栃木女児殺害、“自白”から“否認”まで取り調べの映像 法廷で公開
TBS News 2016/3/10
栃木県の旧今市市で当時7歳の吉田有希ちゃんが殺害された事件の裁判で10日、被告の男が殺害を自白してから否認に転じたとされるまでの取り調べの映像が法廷で流されました。
「やりましたってことを話したよね? 覚えている?」(検察官)
「・・・真っ白になった」(勝又被告)
2005年12月、茨城県の山中で当時7歳の吉田有希ちゃんを殺害した罪に問われている勝又拓哉被告(33)。勝又被告は一時、有希ちゃん殺害を自白しており、自白の任意性が裁判の争点となっています。
10日の法廷で取り調べの様子を撮影した映像が公開されました。
「やりましたって言ったよね」(検察官)
「覚えてない」(勝又被告)
「え、午前中のこと覚えてないの?」(検察官)
「パニクっちゃった」(勝又被告)
最初に公開された映像は、2014年2月18日、勝又被告が検察官から有希ちゃん殺害について取り調べを受けている様子です。
「無理はしなくていいぞ。やってないのにやったとか言うなよ。やってるなら言えよ」(検察官)
「2、3日もらえれば」(勝又被告)
この後、勝又被告が震えながら深呼吸し、落ち着かない様子が映し出されます。
そして3日後の2月21日・・・
「地面から赤い手が自分を引っ張っているような、引きずり込むというか、夜、目が覚める」(勝又被告)
勝又被告は事件後、悪夢を見るようになったと話し、終始、嗚咽を漏らしながら取り調べに応じます。そして・・・
「代わりになれば良かった」(勝又被告)
「生き返ってほしいということ?」(検察官)
「そういうこと」(勝又被告)
「遺族はもっとつらいんだぞ。それを話すのが君の責務じゃないか?」(検察官)
勝又被告は泣きながら、一瞬、机に顔を伏せ、こう答えます。
「ごめんなさい」(勝又被告)
さらに勝又被告は、検察官と母親や姉と連絡が取れれば話すとやりとりをします。
「とんでもないことやったって、ごめんねって」(勝又被告)
勝又被告は「お父さんに頼まれた。お母さんが大変だから乗ってくれ」と有希ちゃんに声をかけ、車に乗せた様子を明らかにします。
しかし、勝又被告は、2月25日の取り調べでは口を閉ざすようになります。
「自分勝手だろ。それでいいのかよ。だったら話せよ」(検察官)
「本当にすみません。弁護士のアドバイスで黙秘権使いたい」(勝又被告)
「話すべきと思わないの?」(検察官)
「思うけど・・・思うけど・・・」(勝又被告)
勝又被告自身は、公開された映像を硬い表情で見入っていました。
今回の映像公開を通じて検察側は、自白は強要されたものではないと強調する一方、弁護側は、撮影されたのは全体の一部にすぎないとしています。取り調べ映像の公開は11日も行われます。(10日19:18)
◎上記事は[TBS News]からの転載・引用です
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今市事件 7時間以上の取り調べの録音録画 再生始まる
NHK NEWS WEB 2016/3月10日 18時46分
栃木県の旧今市市、今の日光市で小学1年生の女の子が連れ去られて殺害された事件の裁判員裁判で、自白の信用性や任意性が争点となっているなか、異例とも言える長さの7時間以上に及ぶ取り調べの録音録画の再生が9日から始まりました。この中で被告が殺害について、「覚えていない」と答える様子や、検察官に厳しく追及され、窓に向かって突進する様子などが再生されました。
平成17年、今の日光市で小学1年生だった吉田有希ちゃん(当時7)が下校途中に連れ去られ、茨城県の山林で遺体で見つかった事件では、栃木県鹿沼市の勝又拓哉被告(33)が殺人の罪に問われています。勝又被告は無罪を主張していて、裁判では捜査段階での自白の信用性や任意性が争点となっています。
検察は取り調べが強制的ではないことを明らかにするとして、異例とも言える長さの7時間以上に及ぶ取り調べの録音録画の記録を法廷で公開することになりました。
初日の10日は殺人の疑いで逮捕される前、偽のブランド品を隠し持っていた罪で起訴された際の、おととし2月18日の午後の取り調べの様子が再生されました。検察官は、この日の午前中の取り調べで勝又被告が殺害を認めたことについて聞くと、勝又被告は長く沈黙し、「覚えていない。真っ白になった」などと小さな声で繰り返し答えて、殺害を否認しました。
その3日後の取り調べでは、有希ちゃんを車に乗せたときの様子や、凶器を山に捨てたことを話していましたが、殺害について聞かれると、「あとにしてください」と言って詳細な説明はしませんでした。
そして、7日後には勝又被告が「黙秘権を使いたい」と伝えると、検察官に「自分のやっていること、ひきょうだろ。お前が拒んでいる様子は全部撮影されている。ひきょうな様子を被害者と遺族に見せたいね」などと厳しく追及され、被告が「もう、無理」と叫んで窓に向かって突進する場面がありました。
また、映像の中では殺人事件の話になると、勝又被告が体を震わせて泣く場面が多くありました。法廷のモニターには取り調べの様子が映し出され、勝又被告は表情をあまり変えずに録画を見ていました。
取り調べの録音録画は10日から4日間、法廷で再生されることになっています。
■映像の詳細は
検察官の取り調べの様子を録音・録画した映像は裁判官や検察官、弁護士などが座る席の前に設けられた小型のモニターのほか、法廷の両脇の壁に設置されている大型のモニターでも傍聴席からも見えるかたちで再生されました。
再生される前には弁護士が裁判員に対し、話の内容そのものではなく、あくまで被告が自分の意思で話しているかどうかを判断するためのものだと映像を流す目的について注意を促しました。
はじめに再生されたのは、おととし2月18日の午後に行われた検察官による調べです。勝又被告は、この日の午前中の調べで、初めて有希ちゃんの殺害を認める供述をしていました。検察官が「午前中に話したことを覚えているか。もう1回聞くが、この事件は君が起こしたのか」などと尋ねると、被告はしばらく沈黙し、小さな声で「覚えていません」と答えました。そして「気持ちを整理したい」などと述べて、詳細な説明はしませんでした。この日の映像は被告が涙を拭うような様子が映されて終わりました。
続いて再生されたのは3日後の2月21日の取り調べの様子です。この日は、事件のことを聞かれると終始、体を震わせ、泣きながら答えていました。被告は自分の母や姉に会ったうえで、「『とんでもないことをやった。ごめんね』と伝えたい」などと話していました。そして検察官から事件の経緯について「女の子をどうやって車に乗せたのか?」と質問されると「『お父さんに頼まれてお母さんが大変』と言ったら乗ってくれた」と答えました。また、「刺した包丁は捨てたのか?」と聞かれ、「山」と答えました。ただ、詳細についての質問や「事件を起こしたことは間違いないか」との確認に対しては「詳しくはあとにしてもらっていいですか」などと述べて、この日の取り調べの映像でも明確に殺害を認める発言はありませんでした。
さらに4日後の2月25日の取り調べの様子も再生されました。18日と21日の取り調べで検察官は「時間がたったら必ず話してくれよ」などと声を荒らげることもなく説得していましたが、この日は「この前、話す約束をしたのならちゃんと話せよ」などと、それまでと一転して厳しい口調で質問していました。被告は「言えない。分からない」などと繰り返し、「黙秘権を使いたい」と主張しました。これに対し、検察官は「『自分のやっていること、ひきょうだろ』。お前が拒んでいる様子は全部撮影されている。このひきょうな様子を被害者と遺族に見せたいね。永遠に黙ってるのかよ」などと被告を犯人と決めつけるような言い方で追及しました。すると被告は「もう、無理」と叫んで立ち上がり、取調室の窓に向かって突進し、ぶつかる際の大きな音や被告の叫び声も記録されていました。このあと、被告が係官に両脇を抱えられて退室させられる様子も映っていました。
■異例の「Nシステム」証拠提出
この裁判で、検察は警察と協議したうえで、「Nシステム」と呼ばれる車のナンバープレートを読み取る機械の記録を証拠として提出しました。裁判の証拠として提出することは異例です。
検察が提出したのは宇都宮市内の国道と県道に設置された3か所の記録です。有希ちゃんが連れ去られた翌日の午前1時50分から午前6時39分にかけて、合わせて5回、勝又被告の車が通行した記録があったということです。
この記録から、検察は勝又被告が当時住んでいた栃木県鹿沼市の自宅から有希ちゃんの遺体が見つかった茨城県常陸大宮市方面を往復していたと主張しています。
これに対して、弁護側は提出されたのはそれぞれの現場から離れている宇都宮市内の記録のみで、これだけで現場に行ったとするのは乱暴だと訴えています。
Nシステムの記録を提出した異例の対応について、宇都宮地方検察庁は、逮捕・起訴当時は裁判で出すつもりはなかったものの、勝又被告が公判前整理手続きで否認に転じたことから、警察や東京高等検察庁と協議して、特別に出すことにしたとしています。
■元検事「任意の供述を印象づけたいのでは」
取り調べの録音・録画の記録が法廷で長時間公開される今回の裁判について、元検事の落合洋司弁護士は「検察は自白に頼った立証をせざるをえない状況になっていて、裁判官や裁判員に被告が任意で供述したと印象づけたいのではないか」と指摘しています。
また、検察が「Nシステム」と呼ばれる車のナンバープレートを読み取る機械の記録を、事件当時の被告の行動を示す証拠として提出したことについては、「プライバシーへの懸念が強いNシステムを裁判に出すのは控えることになっているが、今回は検察側も必死で立証しようとしているのではないか」と述べています。
今後の審理では被告が任意で供述したかや、自白の内容が信用できるかが焦点になりますが、落合弁護士は「すべての過程が録音・録画されているわけではなく、密室での取り調べの部分は水掛け論になるので、裁判官や裁判員は難しい判断を迫られる」と指摘しています。
◎上記事は[NHK NEWS WEB]からの転載・引用です
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検察「自白任意性を証明」
NHK NEWS WEB 宇都宮放送局 2016/3/10
直接的な証拠がない中で、検察は異例とも言える長さの7時間以上に及ぶ録音録画の記録を法廷で公開することで、自白の任意性を証明したいとしています。
警察と検察が録画した映像は79時間40分あり、警察官1人と検察官2人による取り調べの様子が記録されています。
検察はこのうち認否について供述している場面を中心に7時間13分の映像を4日に分けて法廷で再生します。
この7時間余りの映像は検察と弁護側が公判前整理手続きで事前に協議し、取り調べの中で自白に強要や誘導があるかどうか判断の材料となる部分を選んだということです。
勝又被告は殺人の疑いで逮捕される前のおととし2月、偽のブランド品を隠し持っていた罪で起訴され、その際に検察の調べに対し、一時、有希ちゃんの殺害を認めたもののその日のうちに否認したということです。
録音録画を始めたのはこの日否認に転じた場面からだということで、10日の法廷ではこの否認の様子から公開されました。
勝又被告はおととし6月に殺人の疑いで逮捕され、逮捕後から起訴されるまでの調べに対しては殺害を認めていたということです。
今後検察は法廷で、身振り手振りを交えて殺害の状況を説明したという場面や、勝又被告が供述調書の内容の削除や訂正を求める場面などを公開するということで、勝又被告が自らの意思で供述していることを証明したいとしています。
ただ今回の事件では警察や検察の調べの全ての過程が録音・録画されているわけではありません。
検察の調べに対し被告が初めて殺害を認めた場面の他、弁護側が警察官による自白の強制があったと主張している場面などは録音・録画が行われていません。
このため大きな争点となっている「自白の任意性」を判断する上で必ずしも肝心な場面が揃っているとは言えず、裁判員たちは再生された映像や音声をどう評価するか難しい選択を迫られるとみられます。
03月10日 18時33分
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弁護側「威圧やどう喝で自白」
NHK NEWS WEB 宇都宮放送局 2016/3/10
弁護側は勝又被告の自白について「長期間身柄を拘束された中で威圧的どう喝的な取り調べを受けて引き出されたものであり、任意性はない」と主張しています。
このうち長期間に渡る身柄拘束については「自白を得るために別件の商標法違反容疑で逮捕され、123日間身柄を拘束された」と指摘しています。
また威圧的どう喝的な取り調べがあったことについて「被告は警察官から頬を平手打ちされ『有希さんごめんなさいと50回言わないと晩ご飯抜きだ』などと言われた」と述べています。
03月10日 18時39分
◎上記事は[NHK NEWS WEB]からの転載・引用です
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産経ニュース 2016.3.10 18:29更新
【栃木女児殺害公判】取り調べ録音・録画、初めて再生、4日間、約7時間分を予定
平成17年に起きた栃木県今市市(現日光市)の小1女児殺害事件で殺人罪に問われた勝又拓哉被告(33)の裁判員裁判の第8回公判が10日、宇都宮地裁(松原里美裁判長)であり、取り調べの際の録音・録画が初めて再生された。
自白の信用性や任意性が争点となる中、4日間、約7時間の録音・録画再生が予定されている。宇都宮地検幹部は「異例の長さ」と話している。
この日再生されたのは、商標法違反事件で勾留中だった26年2月18日午後、同21日、同25日、同27日に宇都宮地検で男性検察官が取り調べた際の映像。勝又被告は同18日午前、この検察官に初めて被害者、吉田有希ちゃん=当時(7)=殺害を自白して調書にサインしているが、この際の状況は記録されていない。
18日午後の映像で、被告は「(午前中に)調書作ったじゃん」と問われ、沈黙。「覚えていないのか」と尋ねられ、うなずいた。21日の映像では終始震え、涙を流す場面があった。
◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です
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◇ 今市 女児殺害事件 取調べ映像の勝又拓哉被告 泣きながら「ずっと悪夢で目が覚める」第8回公判2016/3/10
◇ 今市女児殺害 勝又拓哉被告 第7回公判2016/3/9 殺人尋ねると「ガタガタ動揺」取り調べの大友亮介検事証言
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