「オウムに先手を打たれた」残党信者が今も増加する教団の実態
2015年3月19日 11時30分 dot.(ドット)
地下鉄サリン事件の裁判では、教祖、麻原彰晃こと松本智津夫死刑囚(60)と信者9人の死刑、信者4人の無期懲役が確定している。
未曽有のテロの“引き金”となったのは、迫り来る強制捜査だった。当時、サリンの製造責任者だった土谷正実死刑囚など教団幹部の取り調べを行った元警視庁捜査一課理事官の大峯泰廣氏がこう語る。
「サリン事件の1週間前の日曜日、捜査一課捜査員200人全員が陸上自衛隊朝霞駐屯地に集められ、ガスマスクの装着訓練を極秘で行いました。これは強制捜査に備えたサリン対策の訓練でしたが、オウム側へ情報が事前に漏れてしまい、先手を打たれてしまった」
公判記録などによると、麻原は1995年3月18日、故・村井秀夫幹部を呼び、社会をかく乱して強制捜査を防ぐために、「ポア」(殺人を意味するオウムの概念)を指示。大峯氏がサリン製造責任者だった土谷死刑囚らを取り調べた当時をこう振り返る。
「村井は3月18日、『大至急、作らないとダメだ』と土谷に指示し、前夜に約700グラムのサリンができあがりました。それを20日朝、霞ケ関駅などでバラまいたのです。麻原は『ハルマゲドン(人類最終戦争)が起こるから教団は武装しなければならない』と言い、VX、ソマン、イペリットガスなど多くの化学兵器を土谷に作らせていました。当時、土谷は後悔した様子は微塵もありませんでした」
オウムは最盛期、在家信者1万4千人、出家信者1400人を抱える組織にまで拡大したが、公安調査庁によると、サリン事件後は信者数を千人まで減らした。
だが、組織の再興に取り組み、99年に1500人まで回復。その後も微増の傾向を示している。2007年、オウムは現在「アレフ」を名乗る主流派と上祐史浩氏(52)が率いる「ひかりの輪」の両派に分裂。昨年の信者数は両派を合計して1650人。いずれも依然、麻原の影響下にあるとされる。
昨年の資産額は両派を合計して6億9千万円。00年と比べて17倍以上の増加となった。アレフではお布施を集め、ひかりの輪では寺院を巡るツアーを企画するなどして、積極的に資金源を確保しているという。
東京都足立区でオウム対策の住民運動を行う男性はこう語る。
「施設に出入りしている信者数名が、駅で若いころの麻原彰晃の写真を眺めていました。近所の女子大生が、『ヨガに興味はないか?』と誘われたこともありました。信者は何をやっているかわからず、恐ろしい。早く解散してほしいです」
なぜ、あれだけの凶悪事件を起こした団体が、求心力を持ち続けているのか。
「新しく入信する人たちの動機は、『悪の組織だと思っていたけど、教義を聞いてみたら、すごいことを言っているじゃないか』というもの。単純に、『頭のおかしな集団がいて、危険だから監視しろ』と責め立てるだけでは、問題は永遠に解決しない。客観的な視点を踏まえた分析が必要です」(元信者)
12年6月、最後に逮捕された高橋克也被告(56)の裁判員裁判が4月にも結審し、その後、死刑囚らの死刑執行のXデーがいよいよやってくるとされる。
「最初の執行は教祖、麻原になるのではないか」(司法関係者)
(本誌取材班=上田耕司、牧野めぐみ、原山擁平、福田雄一/今西憲之) ※週刊朝日 2015年3月27日号
◎上記事の著作権は[ dot. ]に帰属します
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
産経ニュース 2015.3.24 09:01更新
公安調査庁、「アレフ」「ひかりの輪」の29施設立ち入りを検査報告 「依然、無差別大量殺人に及ぶ危険性」
政府は24日、公安調査庁が昨年、団体規制法に基づき、オウム真理教から改称した「アレフ」と、教団元幹部上祐史浩氏が設立した「ひかりの輪」の15都道府県の施設計29カ所を立ち入り検査したと国会に報告した。
報告によると、2団体の国内の信者は昨年末時点で計約1650人。いずれも松本智津夫死刑囚(60)=教祖名麻原彰晃=が絶対的な影響力を有し「依然として無差別大量殺人に及ぶ危険性がある」と指摘している。
また、公安審査委員会が今年1月、団体規制法に基づく両団体への観察処分を3年間更新する決定をしたことも報告した。
◎上記事の著作権は[産経新聞]に帰属します
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
◇ 麻原彰晃死刑囚収監の東京拘置所 見上げて何か唱える若い男女 周辺に住居を構える信者も…“聖地巡礼”
-----------
◇ 「父の死刑は執行すべき」苦悩する松本智津夫(麻原彰晃)死刑囚の四女
◇ 【消えない戦慄 地下鉄サリン事件20年(1)】麻原彰晃死刑囚の四女、明かす「父、獄中から教団に指示」
.............