市民社会のなかでこそ知識人は働いているというのに グラシム

2020-12-15 | 文化 思索

 

国家は政治社会として理解され、政治社会・市民社会の統合体としては理解されていない。市民社会のなかでこそ知識人は働いているというのに。  グラシム

今週のことば
 中日新聞 2020.12.15 火曜日 朝刊
   松本 章男

 コロナ禍の猛威を憂慮するかたわら、今年はまたわれわれ市民の将来的懸念の一つに、日本学術会議会員候補六人が政府によって任命拒否された問題が加わった。
 グラシムはファシストに捕縛されたイタリアの思想家。掲示文は1931年に獄中で書かれた手紙の一節である。
 物理学・化学・生物学など自然科学は産業資本と提携した研究をもするから、政治的に組みこまれやすい。哲学・史学・社会学など人文・社会科学は過去の思想と国家体制の分析をするから、政治社会の検証をも欠くことができない。今回、政府が拒否した候補6人は、市民社会を成長へ導く研究活動をする学者ばかり。だから、問題は余計に由々しい。
 国家の安定には、グラシムの言う政治社会と市民社会の融和が不可欠。任命拒否の理由を明かさない政府の沈黙の底から、過去のあの全体主義への足音が聞こえてくるように思える。
 (随筆家)

 ◎上記事は[中日新聞]からの書き写し(=来栖)
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暮れ果つる秋の形見にしばし見むもみぢ散らすな木枯らしの風 西行


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