「同性婚不受理」は合憲、大阪地裁が初判断 新制度創設にも言及
2022/6/20(月) 20:28配信 毎日新聞
同性どうしの結婚を認めていない民法や戸籍法の規定が憲法に違反するかが争われた訴訟で、大阪地裁は20日、規定に憲法違反はないと判断し、国への賠償請求を棄却する判決を言い渡した。土井文美(ふみ)裁判長は「婚姻の自由」を定める憲法24条は異性婚のみが対象だと指摘する一方、同性カップルを法的に認める新制度の創設にも言及した。原告側は判決を不服として控訴する方針。
東京や福岡など全国5地裁に起こされた同種訴訟で2件目の地裁判決で、合憲判断は初めて。札幌地裁は2021年3月に違憲判決を出しており、司法判断が分かれる形になった。
大阪訴訟の原告は京都や香川、愛知の3府県で暮らす3組6人の同性カップルで、いずれも婚姻届が受理されなかった。国の現行制度は憲法24条を侵害し、「法の下の平等」を定める14条にも反するとして、国に1人当たり100万円の損害賠償を求めていた。
判決はまず、24条について「両性」や「夫婦」の文言が使われ、異性間の結婚のみを指していると指摘。同性婚を想定していない民法や戸籍法の規定に違反はないとした。
各地の自治体では、性的少数者のカップルを婚姻に準じる関係と公的に認める「パートナーシップ制度」の導入が進んでいる。判決は異性カップルの利益との差異は緩和されつつあり、平等原則を掲げた14条違反もないと判断した。憲法違反がないことから、国会が立法措置を怠る「不作為」もないとして、国の賠償責任を認めなかった。
一方、土井裁判長は同性カップルについて「望みどおり婚姻できない重大な影響が生じている」とした上で、社会で公に認知されて安心して共同生活を営む利益が満たされていないと指摘。「婚姻に類似する新たな法的承認の制度を創設することも可能だ」としたが、法的な保護を巡る議論が国民の間で尽くされていないとも述べた。
同性カップルは法律婚で配偶者を対象にした税制上の優遇措置を受けられず、共同親権を持つこともできない。判決は社会状況が今後変化した場合と前置きした上で、「同性婚の制度導入について法的措置が取られないことが将来的に違憲になる可能性はある」と立法府に注文を付けた。
法務省民事局は「国の主張が認められたものと受け止めている」とのコメントを出した。
同性婚訴訟を巡っては、札幌地裁が21年3月、同性カップルが婚姻の法的効果の一部ですら受けられていないのは憲法14条に違反するとして、初の違憲判断を示していた。【安元久美子、山本康介】
◇札幌判決に比べ、司法判断が後退
◇京都産業大・渡辺泰彦教授(家族法)の話
判決は同性カップルの不利益が民法上の契約や遺言などの手続きで解消されつつあるとしたが、過大評価で疑問だ。札幌地裁判決に比べ、同性愛者の権利保護を巡る司法判断が後退したと言わざるを得ない。
2001年にオランダで世界初の同性婚を認める法律が施行されて以降、欧米を中心に同性婚を認める国が増えた。ドイツやフランスは立法府が主導したが、米国では連邦最高裁が同性婚を禁じる州法を違憲と判断し、同性婚が容認された。19年にはアジアの国・地域で初めて台湾で同性婚が法制化された。
海外では既に、同性カップルの子の権利保護を巡る議論に移りつつある。一方、日本も家族のあり方が多様化しているにもかかわらず、立法化の議論が進まない。同性カップルの法的な保護は不十分で、国会は早急に法整備を進める必要がある。
◇憲法24条の解釈は意義深い
◇東京都立大・木村草太教授(憲法)の話
判決は婚姻制度の目的について、男女が子供を産み育てる生殖関係の保護だと判断したが、子供を持つかどうかにかかわらず、親密な関係ならば婚姻は成立するというのが国民意識だろう。異性婚では認められている税制上の優遇措置など個別の法的効果の不平等について、裁判所が十分に検討したのかも疑問だ。
一方で、判決は「婚姻の自由」を保障した憲法24条が同性婚を禁止した規定ではないとも明確に示している。今後の同種訴訟に影響を与える可能性があり、意義深く評価できる。
◇大阪地裁判決 骨子
・「婚姻の自由」を保障する憲法24条は異性間について定めたもので、同性婚を認めていない民法規定などは違憲ではない
・同性愛者が望みどおり婚姻できない重大な影響が生じている。法的承認の制度導入などで公認の利益を実現することも可能だが、国民的な議論が尽くされていない
・異性婚が享受し得る利益との差異は解消、緩和されつつある。立法府の裁量権の範囲を超えていると認められず、「法の下の平等」を定める憲法14条にも反しない
◎上記事は[Yahoo!JAPAN ニュース]からの転載・引用です
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