オウム菊地直子被告 2審 判決要旨/ 被告コメント全文「被害者の言葉、今も心に」(2015/11/27)

2015-11-28 | オウム真理教事件

 産経ニュース2015.11.28 07:57更新
【菊地直子被告逆転無罪】判決要旨
【薬品に関する認識】
 1審判決は、何らかの危険な化合物を大量製造していると被告が認識していたとしたが、自分が運んだ薬品が取り扱いに注意を要する毒劇物だと分かっていても、そのことから、毒ガスや爆発物を製造することを直ちに想起することは困難だ。
 井上嘉浩死刑囚らが人の殺害を含むテロ行為を計画していることを、被告が知らされていなかったというのであれば、運搬した薬品で凶悪なテロに使う物を製造するということが分かっていたと推認するには、単にそれらが「危険な物」というだけでなく、ある程度具体的に殺害手段が想起できるような認識が必要だ。しかし、1審判決は、薬品に爆薬原料が含まれていることや、運搬先のアジトで爆薬が造られていることを被告が知らなかったとした。そうであれば、どのような殺害行為に出るのかほとんど想起できないのではないか。被告に殺害行為を幇助(ほうじょ)する意思があったとするには、より説得力のある論拠が必要だろう。
【井上証言の信用性】
 1審判決は、井上死刑囚から爆薬を見せられ、ねぎらいの言葉をかけられた際に驚く様子を見せなかったとする井上死刑囚の証言から、何らかの危険な化合物を大量製造していたことを被告が認識していたとする。しかし、他の多くの証人が、当時の記憶が曖昧で具体的な事実を思い出すのに苦労しているのに対し、井上死刑囚の証言は、不自然に詳細で具体的だ。疲れて眠ってしまった中川智正死刑囚から、黒色火薬の製造作業を自発的に引き継いだとする証言も他に裏付けはない。運搬した薬品を使って危険な化合物を大量製造することを被告が認識していたとは認められない。
【意思決定への関与】
 当時、被告には教団が危機的状況下にあるという認識はあった。しかし、教団の意思決定や幹部らの意向について関知するような立場になく、教団が追い詰められているとしても、そのことから殺人などのテロ行為を企てていることを想起し、教祖の逮捕阻止のために、危険な化合物を用いて人の殺傷を含み得る活動を起こすという井上死刑囚らの意図までを認識していたとはいえない。
 被告は、教団の教義には殺人を肯定すると受け取られかねないような内容があったが、それは例え話や机上の空論のようなものだと思っていたと話しており、その供述は信用できないものではない。よって、信者であれば、教団によるテロ行為を予想できたはずだという検察官の主張は論理の飛躍があり、到底採用できない。
【逃亡に関する付言】
 被告は逮捕状が出ていることを知りながら長年逃亡生活を続けていたが、地下鉄サリン事件などの重大犯罪で指名手配を受け、客観的には、毒ガスや爆発物の製造過程に携わったり、今回の殺人未遂に使われた爆薬原料を運んだりした事実がある。しかも、事情を知らずに関与したと考えていた他の信者が有罪判決を受けたことも知っていた。処罰を恐れて逃亡していたという事実から、殺人未遂幇助の意思を推認することはできない。

 ◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です
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裁判長「心の中で整理を」 菊地元信徒、何度もうなずく
 朝日新聞デジタル 2015年11月27日23時35分
 オウム真理教が起こした東京都庁の爆発事件から20年。関係者の記憶が薄れる中、東京高裁が教団元信徒・菊地直子被告(43)に言い渡したのは、逆転無罪だった。弁護人は判決を評価したが、事件の被害者や一審で有罪を導いた裁判員からは戸惑いの声も聞かれた。
 「原判決を破棄する。被告人は無罪」。大島隆明裁判長が主文を読み上げると、法廷内にざわめきが広がった。
 菊地元信徒は背中まで伸びた長い髪を後ろで一つにまとめ、グレーのスーツ姿で法廷に臨んだ。正面の裁判長をじっと見つめたまま動かず、被告席に戻る前、裁判長に一礼した。
 約1時間15分に及ぶ言い渡しが終わり、再び正面に立った菊地元信徒に裁判長が語りかけた。
 「法律的には無罪です。ただ、あなたが運んだ薬品で重大な犯罪が行われた。心の中で整理してほしい」
 菊地元信徒は何度もうなずきながら言葉を聞き、裁判長から「いいですね」と念を押されると、最後に深く一礼した。終始硬い表情を崩さなかったが、退廷する際は両手で顔を覆った。
 ◎上記事は[朝日新聞デジタル]からの転載・引用です
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「被害者の言葉、今も心に」 菊地元信徒のコメント全文
  朝日新聞デジタル 2015年11月28日00時00分
 菊地直子・元信徒は27日夜、弁護人を通じてコメントを出した。全文は次の通り(カッコ内は朝日新聞で補いました)。   

 本日の無罪判決、きちんと事実関係を見ていただき、このような判決を下していただきまして、感謝申し上げます。
 とはいえ、私が運んだ薬品によってつくられた爆弾により、何の落ち度も責任もない方に、重篤な被害を与えてしまいましたことは事実です。
 本当に申し訳ありませんでした。
 一審の法廷で(元東京都職員で被害者の)内海様がお話しになったことは、今でも心に残っております。
 また、今日の判決言い渡しの後、裁判長から「当時はわからなかったとしても、この事件で重篤な被害を受けた方がいる。それ以外にも客観的にはあなたの行為によって被害を受けた方々がいることを、心の中で整理をしてください」と声をかけていただきました。
 私といたしましても、内海様や、今日の裁判長からの言葉を、今後の人生の中で、重く受け止めてまいりたいと存じます。
 特に私は、事件後自ら出頭することをせず、そのために多くのご迷惑をおかけしてしまいました。
 法廷でもお詫(わ)びを申し上げましたが、ここで重ねてお詫びを申し上げたいと存じます。
 本当にご迷惑をおかけいたしました。
        菊地直子

    ◎上記事は[朝日新聞デジタル]からの転載・引用です
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元オウム菊地直子被告無罪 釈放 東京高裁 2015/11/27 「きちんと事実見てくれた」菊地被告、判決に謝意 
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