トヨタ問題めぐる米公聴会、豊田社長は電子制御の問題否定
2月25日15時17分配信 ロイター[ワシントン24日 ロイター]
トヨタ自動車<7203.T>の豊田章男社長は24日、米下院監督・政府改革委員会の公聴会に出席し、トヨタ車の安全性をめぐる問題について個人的な責任を感じると表明するとともに、顧客の苦情を一段と真剣に受け止めていく考えを示した。
豊田社長は「トヨタ車を運転していた人が事故に会ったことはまことに残念(deeply sorry)」だとあらためて謝罪した。
ラフード運輸長官は、リコールされたトヨタ車を「安全ではない」と断定。
それに対し、豊田社長は「すべてのトヨタ車には私の名前が入っている」として、誰よりもトヨタ車が安全であることを望んでいると述べた。
一方で、意図せぬ急加速が起きた一因が、リコールの理由としているアクセルペダルが戻りにくいという問題やフロアマットによるものではなく電子制御の問題にあるとの見方は強く否定。「電子スロットルには設計上の問題はないと確信している」と述べた。
ただ、電子制御スロットルシステムについては、外部コンサルタント会社のエクスポネント(Exponent)<EXPO.O>に調査を依頼したことを明らかにするとともに、同システムが原因の可能性があると指摘している南イリノイ大学のギルバート教授など専門家の意見も取り入れ、「業界全体で検討していきたい」と発言した。
ポール・カンジョルスキ委員(民主党、ペンシルベニア州)は、米国でトヨタに対する訴訟が急増していることを受け、トヨタは事故による死傷者に補償する必要がある、と指摘した。
タウンズ下院監視委員長は、トヨタが2007年に実施したフロアマットのリコールに関し、リコール範囲を制限することで1億ドルを節約したとする社内文書が明らかにされたことに言及し「トヨタは急加速についての報告を無視、あるいは最小限に受け止めた」と批判した。
これについて北米トヨタ自動車の稲葉社長は、「就任して間もない自分へのプレゼンテーションのために社内のスタッフが作ったもの」と説明。
豊田社長は「文書の存在を認識していない」としたうえで、「トップの異動があればプレゼンテーション文書を作るのはどこの会社でもやっている。そういう文書があるのは、一般的には問題ないと思う」と答えた。
これに対し、ミカ議員(共和党、フロリダ州)は、稲葉社長に対して「あなたには困惑させられている。全米10カ所のトヨタ工場で働いている多くの労働者も困惑している」と述べた。
一方、ラフード運輸長官は、トヨタ車の保有者に対し、車をディーラーに持ち込むようあらためて求めると同時に、米道路交通安全局(NHTSA)が電子制御システムに問題がある可能性について徹底的な調査を行う考えを示した。
NHTSAに対しては、チュー委員(民主党、カリフォルニア州)から、自動車業界の「監視役(watchdog)」でなく「愛玩犬(lapdog)」になったのではないかと皮肉る質問も出された。
トヨタ自動車の米国部門、米国トヨタ自動車販売(TMS)は24日、リコール対象車のオーナーに対し、迅速な修理や代替的移動手段を提供するといった支援策を講じることで、ニューヨーク州当局と合意。他の州とも同様の合意が結ばれる可能性があり、リコールに伴うコストは増加する見通しだ。
豊田社長は24日の証言後、CNNの番組「ラリー・キング・ライブ」に出演。安全性の問題について個人的に責任を負う、と述べ、事故の被害者に対し最大限のことをしたい、との考えを示した。
社長は、同社の安全性危機に対処するために、もっと迅速に関与しなかったことを、残念に思うと発言。
トヨタは安全性の問題から復活できる、と表明したほか、今回の件が「ジャパン・バッシング」だとは思わない、との認識を示した。
また、今後は顧客とより直接的に対話すべきだと思う、と述べた。
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トヨタ社長が米公聴会で証言:識者はこうみる
2010年02月25日[東京25日ロイター]
トヨタ自動車の豊田章男社長は米東部時間24日(日本時間25日)、米下院監督・政府改革委員会の公聴会に出席し、トヨタ車の安全性をめぐる問題について個人的な責任を感じると表明するとともに、顧客の苦情を一段と真剣に受け止めていく考えを示した。
豊田社長の米公聴会での証言について、米国の危機管理の専門家の間では評価は分かれている。証言はよかったか、事態の沈静化に役立ったかについて、ロイターが専門家4人に聞いたところ、2人は評価し、2人は評価しないと回答した。
謝罪に関する著作を持つローレン・ブルーム氏は「失敗だった」と断言。マネジメントやリーダーシップの専門家であるジョエル・カーツマン氏も「まるで、冊子を読み上げているように見えた」など述べた。
一方、レビック・ストラテジック・コミュニケーションズのシニアバイスプレジデント、ジーン・グラボウスキー氏は「トヨタ社長は謝罪し、(品質に関する)専門家パネルの設置を発表した。問題解決にリソースをつぎ込む姿勢を示したという点で非常によかった」と述べた。
ヒル&ノールトンのリスク管理担当ディレクター、クリス・ギデス氏は「社長が出席したという点が、まず評価できる」とした上で「1つの公聴会だけでは判断できない。トヨタには長期戦になる」と指摘した。
また、同公聴会証言と今後の影響に関する日本国内の識者の見方は以下の通り。
●無難に通過、米中間選挙までは不透明感
<みずほ証券 エクイティストラテジスト 瀬川 剛氏>
豊田社長の米公聴会の証言は、一方的に謝罪すれば責任を問われ、強すぎる態度をとれば叩かれるという微妙なところだったが、問題視されるような発言もなくとりあえず無難に通過したようだ。
ただ、米国は歴史的にみて中間選挙を控えた年はスケープゴートを探しがちだ。政権の支持率が低下するなかで有権者の目を向けさせる事件などがこれまでも何度か起きている。トヨタ問題がスケープゴートかどうかは断じえないが、11月の中間選挙までは不透明感が残り、株価は完全なアク抜けとはならない可能性がある。
●騒動はいったん収束へ、投資家は様子見継続
<インベストラスト代表 福永博之氏>
最大の論点だった電子制御の問題についてトヨタ自動車(7203.T: 株価, ニュース, レポート)側は完全に否定し、米議会も問題があったという証拠は出していない。新たな材料が出てこなければ、騒動はいったん収束するのではないか。無難に乗り切ったという印象だ。
ただ、米国は中間選挙を控え、海外企業へのバッシングなど人気取り的な動きが出る可能性があり、トヨタ問題は長引くことも考えられる。トヨタ株は、24日の米国市場でトヨタ自動車の米国預託証券(ADR)が上昇したことを受けて足元、買い先行となっているが、投資家は基本的に様子見姿勢を継続するとみている。
2月25日15時17分配信 ロイター[ワシントン24日 ロイター]
トヨタ自動車<7203.T>の豊田章男社長は24日、米下院監督・政府改革委員会の公聴会に出席し、トヨタ車の安全性をめぐる問題について個人的な責任を感じると表明するとともに、顧客の苦情を一段と真剣に受け止めていく考えを示した。
豊田社長は「トヨタ車を運転していた人が事故に会ったことはまことに残念(deeply sorry)」だとあらためて謝罪した。
ラフード運輸長官は、リコールされたトヨタ車を「安全ではない」と断定。
それに対し、豊田社長は「すべてのトヨタ車には私の名前が入っている」として、誰よりもトヨタ車が安全であることを望んでいると述べた。
一方で、意図せぬ急加速が起きた一因が、リコールの理由としているアクセルペダルが戻りにくいという問題やフロアマットによるものではなく電子制御の問題にあるとの見方は強く否定。「電子スロットルには設計上の問題はないと確信している」と述べた。
ただ、電子制御スロットルシステムについては、外部コンサルタント会社のエクスポネント(Exponent)<EXPO.O>に調査を依頼したことを明らかにするとともに、同システムが原因の可能性があると指摘している南イリノイ大学のギルバート教授など専門家の意見も取り入れ、「業界全体で検討していきたい」と発言した。
ポール・カンジョルスキ委員(民主党、ペンシルベニア州)は、米国でトヨタに対する訴訟が急増していることを受け、トヨタは事故による死傷者に補償する必要がある、と指摘した。
タウンズ下院監視委員長は、トヨタが2007年に実施したフロアマットのリコールに関し、リコール範囲を制限することで1億ドルを節約したとする社内文書が明らかにされたことに言及し「トヨタは急加速についての報告を無視、あるいは最小限に受け止めた」と批判した。
これについて北米トヨタ自動車の稲葉社長は、「就任して間もない自分へのプレゼンテーションのために社内のスタッフが作ったもの」と説明。
豊田社長は「文書の存在を認識していない」としたうえで、「トップの異動があればプレゼンテーション文書を作るのはどこの会社でもやっている。そういう文書があるのは、一般的には問題ないと思う」と答えた。
これに対し、ミカ議員(共和党、フロリダ州)は、稲葉社長に対して「あなたには困惑させられている。全米10カ所のトヨタ工場で働いている多くの労働者も困惑している」と述べた。
一方、ラフード運輸長官は、トヨタ車の保有者に対し、車をディーラーに持ち込むようあらためて求めると同時に、米道路交通安全局(NHTSA)が電子制御システムに問題がある可能性について徹底的な調査を行う考えを示した。
NHTSAに対しては、チュー委員(民主党、カリフォルニア州)から、自動車業界の「監視役(watchdog)」でなく「愛玩犬(lapdog)」になったのではないかと皮肉る質問も出された。
トヨタ自動車の米国部門、米国トヨタ自動車販売(TMS)は24日、リコール対象車のオーナーに対し、迅速な修理や代替的移動手段を提供するといった支援策を講じることで、ニューヨーク州当局と合意。他の州とも同様の合意が結ばれる可能性があり、リコールに伴うコストは増加する見通しだ。
豊田社長は24日の証言後、CNNの番組「ラリー・キング・ライブ」に出演。安全性の問題について個人的に責任を負う、と述べ、事故の被害者に対し最大限のことをしたい、との考えを示した。
社長は、同社の安全性危機に対処するために、もっと迅速に関与しなかったことを、残念に思うと発言。
トヨタは安全性の問題から復活できる、と表明したほか、今回の件が「ジャパン・バッシング」だとは思わない、との認識を示した。
また、今後は顧客とより直接的に対話すべきだと思う、と述べた。
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トヨタ社長が米公聴会で証言:識者はこうみる
2010年02月25日[東京25日ロイター]
トヨタ自動車の豊田章男社長は米東部時間24日(日本時間25日)、米下院監督・政府改革委員会の公聴会に出席し、トヨタ車の安全性をめぐる問題について個人的な責任を感じると表明するとともに、顧客の苦情を一段と真剣に受け止めていく考えを示した。
豊田社長の米公聴会での証言について、米国の危機管理の専門家の間では評価は分かれている。証言はよかったか、事態の沈静化に役立ったかについて、ロイターが専門家4人に聞いたところ、2人は評価し、2人は評価しないと回答した。
謝罪に関する著作を持つローレン・ブルーム氏は「失敗だった」と断言。マネジメントやリーダーシップの専門家であるジョエル・カーツマン氏も「まるで、冊子を読み上げているように見えた」など述べた。
一方、レビック・ストラテジック・コミュニケーションズのシニアバイスプレジデント、ジーン・グラボウスキー氏は「トヨタ社長は謝罪し、(品質に関する)専門家パネルの設置を発表した。問題解決にリソースをつぎ込む姿勢を示したという点で非常によかった」と述べた。
ヒル&ノールトンのリスク管理担当ディレクター、クリス・ギデス氏は「社長が出席したという点が、まず評価できる」とした上で「1つの公聴会だけでは判断できない。トヨタには長期戦になる」と指摘した。
また、同公聴会証言と今後の影響に関する日本国内の識者の見方は以下の通り。
●無難に通過、米中間選挙までは不透明感
<みずほ証券 エクイティストラテジスト 瀬川 剛氏>
豊田社長の米公聴会の証言は、一方的に謝罪すれば責任を問われ、強すぎる態度をとれば叩かれるという微妙なところだったが、問題視されるような発言もなくとりあえず無難に通過したようだ。
ただ、米国は歴史的にみて中間選挙を控えた年はスケープゴートを探しがちだ。政権の支持率が低下するなかで有権者の目を向けさせる事件などがこれまでも何度か起きている。トヨタ問題がスケープゴートかどうかは断じえないが、11月の中間選挙までは不透明感が残り、株価は完全なアク抜けとはならない可能性がある。
●騒動はいったん収束へ、投資家は様子見継続
<インベストラスト代表 福永博之氏>
最大の論点だった電子制御の問題についてトヨタ自動車(7203.T: 株価, ニュース, レポート)側は完全に否定し、米議会も問題があったという証拠は出していない。新たな材料が出てこなければ、騒動はいったん収束するのではないか。無難に乗り切ったという印象だ。
ただ、米国は中間選挙を控え、海外企業へのバッシングなど人気取り的な動きが出る可能性があり、トヨタ問題は長引くことも考えられる。トヨタ株は、24日の米国市場でトヨタ自動車の米国預託証券(ADR)が上昇したことを受けて足元、買い先行となっているが、投資家は基本的に様子見姿勢を継続するとみている。