小沢一郎氏「世界的な激動の時期に、日本政界の右傾化は悲劇」(週刊朝日とのインタビュー)

2012-10-30 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア

小沢氏「日本政界の右傾化は悲劇」(朝鮮日報)-海外-livedoor ニュース
朝鮮日報 2012年10月30日08時46分
   日本の与党・民主党を離党し、新党「国民の生活が第一」を結成した小沢一郎氏(70)=写真=が、日本政界の右傾化を強く批判した。
 小沢氏は29日、週刊朝日とのインタビューで「世界的な激動の時期に、(日本で)極端な議論が巻き起こっているが、これは大変なことだ。日本の右傾化の流れが強まっていることは悲劇だ」と述べた。これは最近、橋下徹・大阪市長や石原慎太郎・東京都知事が極右的な新党を結成する動きを見せ、また次期衆議院議員総選挙で第1党になることが有力視されている自民党の総裁に、極右的な安倍晋三・元首相が就任したことなどを批判したものだ。
 その上で小沢氏は「日本はまだ、2大政党を中心とする議会制民主主義に対する理解が進んでおらず、民主主義が成熟してはいない。最大の責任は国会議員にあるが、議員たちを選んだ国民にも責任がある」と語った。また「自民党政権の末期には、首相が1年ごとに代わっていたが、それでも国家のことを考えていた。しかし民主党政権は軽薄な上、国政を官僚に任せてしまっていることが問題だ」と述べた。一方、衆議院の解散・総選挙の可能性については「年内に総選挙が行われると思う」としながらも「野田佳彦首相が衆議院を解散するかどうかは分からない」とした。
 小沢氏は消費税の税率引き上げを進める野田首相と対立し、今年7月に系列の議員49人と共に民主党を離党、消費税の税率引き上げ反対や脱原発を掲げて「国民の生活が第一」を結成した。
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〈来栖の独白 2012/10/30 〉
 朝鮮日報(2012/10/30)によれば、小沢一郎氏は29日、週刊朝日とのインタビューで「世界的な激動の時期に、(日本で)極端な議論が巻き起こっているが、これは大変なことだ。日本の右傾化の流れが強まっていることは悲劇だ」と、橋下徹・大阪市長や石原慎太郎・東京都知事の動き、安倍晋三氏の自民党総裁就任を批判したとある。
 この認識は如何なものか。
 最近頓に「ナショナリズム」「右翼」などといった言葉を耳にする。2010年の海保の艦艇と中国漁船との衝突事件や本年石原慎太郎都知事による尖閣諸島購入等によって、俄かに「日本の右傾化の流れが強まっている」かの感を抱かせるのかもしれないが、中国側にしてみれば日本侵略の長期計画の1チャプターに過ぎず、日本側にしたところで、戦後六十余年に亘って受けてきた米中画策による自虐思想の洗脳が解ける緒にすぎない。尤も、橋下徹氏はどうか知らないが、石原氏も安倍氏も、自虐の洗脳には毒されなかったと推察する。
 孫崎亨著『アメリカに潰された政治家たち』によれば、領土問題(尖閣、竹島、北方)において、アメリカの巧妙な操作に翻弄され尽くした日本の姿が浮かび上がる。「領土」のみならず、この国の一切(政治・憲法・教育・・・)は戦後、占領国アメリカに牛耳られ、支配、隷属させられた歴史(日高義樹著『なぜアメリカは日本に二発の原爆を落としたのか』)であった。
 私は小沢一郎という政治家を批判する者ではない。小沢一郎裁判を注目してきた。この先は、どうぞして[国民の生活が第一]党が衆議員選挙で多数を制して戴きたいと念願してやまない者である。与党としての生き残りしか図らない民主党、与党になりたいだけの自民党、「第3極」などと言い、なんとか多数をとって政権に1ミリでも近づきたい小政党。それらの中に在って、ひとり[国民の生活が第一]は野合を望まず、政策実現のため来たるべき選挙を睨んで手を打っている。私の究極の夢は「小沢一郎首相」である。一度、この政治家に、国を預けてみたい。首相という最高権力を握らせて、腕を振るわせてみたい。短期でもよい。
 ただ、一つだけ訊いてみたいことがある。2009年に団を組んで中国訪問をされた小沢氏に、訊いてみたい。
 アメリカと中国との間に位置する日本。この国は、どのようにすれば生き残れるのか。領土と国民を守る、それは「ナショナリズム」ではなく国家の最大の使命、真っ当な国際感覚である。どの国も、そのようにしている。しかし、自衛権すら行使し難いこの国は、例えば北朝鮮に国民が拉致されるのを感知せず、守ることができずに、世界の笑いものになった。権謀術数を駆使するアメリカと、核心的利益を前面に出して襲い掛かってくる中国から、この国をどのように守るのか。訊いてみたい。
 小沢氏は「民主主義」という言葉をよく口にされるが、中国は民主主義国家ではない。選挙が行われたことのない専制国家であり、隣国に対しては「核心的利益」を公言する覇権主義国家である。
 チベット、ウイグルを侵略し奪った。チベットでは、焼身自殺が相次いでいる。つい先日も、中国政府の弾圧に抗議して男性が焼身自殺した。南沙諸島、西沙諸島における周辺諸国との領海の問題も絶えない。これら紛争がそのまま日本の問題でない、とは誰も言い切れないだろう、ナショナリストでなくとも。このような、私の小さな疑問を小沢氏に尋ねてみたい。
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インタビュー 石原都知事:チベットに言及「国も文化もなくなった。日本を第2のチベットにしたくない」 2012-08-28 | 政治〈領土/防衛/安全保障〉
 【インタビュー】尖閣、施設作らねば実効支配にならない=石原都知事
2012年8月28日9:26JST 

 東京都の石原慎太郎知事は、ウォール・ストリート・ジャーナル/ダウ・ジョーンズ経済通信とのインタビューで、中国との緊張が高まる原因となった尖閣諸島(中国名:釣魚島)の東京都による購入の経緯や購入後の計画について語った。また韓国との間で領有権が争われている竹島(韓国名:独島)や今後の国内政局にも言及した。さらに国政への復帰を示唆し、復帰したら憲法改正問題に取り組みたいと意欲を示した。
 主な一問一答は以下の通り。
WSJ:まず竹島について伺いたい
石原知事:これは、敗戦後、まったく日本政府が機能していない時に、彼らが勝手に「李承晩ライン」、主に漁業権の観点から線を引いてしまった。日本もちょっと抗議したが、全然力がなかったし、独立前だったので(聞き入れられなかった)。(今となっては)時間も経ち過ぎて半ば既定(事実)となってしまい、非常に残念だ。
WSJ:こんなに騒がしい問題になって、これからどうなるか。どうなるべきか
石原知事:どうもならないだろうな。ハーグの国際司法裁判所に提訴しても、相手が出てこない。
WSJ:尖閣諸島の話になるが、経済価値はどのぐらいあるか。知事が、東京都が買収すべきだと言った背景を海外の読者にご説明願いたい
石原知事:私はチベットに非常に同情的だ。私はダライラマと非常に親しい。(だが、)ダライラマが日本に来て私に会おうとすると、外務省が政治行動になるから止めろというのでなかなか会えないでいる。チベットはもともと独立国だった。今は、中国の属領になってしまった。チベットが、もしオリンピックを招致したいと言っても、名乗りを上げられない。国がなくなった。指導者もいなくなった。文化もなくなってしまった。インドのダラムサライに亡命政権があるだけだ。私は日本を第2のチベットにしたくない。 〈以下略〉
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尖閣諸島をめぐり中国が軍事力行使する可能性も/中国は近隣諸国と23もの領有権争いを繰り広げてきた 2012-10-30 | 政治〈領土/防衛/安全保障〉 
【オピニオン】尖閣諸島をめぐり中国が軍事力行使する可能性も
2012年10月30日11:39 WSJ Japan Real Time
 尖閣諸島(中国名:釣魚島)をめぐる中国と日本のにらみ合いは2か月目に入った。今回の対立は一般的に考えられているよりも危険である。過去の領有権争いにおける中国の行動を思い返せば、尖閣諸島をめぐるにらみ合いには事態が一気に激化する可能性があることがわかる。
 1946年以来、中国は領土・領海をめぐって近隣諸国と23もの領有権争いを繰り広げてきた。そのうちの17事案は解決済みで、通常は歩み寄りによる合意で解決されている。とはいえ、中国は6事案で、多くの場合2度以上にわたって軍事力を行使してきた。尖閣諸島をめぐる難局は、こうした事案と非常に似通っている。
 まず言えるのは、中国が領有権争いで軍事力を行使するのは、通常、強い軍事力を持つ隣国に対してだけだということである。台湾との危機の他、インド、ロシア、ベトナム(数回)との紛争や軍事衝突がこれに含まれる。こうした国々には中国の領土的野心を阻止するだけの軍事力があった。モンゴルやネパールといった軍事力に劣る国との領有権争いでは、強い立場での交渉が可能なので、中国は軍事力の行使を控えてきた。近代的な海上自衛隊と大規模な海上保安庁を有する日本は今や、中国にとって最強の海軍力を持つ近隣国となっている。
 中国はまた、尖閣諸島のような沖合の島をめぐる争いで最も頻繁に軍事力を行使してきた。陸続きの国境をめぐって中国が軍事力を行使したのは16の事案の5分の1程度でしかない。それとは対照的に、中国は島の領有権を争う4事案の半分で軍事力を行使している。これは、シーレーン(海上交通路)の安全保障に影響を与え、天然ガスや水産資源の宝庫である可能性もある島々にはより大きな戦略的、軍事的、経済的価値があると目されているからだ。
 加えて中国は主に、領有権を主張する地域をほとんど、あるいはまったく支配していない場合、その立場を強めるために軍事力を行使してきた。たとえば1988年、中国はスプラトリー諸島(中国名:南沙諸島)の一部である6つのサンゴ礁を占拠し、ベトナムと衝突した。中国は数十年にわたってスプラトリー諸島の領有権を主張していたが、その時に占拠するまではその一部たりとも支配していなかった。
 カザフスタンとの国境をめぐる争いのように、中国が領有権を主張する地域の一部をすでに支配している場合、交渉上優位な立場にある中国には軍事力を使う理由がほとんどない。ところが中国は現在、東シナ海にある尖閣諸島をまったく支配できていない。尖閣は日本の実効支配下にあるからだ。
 最も重要なのは、体制が不安定で、指導部に決意を示すより大きな動機があるときに中国が領有権争いで軍事力を行使してきたという事実である。中国からすると、対立する国が中国国内の混乱につけ入ろうとしていると考えられ、弱気で限定的な対抗措置は国民の不満を増幅させかねないという思いもある。
 今日、中国の指導部は、共産党最高指導部内での権力争い、中国共産党の正当性をむしばむ景気の鈍化、慎重に行う必要がある権力の世代交代など、いくつかの理由で追い込まれていると感じているかもしれない。こうした要因により、日本と中国国民に決意を示すために断固たる行動を取ることの価値は高まっているし、中国政府は妥協したり、引き下がったと思われるようなことをしづらくなっている。
 日本の尖閣をめぐる動きは、中国側からすると、その苦境に付け込もうとしたものということになる。現在のにらみ合いの発端となったのは、石原慎太郎前都知事が4月に行った発表で、東京都が民間人の地権者から尖閣諸島の3島を買い取る計画があるというものだった。石原氏の発表は、ここ20年以上の中国政界で最大の混乱と言ってもいい、政治局委員薄熙来氏の要職解任から数日後のことだった。
 経済成長が予想よりもずっと早く減速すると、中国指導部の心配の種は増え、外交姿勢も硬化した。日本の野田佳彦首相は7月、日中戦争の直接の導火線となった1937年の盧溝橋事件の記念日に国が尖閣諸島を購入することになったと発表した。最終的に購入契約が結ばれたのは9月で、これも1931年の満州事変の記念日の数日前というタイミングだった。
 尖閣諸島をめぐるにらみ合いの最後の不安定要因として、日中両国が同時に他の島々の領有権問題を抱えているという事実がある。韓国の李明博大統領は最近慣例に逆らって竹島(韓国名:独島)を訪問した。日本も領有権を主張している竹島だが、実効支配をしているのは韓国である。一方で中国は、南シナ海でベトナムやフィリピンと領有権争いをしている。日中の両政府は、尖閣の領有権争いで勝った国が、その他の島についても勝てるという結論に達するかもしれない。
 歴史は運命ではないし、中国はもう20年以上も領有権争いで軍事力を行使していない。したがって尖閣をめぐる対立の拡大は避けられるかもしれないが、現在の状況は危険に満ちている。どちらかの政府の艦船で万一死者が出るような事件が起きると、結末が予想できないような本当の危機が始まる可能性もあるのだ。
(筆者のM・テイラー・フラベル氏は米マサチューセッツ工科大学の政治学の准教授で安全保障問題プログラムのメンバー。著書には2008年にプリンストン大学から出版された『Strong Borders, Secure Nation: Cooperation and Conflict in China's Territorial Disputes 』などがある)
記者:M.Taylor Fravel
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『なぜアメリカは日本に二発の原爆を落としたのか』日高義樹著《ハドソン研究所首席研究員》
 (p1~)ハドソン研究所で日本の平和憲法9条が話題になったときに、ワシントン代表だったトーマス・デュースターバーグ博士が「日本の平和憲法はどういう規定になっているか」と私に尋ねた。
「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」
 私がこう憲法9条を読み上げると、全員が顔を見合わせて黙ってしまった。一息おいてデュースターバーグ博士が、こういった。
「おやおや、それでは日本は国家ではないということだ」
 これは非公式な場の会話だが、客観的に見ればこれこそ日本が、戦後の半世紀以上にわたって自らとってきた立場なのである。
 このところ日本に帰ると、若い人々が口々に「理由のはっきりしない閉塞感に苛立っている」と私に言う。私には彼らの苛立ちが、日本が他の国々とあまりに違っているので、日本が果たして国家なのか確信が持てないことから来ているように思われる。世界的な経済学者が集まる会議でも、日本が取り上げられることはめったにない。日本は世界の国々から無視されることが多くなっている。
 日本はなぜこのような国になってしまったのか。なぜ世界から孤立しているのか。このような状況から抜け出すためには、どうするべきか。
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『帝国の終焉』(「スーパーパワー」でなくなった同盟国・アメリカ)日高義樹著 2012年2月13日第1版第1刷発行 PHP研究所
p93~
第5部 どの国も民主主義になるわけではない
 人類の歴史を見れば明らかなように、確かに長い目で見れば、野蛮な時代から封建主義の時代に代わり、そして絶対主義の時代を経過し、民主主義が開花した。ヨーロッパの多くの国々はこういった過程を経て豊かになり、人々の暮らしが楽になるとともに、民主主義、人道主義へ移行していった。鍵になったのは「経済が良くなり、暮らしが楽になる」ということである。
 中国の場合は、明らかにヨーロッパの国々とは異なっている。そして日本とも全く違っている。中国は二十数年にわたって経済を拡大し続け、国家として見れば豊かになった。だが、すでに見てきたように貧富の差が激しくなるばかりで、国民は幸福にはなっていない。こう決めつけてしまうと親中国派の人々から指弾を受けるかもしれないが、中国国内の政治的な状況を見ると、依然として非人道的な政治が続いている。民主主義は全く育っていない。
 中国はもともと共産主義的資本主義と称して、共産党が資本主義国家と同じようなビジネスを行なってきた。中国という国家が資本主義のシステムを使ってビジネスを行ない、国営や公営の企業が世界中から稼ぎまくった。この結果、中国国家は経済的に繁栄したものの、中国人一人ひとりは幸福になっているようには見えない。
p95~
 「中国人は食べられさえすれば文句は言わない」
 中国の友人がよくこう言うが、中国人はそれ以上のことを望まないのかもしれない。つまり中国の人は「食べられる」以上のこと、つまり形而上学的な問題には関心がないのかもしれない。
 「民主主義、人道主義、国際主義といったものは我々には関係ない」
 こう言った中国の知人がいるが、中国だけではなく、ロシアの現状を見ても、封建主義から民主主義に至る政治的な変化を人類の向上とは考えない人々が大勢いるようだ。
p97~
 第2次大戦以来、人道主義と民主主義、そして平和主義を主張してきたアメリカのやり方が、アメリカ主義でありアメリカの勝手主義であると非難された。「アメリカ嫌い」という言葉が国際的に定着したのは、その結果であった。そうしたアメリカのやり方を、1つの考え方であり、1つの価値観に基づくものであると切り捨てているのが、ロシアの指導者であり、中国の指導者である。
p98~
 ヒットラーはドイツの誇りを掲げ、ユダヤ人を圧迫するとともに、反政府勢力を弾圧して経済の拡大を図った。中国もその通りのことをやっている。しかも、冷戦に敗れたロシアのプーチン前大統領が主張しているように、価値観の違った、そしてやり方の違った経済の競争が可能であるとうそぶいている。
 だが彼らの言う価値観の相違というのは、民主主義を無視し、人道主義を拒否し、国際主義に反対することである。中国やロシアについては、冷戦に敗れた国や第2次大戦に脇役しか与えられなかった国が自分たちのやり方で歴史の勝利者になろうとしているように見える。
p99~
 共産主義は冷戦の結果、民主主義とそれに伴う人道主義に敗北したはずである。ところが中国は、冷戦と同じ体制を維持しながら、経済の戦争には勝てるとばかり傲慢になっている。
 ヨーロッパの人々は中国の台頭をヒットラーの台頭になぞらえている。これに対して日本のジャーナリストや学者たちは驚きを隠さないようである。彼らは、ユダヤ人を抹殺しようとしたヒットラーと中国は異なっていると考えている。だが、共産党が絶対で、反対の意見を持つ者は犯罪者として牢獄に送り、言論の自由を認めていないという点では、中国はヒットラーと同じである。
 中国は明らかに人道主義を否定しているだけでなく、民主主義を理解しようとしていない。国際主義も分かろうとしない。
p100~
 ヨーロッパの人々は、歴史的な経験から中国が危険であるとして、ヒットラーと同じであると指摘しているが、歴史にナイーブな日本の人々は全くそのことに気がついていない。
 ヨーロッパの人々はヒットラーと戦い勝利を得たが、そのためにアメリカと同盟し手を携えて戦った。中国がヒットラーだという考えに驚くべきではない。新しいヒットラーである中国の共産主義の専制体制に対して世界の人々は、手を携えて戦わなくてはならなくなっている。「アメリカ嫌い」という言葉で中国の脅威から目を逸らす時代は終わったのである。
p168~
第4部 日本はどこまで軍事力を増強すべきか
 日本はいま、歴史的な危機に直面している。ごく近くの隣国である中国は、核兵器を中心に強大な軍事体制をつくりあげ、西欧とは違う独自の倫理に基づく国家体制をつくりあげ、世界に広げようとしている。すでに述べたように、中国は人類の進歩が封建主義や専制主義から民主主義へ向かうという流れを信用していない。中央集権的な共産党一党独裁体制を最上とする国家を維持しながら軍事力を増強している。そのような国の隣に位置している日本が、このまま安全でいられるはずがない。
 日本はいまや、同じ民主主義と人道主義、国際主義に基づく資本主義体制を持つアメリカの支援をこれまでのようには、あてにできなくなっている。アメリカは、歴史的な額の財政赤字を抱えて混乱しているだけでなく、アメリカの外のことに全く関心のない大統領が政権に就いている。こうした危機のもとで、日本は第2次大戦に敗れて以来、初めて自らの力で自らを守り、自らの利益を擁護しなければならなくなった。
 第2次大戦が終わって以来、日本人が信奉してきた平和主義は、確かに人類の歴史上に存在する理念である。だが、これほど実現の難しい理念もない。
p170~
国家という異質なもの同士が混在する国際社会には、絶対的な管理システムがない。対立は避けられないのである。人間の習性として、争いを避けることはきわめて難しい。大げさに言えば、人類は発生した時から戦っている。突然変異でもないかぎり、その習性はなくならない。
 国連をはじめとする国際機関は、世界平和という理想を掲げているものの、強制力はない。理想と現実の世界のあいだには深く大きなギャップがあることは、あらゆる人が知っていることだ。
 日本はこれまで、アメリカの核の傘のもとに通常兵力を整備することによって安全保障体制を確保していたが、その体制は不安定になりつつある。今後は、普遍的な原則に基づいた軍事力を整備していかなければならない。普遍的な原則というのは、どのような軍事力をどう展開するかということである。(略)
p171~
 日本は、「自分の利益を守るために、戦わねばならなくなった時にどのような備えをするか」ということにも、「その戦争に勝つためには、どのような兵器がどれだけ必要か」ということにも無縁なまま、半世紀以上を過ごしてきた。アメリカが日本の後ろ盾となって、日本にいるかぎり、日本に対する戦争はアメリカに対する戦争になる。そのような無謀な国はない。したがって戦争を考える必要はなかった。このため日本はいつの間にか、外交や国連やその他の国際機関を通じて交渉することだけが国の利益を守る行為だと思うようになった。
 よく考えてみるまでもなく、アメリカの日本占領はせいぜい数十年である。人類が戦いをくり返してきた数千年の歴史を見れば、瞬きするほどの時間にすぎない。日本人が戦争を考えずに暮らしてこられた年月は、ごく短かったのである。日本人はいま歴史の現実に直面させられている。自らの利益を守るためには戦わねばならない事態が起きることを自覚しなければならなくなっている。
 国家間で対立が起きた時、同じ主義に基づく体制同士であれば、まず外交上の折衝が行われる。駆け引きを行うこともできる。だがいまの国際社会の現状のもとでは、それだけで解決がつかないことのほうが多い。尖閣諸島問題ひとつをとってみても明らかなように、外交交渉では到底カタがつかない。
p172~
 ハドソン研究所のオドム中将がいつも私に言っていたように、「常にどのような戦いをするかを問い、その戦いに勝つ兵器の配備を考える」ことが基本である。これまでは、アメリカの軍事力が日本を守っていたので、日本の軍事力は、アメリカの沿岸警備隊程度のものでよかった。日本国防論は空想的なもので済んできたのである。
p173~
 ヨーロッパで言えば、領土の境界線は地上の一線によって仕切られている。領土を守ることはすなわち国土を守ることだ。そのため軍隊が境界線を守り、領土を防衛している。だが海に囲まれた日本の境界線は海である。当然のことながら日本は、国際的に領海と認められている海域を全て日本の海上兵力で厳しく監視し、守らなければならない。尖閣諸島に対する中国の無謀な行動に対して菅内閣は、自ら国際法の原則を破るような行動をとり、国家についての認識が全くないことを暴露してしまった。
 日本は海上艦艇を増強し、常に領海を監視し防衛する体制を24時間とる必要がある。(略)竹島のケースなどは明らかに日本政府の国際上の義務違反である。南西諸島に陸上自衛隊が常駐態勢を取り始めたが、当然のこととはいえ、限られた予算の中で国際的な慣例と法令を守ろうとする姿勢を明らかにしたと、世界の軍事専門家から称賛されている。
 冷戦が終わり21世紀に入ってから、世界的に海域や領土をめぐる紛争が増えている。北極ではスウェーデンや、ノルウェーといった国が軍事力を増強し、協力態勢を強化し、紛争の排除に全力を挙げている。
p174~
 日本の陸上自衛隊の南西諸島駐留も、国際的な動きの1つであると考えられているが、さらに必要なのは、そういった最前線との通信体制や補給体制を確立することである。
 北朝鮮による日本人拉致事件が明るみに出た時、世界の国々は北朝鮮を非難し、拉致された人々に同情したが、日本という国には同情はしなかった。領土と国民の安全を維持できない日本は、国家の義務を果たしていないとみなされた。北朝鮮の秘密工作員がやすやすと入り込み、国民を拉致していったのを見過ごした日本は、まともな国家ではないと思われても当然だった。
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石原慎太郎著『新・堕落論』 新潮選書2011/7/20発行
p29~
 さらにその結果、あの戦争を起こした日本だけを一方的に悪人とした、いわゆる東京裁判史観が、戦後において日本の近代史、現代史を考える基準にされてしまったのです。
 東京裁判でも外国人を含めて一部の弁護人が、あの戦争の中でアメリカが行った戦争における非道、つまり戦争の在り方を既定したジュネーブ条約違反を列挙してみせたが(~p29)相手にはされなかった。
p30~
 ジュネーブ条約では戦闘によって意識的に非戦闘員を殺してはならぬとありますが、アメリカの原爆投下は一瞬にして20万人を超す日本人を殺戮してしまった。
 その他の例としても(中略)制空権を失っていた首都東京に、アメリカの空軍司令官のルメイは、それまで高射砲の届かぬ亜成層圏を飛んでいたB29を超低空の2、3百㍍を飛ばせ、焼夷弾による絨毯爆撃をさせ一晩で十万人を超す都民を殺戮してしまった。
 これは相手側の記録にもあるが、その計画に一部のスタッフはこれはあきらかにジュネーブ条約違反だと反対したが、ルメイは「日本は薄汚い国だから、焼いて綺麗にするのだ」と公言しことを行ってしまったのです。その相手に日本は戦後、航空自衛隊の創立に功あったとして勲章を贈ったのだから馬鹿みたいに人のいい話だ。
 日本及び日本人が真に自立するために絶対に必要な精神的要件とは、連合軍が勝利者(~p30)として一方的に行った東京裁判の歴史観を払拭することです。
p143~
 同じ敗戦国のドイツは、戦後の復興の過程で、新しい憲法と新しい教育の指針は絶対に勝者たる外国にはまかせず、自分自身で決めるといい張り通しました。当たり前のことだが、その当たり前のことをこの日本は出来ずに全て占領軍の言いなりになってしまった、その結果が今の体たらくだ。
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『日本人の誇り』藤原正彦著(文春新書)
p58~
 「明治・大正・昭和戦前は、帝国主義、軍国主義、植民地主義をひた走り、アジア各国を侵略した恥ずべき国。江戸時代は士農工商の身分制度、男尊女卑、自由も平等も民主主義もなく、庶民が虐げられていた恥ずかしい国。その前はもっと恥ずかしい国、その前はもっともっと・・・」
 占領後、アメリカは米軍による日本国憲法制定を手始めに、言論統制、「罪意識扶植計画」等により、日本をアメリカに都合の好い属国に造り替えてゆく。
p63~
 GHQすなわちアメリカはまず新憲法を作り上げました。GHQ民生局が集まり1週間の突貫工事で作ったのです。憲法の専門家はいませんでした。まず前文に「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」と書きました。アメリカは他国の憲法を自分達が勝手に作るというハーグ条約違反、そしてそれ以上に恐るべき不遜、をひた隠しにしましたが、この文章を見ただけで英語からの翻訳であることは明らかです。「決意した」などという言葉が我が国の条文の末尾に来ることはまずありえないし、「われら」などという言葉が混入することもないからです。いかにも日本国民の自発的意志により作られたかのように見せるため、姑息な姑息な偽装を施したのですが、文体を見れば誰の文章かは明らかです。そのうえ、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」と美しく飾ってみても、残念なことに「国益のみを愛する諸国民の権謀術数と卑劣に警戒して」が、現実なのです。
 ともあれこの前文により、日本国の生存は他国に委ねられたのです。
 第9条の「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」は前文の具体的内容です。自国を自分で守らないのですから、どこかの国に安全保障を依頼する以外に国家が生き延びる術はありません。そして安全保障を依頼できる国としてアメリカ以外にないことは自明でした。すなわち、日本はこの前文と第9条の作られたこの時点でアメリカの属国となることがほぼ決定されたのです。この憲法が存在する限り真の独立国家ではありません。中国に「アメリカの妾国」と馬鹿にされても仕方ないのです。
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