける「赤い脅威研究」の現場から』(小学館101新書)を上梓した産経新聞ワシントン駐在編集特別委員の古森義久氏が、中国研究の第一人者として知られる国際教養大学理事長・学長の中嶋嶺雄氏と対談。「赤い脅威の正体」について語り合った。
中嶋 このところアメリカの対中国政策がずいぶん変わってきました。その最大の理由は中国の軍事的膨張です。オバマ政権の中国に対する外交・軍事戦略は明らかに従来の姿勢と違います。その点から見て、このたび古森さんが書かれた新書『「中国の正体」を暴く』は非常に中国の本質に迫った重要な作品です。
古森 オバマ政権の対中国政策の転換は、日本にとっても大きな意味があると思います。オバマ政権が登場して最初の2年間は、融和政策でした。中国を刺激するような言動はなるべくとらない、軍事力についても軍拡とか脅威とかという言葉を口にしないという、かなり明確な通達が政権内で出されていました。中国に対して厳しいことを言うとすれば、“透明性”について言及することぐらいでした。
 ご存知のように、中国の軍事体制の特徴のひとつは透明性がないということです。どういう戦略でどういう兵器をどのように調達していくのか。それを誰が、どういう手続きで決めるのかということがまったくわからない。これは民主主義ではない国の特徴です。
中嶋 人民解放軍は、林彪の時代があり、その前は彭徳懐の時代、文革後は葉剣英、海軍は劉華清でした。つまり、誰が軍の指導者かということがよくわかっていた。ところが、今は中国の軍全体が非常に膨張し、誰が軍の指導者なのか不透明になっている。従来、アメリカは中国をカウンターパートとか、ステークホルダー(利害保有者)という認識を示してきましたが、その方針を転換せざるを得ない状況になったのですよね。
古森 アメリカがどんなに融和的に中国と接しても、図に乗ってどんどん強硬な措置をとってくる。それで、オバマ政権もやむを得ず、中国の軍事拡張を正面から批判し、対応策を打ち出すようになったということです。そのクライマックスが今年1月5日にオバマ大統領が国防総省で行なった、アジアにおける米軍のプレゼンスを強化するという演説です。
中嶋 私は1993年から「米中新冷戦」ということを言ってきました。米ソの冷戦構造崩壊にともなって東西冷戦は終わったが、アジアには冷戦が残っている。特にアメリカと中国は価値観が違うだけじゃなくて、軍事戦略の面でも冷戦を続けるだろうと。それがいよいよ現実的になった。中国が台湾を含めてどういうアジア政策を展開するのか。第1列島線、第2列島線ということを言って、最近では南シナ海、尖閣諸島だけではなく、沖縄までも虎視眈々と狙っている。

             

 古森 第1列島線、第2列島線とはその影響圏、コントロールする範囲を広げていくという意味で中国が使っている用語ですね。これは西太平洋における米軍のプレゼンスがどんどん希薄になることを願っている戦略です。最近の中国がミサイル増強や空母を保有するなど、軍事のハードウェアを強化していることの背景には、そういう膨張的な戦略意図があります。
■明の時代から中国は海洋国家だった
中嶋 私が懸念するのは、中国が太平洋地域だけならともかく、イランやアラブ地域の方向にも触手を伸ばしているということです。ハーバード大学の教授だった故・サミュエル・ハンティントンは論文『文明の衝突』の中で「儒教イスラムコネクション」の危険性という問題を提起していました。中国が儒教的な専制体制をとりながら、それがイスラム原理主義、あるいはイスラム圏と結びついた時には非常に危険だという内容です。最近の中国の動きを見ていると、パキスタン、イラン、イラクといわばイスラム原理主義的な国と関係を結んでいる。そしてスーダンや、私たちが名前も知らないようなアフリカの国々にまで関心を示しています。こういう中国の世界的な膨張に対して、アメリカとしても我慢ができなくなったということでしょうね。
古森 日本にとっては西太平洋、東アジアが最大の関心の領域ですが、一方で中国がグローバルパワーとして、まず経済面から活動を拡大してきた。たとえば、昨年、リビアのカダフィ政権が倒れました。その危機の時、3万人以上の中国人労働者を帰国させるため、人民解放軍が派遣されたというように、経済活動の拡大によって、軍事力でそれを守るようになってきた。
 ただし中国がグローバル展開する際、アメリカとの価値観の違いが顕著に表われます。たとえば、アフリカ諸国に政府援助する時、アメリカは、民主主義を進めるとか、軍事用途には使わないなど必ずある程度の条件をつけます。ところが、中国の場合、ほとんど条件をつけないので、独裁政権、軍事政権は大喜びで中国からの援助を受け入れます。これがまた、アメリカにとって脅威となるわけです。
中嶋 中国のイスラム圏、アフリカ諸国への勢力拡大は、もちろん資源確保という戦略意図があるわけですが、明の時代にアフリカまで出て行った鄭和の大航海を想起させます。われわれは中国を大陸国家だと思っているけれども、中国は実は海洋国家でもある。2008年北京オリンピックの開会式で、フィールドいっぱいに無数の人間が巨大な船形のパフォーマンスを展開して鄭和を持ち上げました。あれは、世界中に海洋国家であることをアピールしたんだろうと思うんですね。
古森 その中国の軍拡は、いったい何を目指しているのか、というのがわれわれの懸念になるわけですが、日本では国政レベルで中国のあり方、特に軍事力に光を当てて研究し、議論するということがない。期待するのは無理なんでしょうか?
中嶋 日本の政治家はそんなレベルにないですね。それどころか、大挙して中国を訪問し、江沢民や胡錦濤に頭を下げるという外交をやっている。
 そもそも中国の侵犯や威嚇が続く尖閣問題は、明らかに日本外交の失敗です。1972年に日中国交正常化しましたが、その直前に人民日報が「尖閣は中国の領土」と外交声明を掲載しました。ところが、当時アメリカのニクソン大統領が訪中するという“ニクソン・ショック”で、日本政府も外務省もバスに乗り遅れるなとばかりに、その重要な声明を考慮せず、国交正常化に流れていった。その後、78年の「日中平和友好条約」批准書交換セレモニー出席のために訪日した小平は「尖閣の問題は次の世代、また次の世代に委ねる」という内容の発言をし、政府もメディアも大歓迎した。だが、小平が最高権力者となった後の92年、中国は領海法を定め、国内法上は尖閣は中国のものであるとしました。この年、天皇皇后両陛下の訪中が控えていたため、日本政府は中国の領海法に対して、ひと言も抗議していないんです。そういう既成事実の積み重ねがある上に、さらに中国に低姿勢に出る。そうすれば、中国は世界と協調してくれるだろうと。
古森 中国に対してやさしく出れば、中国もやさしくしてくれるという発想はどこから出てくるのでしょうか?
中嶋 戦後の日本外交、特に外務省のチャイナスクールなどが大きな災いの元だと思います。私はかつて香港の総領事館に外務省特別研究員として2年間勤務したことがありますが、「中国」というとそれだけで位負けするという体質があるようですね。
■日本には中国と相容れない価値観が厳存する
古森 私は北京駐在の後半に、アメリカを専門に研究している中国の知識人―政府関係者ですが―と親しくなったのですが、彼が流暢な英語で「日本と中国はひとつの国になるのが自然じゃないですかね」と本気で言うんです。で、文化も言語も違うのはどうするのかと聞くと、「言葉はやっぱり大きい国の言葉でしょう」と言うわけです。
中嶋 まさに「中華思想」ですよね。これはとても根が深い。われわれもよほど身を構えていかないといけない。
古森 アメリカの場合には、基本的な価値観の違いを少なくとも国政レベルで認識しています。だから、日本の議員のように訪中して最高指導者に会いたいなんて言う人たちはいない。胡錦濤が訪米した時でも、議会でのパーティで議会の側からは写真は撮らなかった。胡錦濤と並んでいるところを写真に撮られるのを嫌がるアメリカ議員の声が多くて禁止になったんです。中国は大変怒りましたけどね。日本の国会議員と正反対です。
 アメリカ側のそんな姿勢の背景には、一党独裁で人権を弾圧し、国民の自由な選挙で選ばれた指導者ではないという基本的な体制・価値観の違いへのはっきりした認識があります。
中嶋 なるほどね。日本はその点、中国との関係を「同文同種」といった言葉で括ろうとしますが、そもそも無理がある。中国の文化を学んだことは事実ですが、明治時代はヨーロッパの近代化を学び、戦後はアメリカ民主主義を学びました。中国から漢字文化を学んだとはいえ、日本独自の文字をつくり上げてるわけです。独自の美意識もある。
古森 日本でも中国との相容れない価値観が厳存することを認識して、もう少し国政、あるいは外交そのものと結び付いた中国の軍事動向への対応、情報収集活動も含めて新しい枠組みへの動きがあってしかるべきだと思うのですが。
中嶋 不透明な中国の軍事力に対する分析能力を磨くことは非常に重要なことですね。
古森 アメリカは中国の軍事動向を把握するために人工衛星などハードウェアを充実させ、その情報収集能力の高さはすばらしいものです。それプラス、官と民の両方で中国の軍事を研究する人材が増加している。戦後、米ソ冷戦時代、ソ連の軍事がやはり秘密のベールに包まれており、そのソ連の軍事を研究する分野に、国際政治学、安全保障学、理工系も含めて、ベスト・アンド・ブライテスト(超一流の人材)が集まっていた。キッシンジャーやブレジンスキーなどが一例です。そのベスト・アンド・ブライテストが今、中国の軍事研究へと移ってきているんです。つまり、官と民がぴたっと歩調を合わせて、アカデミズムでも中国の軍事研究が主流となっている。そういう状況が少しでも日本に出てくればと思うのですが……。
中嶋 日本のアカデミズムでは、軍事研究そのものが人気がないだけでなく、防衛大学校を除いて安全保障や防衛についての授業はほとんどないんです。一番大事なことなのに回避している。日本はアジアの中で、大学教育レベルでも遅れる気がします。
 アジアの安全保障において、今後、アジア諸国からの期待にこたえるような人材育成とともに、日本政府は沖縄の基地問題を早く解決して、中国という「脅威」に対応していく体制を構築しなければいけませんね。
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「中国の正体」に気がつかない日本 米国の専門家が分析する中国軍拡の最終目標とは2012-02-08 | 国際/防衛/(中国・・・)
 JBpress 2012.02.08(水)古森 義久  
 米国の国政の場では、2012年となっても中国の軍事力増強が依然、重大な課題となったままである。いや、中国の軍拡が米国の安全保障や防衛に投射する重みは、これまで以上となった。今や熱気を増す大統領選挙の予備選でも、対中政策、特に中国の軍拡への対応策は各候補の間で主要な論争点ともなってきた。
 中国の軍拡は、わが日本にとっては多様な意味で米国にとってよりも、さらに切迫した課題である。日本の安全保障や領土保全に深刻な影を投げる懸念の対象だと言える。
 だが、日本では中国の軍拡が国政上の論題となることがない。一体なぜなのか。そんな現状のままでよいのか。
■中国はこの20年間、前年比で2桁増額の軍拡を続行
 私はこのほど『「中国の正体」を暴く』(小学館101新書)という書を世に出した。自著の単なる宣伝とも思われるリスクをあえて覚悟の上で、今回は、この書が問う諸点を提起したい。中国の史上前例のない大規模な軍事力の増強と膨張が、日本にとって明らかな脅威として拡大しているからである。今そこにある危機に対し、日本国内の注意を喚起したいからでもある。
 この書の副題は、「アメリカが威信をかける『赤い脅威研究』の現場から」。本書に付けられたキャッチコピーの一部から、概要が分かっていただけると思う。
「450発の核弾頭、空母、ステルス戦闘機、衛星破壊兵器、宇宙基地、サイバー攻撃・・・」
「増大するその脅威はかつてのソ連を凌ぐ!」
「今、アメリカが最も恐れる国」
「ワシントン発! 中国研究の先鋭たちを徹底取材」
「サイバー攻撃に関する限り米中戦争はもう始まりました」
 この書の主体は米国側の政府や議会、さらには官民の専門家たちが中国の軍拡をどう見るのかの報告である。
 中国が公式に発表する国防予算だけでも、ここ20年ほど一貫して前年比で2桁増の大幅な増額を果たしてきたことは周知の事実である。その上に公表されない領域での核兵器や弾道ミサイル、空母、潜水艦、駆逐艦、戦闘機などのハードウエアの増強がさらに顕著なのだ。
■中国の軍拡は米国や日本への明らかな挑戦
 中国の軍事の秘密の動向は米国でしか実態をつかめない部分が大きい。なにしろ唯一のスーパーパワーたる米国の情報収集力は全世界でも抜群なのである。日本が足元にも及ばないほどの諜報の能力をも有している。人工衛星や偵察機による偵察、ハイテク手段による軍事通信の傍受、あるいはサイバー手段による軍事情報の取得などの能力は米国ならでは、である。
 私は『「中国の正体」を暴く』で、米国の中国軍事研究の専門家たち少なくとも12人に詳細なインタビューをして、彼らの見解をまとめて発表した。
 その結果、浮かび上がった全体像としては、第1に、中国の大軍拡が疾走していく方向には、どう見ても米国が標的として位置づけられているという特徴が明白なのだ。
 第2には、中国の軍拡は日本や台湾に重大な影響を及ぼし、その背後に存在する米国のアジア政策とぶつかるだけでなく、米国主導の現行の国際秩序へのチャレンジとなってきたという特徴がさらに屹立する。
 つまり、中国の軍拡は米国や日本への明らかな挑戦なのである。米国の専門家たちの大多数は少なくともそう見ているのだ。
 こうした特徴は私が本書で最初に紹介した米国防総省相対評価(ネットアセスメント)局の現職顧問、マイケル・ピルズベリー氏の次のような言葉にまず総括されていた。
 「中国がなぜ軍事力を増強するのか。いくつかの事実を見ると答えが自然に浮かび上がります」
 「まず現在、中国人民解放軍が開発を急ぐ対艦弾道ミサイル(ASBM)は明らかに米軍の原子力空母を標的にしています。この特定のミサイルが長距離で狙う艦艇というのは、米国しか保有していないのです」
 「中国は2007年1月に人工衛星を破壊するミサイルを発射し、見事に標的の破壊に成功しました。この種の標的も米軍以外にはありません。米軍が実際の軍事作戦で人工衛星の通信や偵察の機能に全面依存することを熟知しての動きでした」
■中国の軍拡の目標は台湾制圧の先にある
 中国の軍拡の最終目標については、従来、米国の専門家たちの間で意見が2つに分かれていた。
 第1はその究極目標が台湾有事にあるとする意見だった。中国は台湾を自国領土と完全に見なしており、その独立宣言などに対しては軍事力を使ってでも、阻止や抑止をすることを宣言している。中国はそうした有事のために台湾を侵攻し、占領できる軍事能力を保持しているという見方である。台湾有事以上には軍事的な野望はないという示唆がその背後にはあった。
 第2は、中国が台湾有事への準備を超えて、軍事能力を強化し、東アジア全体や西太平洋全域で米国の軍事プレゼンスを抑え、後退させるところまでに戦略目標を置いているのだ、という見解である。
 しかし私が2011年全体を費やして実行した一連のインタビューでは、米国の専門家たちの間では、すでに第2の見解が圧倒的となったことが明白だった。
 つまり中国は米国や米軍を主目標に位置づけて、台湾制圧を超えての遠大な目標に向けて軍事能力を強めている、という認識が米国でのほぼコンセンサスとなってきたのだ。
■日本に対する歴史的に特別な敵対意識
 では、中国の軍拡は日本にとって何を意味するのか。米国側の専門家たちが日本がらみで語ったことは注視に値する。
 ヘリテージ財団の首席中国研究員、ディーン・チェン氏は以下のような考察を述べた。
 「中国はもちろん日本を米国の同盟国として一体に位置づけ、警戒をしています。しかしそれだけではない点を認識しておく必要があります。私が会見した人民解放軍のある将軍は『私たちは米国とは和解や協調を達成できるかもしれないが、日本とはそうはいかない。日本は中国にとって、なお軍事的な脅威として残っていくだろう』ともらしました。日本に対しては歴史的に特別な敵対意識が存在するというのです」
 アメリカン・エンタープライズ・インスティテュート(AEI)の中国研究員で元国防総省中国部長のダン・ブルーメンソール氏も次のように語った。
 「中国には、日本に対して歴史上の記憶や怒り、そして修正主義の激しい意識が存在します。その意識は中国共産党のプロパガンダで強められ、煽られ、今や中国が軍事力でも日本より優位に立ち、日本を威嚇する能力を持つことによって是正されるべきだというのです」
 要するに、中国共産党には軍事面でも日本を圧倒しておくことが歴史的な目標だとするような伝統がある、というのである。
 だからこそ、現在の中国の軍拡は日本で真剣に認識され、論議されるべきだろう。だが現実には国政の主要課題には決して上がることがない。私はこの点での日本の危機に対しても、この書で警鐘を鳴らしたいのである。
・古森 義久 Yoshihisa Komori
 産経新聞ワシントン駐在編集特別委員・論説委員。1963年慶應義塾大学経済学部卒業後、毎日新聞入社。72年から南ベトナムのサイゴン特派員。75年サイゴン支局長。76年ワシントン特派員。81年米国カーネギー財団国際平和研究所上級研究員。83年毎日新聞東京本社政治部編集委員。87年毎日新聞を退社して産経新聞に入社。ロンドン支 局長、ワシントン支局長、中国総局長などを経て、2001年から現職。2005年より杏林大学客員教授を兼務。『外交崩壊』『北京報道七00日』『アメリカが日本を捨てるとき』など著書多数。
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