「トヨタたたき」政治の影 公聴会は「劇場」に トヨタ“悪役”扱い

2010-02-25 | 社会

「トヨタたたき」政治の影、秋の中間選挙意識
2010年2月25日(木)05:00(読売新聞)
 トヨタ自動車の大規模リコール(回収・無償修理)問題で、23日から米議会の公聴会が始まった。
 8日間にトヨタ問題を上下両院で計3回も審議する計画で、人命にかかわる問題とはいえ、異例の過熱ぶりだ。背景には、秋の中間選挙を見据えた公聴会の「政治ショー」化など米国の事情もある。
 ◆雇用問題◆
 23日に公聴会を開いた下院エネルギー商業委員会の調査小委員会では、出身地域による議員の意見の違いが鮮明となった。
 「我々は魔女狩りをすべきではない。トヨタが悪事を働き、 隠蔽 ( いんぺい ) したと決めつけるべきでもない」
 テキサス州選出のジョー・バートン議員(共和党)は、過剰なトヨタ批判は控えるべきだとけん制、テネシー州のマーシャ・ブラックバーン議員(共和)も「政治的な意図で誤った情報が発せられないことを望む」と同調した。両州ともトヨタの生産拠点がある南部地域だ。
 一方、ビッグスリー(米3大自動車メーカー)の拠点が集中する中西部の民主党議員はトヨタ批判を先導した。ミシガン州のバート・ステューパック小委員長は「これまでの対策ではトヨタ車所有者の不安を 払拭 ( ふっしょく ) できない」と批判。イリノイ州のボビー・ラッシュ議員は「(暴走したトヨタ車は)殺人マシンとなった」とまでののしった。
 米議会のトヨタたたきの裏には、失業率が10%前後で高止まりしていらだつ米国民の雇用問題の影がちらつく。一方、トヨタは米国内で販売店も合わせると17万人以上も雇用しており、地元議員は擁護に懸命だ。
 ◆政治ショー◆
 テレビ中継され、議員の顔がアップで映る公聴会は有権者を意識した絶好のパフォーマンスの舞台だ。
 中間選挙の前哨戦として1月19日に民主党の地盤マサチューセッツ州で行われた上院補選では共和党候補が当選し、全米の民主党議員に激震が走った。その直後にトヨタが大規模リコールを発表、トヨタ問題への米国民の関心が一気に高まったことから公聴会が相次いで決まり、「トヨタたたき」が過熱した側面もある。
 昨年オバマ政権がゼネラル・モーターズ(GM)やクライスラーの救済に動いた時は、民主党支持が強い中西部の民主党議員が支援を支え、トヨタなど日系メーカーが進出する南部議員が政権を批判した。
 今回は議員たちの攻守が替わり、トヨタの生産拠点がある6州の知事もトヨタ擁護を表明、公聴会が「奇妙な政治的駆け引きの場にまで発展している」(米ウォール・ストリート・ジャーナル紙)状況だ。
 ◆環境変化◆
 トヨタたたきの過熱は、昨秋以降、急速に高まった米国民の不安や不満に敏感に対応してこなかったトヨタの不手際もある。
 トヨタは共和党の地盤の南部を中心に生産拠点を増やしてきた。政界に強いパイプを持つGMともカリフォルニア州の合弁工場「NUMMI」などで関係を結び、GMが米政府・議会とのパイプ役になってきた。
 しかし、昨年のオバマ政権誕生とGMの経営 破綻 ( はたん ) で環境は大きく変わった。
 トヨタも昨年7月の内部文書で「オバマ政権は産業界に友好的ではない」などと指摘、懸念を認識していたが、豊田章男社長の新体制が発足、北米の体制も変わったばかりだったため、変化への対応が遅れた。
 ただ、米消費者雑誌コンシューマー・リポーツは23日、最も推薦できる環境対応車として、リコール問題に揺れたハイブリッド車「プリウス」を挙げた。米国民のトヨタ車への評価はなお根強く、信頼回復のチャンスはまだありそうだ。(ワシントン 池松洋、本間圭一)
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公聴会は「劇場」に、トヨタ“悪役”扱い
2010年2月25日(木)05:00
 米メディアは23日朝から、公聴会をトップ級で一斉に報道、ラジオも実況中継を行った。
 テネシー州の女性が2006年、「レクサスES350」の急加速による恐怖体験を涙ながらに証言する場面が、繰り返しテレビで流され、トヨタは完全に“悪役”として扱われている。
 また、主要紙(電子版)は、米国トヨタ自動車販売のジム・レンツ社長の証言を取りあげ、「(これまでの)リコールは安全問題を完全には解決しないかもしれない」(ニューヨーク・タイムズ紙)、「トヨタは、安全問題をいかに解決すべきかで確信を持たない」(ワシントン・ポスト紙)といった見出しを掲げた。
 議員の厳しい追及とメディアの大々的な報道で、公聴会は「劇場型」と化し、傍聴者からもトヨタに批判的な声が相次いだ。ニューヨーク州から傍聴に訪れた作家のボブ・リースさん(58)は「失望した」と一言。両親、妹もトヨタ車を愛用しているが、安全対策では「信頼を裏切られた」との思いを明らかにした。
 一方で、批判を苦々しく思うトヨタ車のユーザーも少なくない。定期点検でロサンゼルスのトヨタ販売店を訪れたアグネス・エマートさん(55)は「メディアの大騒ぎで、疑心暗鬼になっているユーザーも多いのでは」と、うんざりした表情。リコール修理にやってきたフランク・フランソワさん(79)でさえ、「議員らは米国車を売り込むため、メディアと結託している」と、トヨタ擁護に回った。
 メリーランド州マーローハイツにある販売店のアンドリュー・ムーア副店長(42)は「豊田社長には率直に証言してほしい。私は応援するよ」と話した。(ワシントン 吉形祐司、ロサンゼルス 飯田達人)

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