苦しまずにあっさりと…「ピンコロ往生」 こうすればできる! 山中伊知郎(健康ジャーナリスト)2016/10/6

2016-10-26 | Life 死と隣合わせ

Posted on 2016年10月3日 5:55 AM 
苦しまずにあっさりと…「ピンコロ往生」こうすればできる!(1)「ピンコロ死」と「突然死」は違う
 現代は超高齢化社会。健康で長生きできるならともかく、認知症や寝たきりになって、最後は延命治療で体中に管がつながれ、生きながらえるかもしれない。そんなのはゴメンだ! 目指せ、元気で長生き。倒れたらすぐにお迎えが来る「ピンピンコロリ」。そう、「ピンコロ往生」といきたいものだ!
 12年前、私の父親がぽっくりと死んだ。その時、76歳。年金生活をしていた、ごくフツーの一般庶民である。毎年の健康診断でもこれといった異常値はなく、散歩にも毎日出かける。だが、ある日の夜11時過ぎ、自宅で心臓発作を起こして病院に運ばれ、日付が変わった午前1時48分に臨終を迎えた。アッという間の出来事だった。この鮮やかな去り際を見た私は「自分もこんな死に方をしたい」と思ったものである。
 いわゆる「ぽっくり死」「ピンコロ死」は、ピンピンしていた老人がある日突然、コロッと逝ってしまうことをいう。この「ピンコロ往生」の定義を、私は次のように決めている。
 年齢は70代以上。人生も一段落し、いつ亡くなってもいい状態。元気で介護の世話を受けず、倒れたら最長でも1週間以内に逝く。健康寿命死といってもいい。では「突然死」と何が違うのかといえば、その年齢だ。まだ現役の50代、60代で惜しまれながら死んでしまうのが突然死である。
 ではいったい、どうすれば、こんな「理想的な」最期を迎えることができるのか。私はこれまで約40人のピンコロ往生のデータを取った。その実際のケースを見ながら考えてみることにする。まずは「入浴ピンコロ」の例から。
 80歳の女性・Oさん。威勢のいい江戸っ子で、体で悪いところは膝ぐらい。見た目は60代という感じだった。朝風呂に入ったのに、なかなか出てこない。家族が行くと、風呂場でそのまま息絶えていた。脳出血だった。
 実はピンコロ往生と「風呂」は縁が深いのだ。内科医で作家の米山公啓氏によれば、
「湯船に入った瞬間、一気に血圧が上がって、それから下がっていくんです。だから高血圧の方は脳にダメージを受けて、そのまま溺れてしまったりする」
 特に冬場の、外気と湯船との温度差が大きい時が「狙い目」らしい。
 季節でいうと、年末年始とお盆前後にピンコロ往生を遂げるお年寄りも多い。
 東京都内で夫とガソリンスタンドを経営していた女性・Kさん(90)。スタンドを息子に譲ったあとは、1人で銀座のレストランを食べ歩きするなど元気そのもので、ヘビースモーカーでもある。年の初めに息子夫婦や孫と熱海旅行をするのが恒例で、大みそかには孫たちにお年玉を渡し、旅行の準備も全て済ませた元日の朝、熱海ではなく、あの世に旅立っていった。心不全だった。病院関係者がコッソリと明かす。
「年末年始やお盆は病院も休みに入っていることが多く、緊急の処置が手薄になるんです。ふだんの救急態勢とはだいぶ違いますね」
 つまりは、手薄な応急処置が間接的な要因となってピンコロ死に至る。倒れる病人側の問題ではなく、外的要因によるものなのだ。

Posted on 2016年10月4日 5:55 AM
苦しまずにあっさりと…「ピンコロ往生」こうすればできる!(2)健康オタクになるのが近道
 続けて「誕生日ピンコロ」のケースを。
 99歳で亡くなった元書道家の男性・Tさん。新聞を毎日隅から隅まで読み、話題には事欠かないくらい頭もしっかりしていた。健診でも大きな病気は見つからない。「白寿」を迎えるとあって、子供や孫たちが誕生日にお祝いの会を計画。ところが、その3日前に倒れ、寝込んでしまう。やむなくTさんのベッドを前に10人以上の子や孫が集合して、おのおのが挨拶。全てが終わって30分ほどすると、安心しきったTさんは息絶えた。
 高齢になると、よく誕生日の当日や翌日に亡くなるらしい。久しぶりに家族みんながそろって興奮し、血管が破れたりするためだ。本人としては祝福されたあとに旅立てるのだから、決して不幸な話ではない。
「ピンコロで逝きたければ、まず90歳まで元気で長生きするのが最も確率が高い。体全体がバランスよく衰えているので、自然に苦しまずに逝きやすいですね」(米山氏)
 そのためには生活習慣病にならないように、酒もほどほど、タバコも吸わず、適度な運動がいいそうだが、実はそんな健康的な生活をしている人が、90歳どころか、70代でみごとなピンコロ死を遂げる例も少なくない。
 歯科医をしていた70代の男性・Hさん。職業柄、体のケアは大事にし、スポーツジムで汗を流すのが日課。ジムから帰ると、ビールを飲んでマッサージ器にかかるのも毎日のことだ。ところがある日、朝までマッサージ器に座ったままのHさんを、妻が発見した。
 これはジョギング中に死亡する例があるのと同じ、ショック死のようなものだ。
 70代で亡くなった元薬剤師の男性・Oさんも典型的な健康オタクで、山登りが趣味。健康食品を試すのも大好きだ。肉は体に悪いからと菜食主義を通し、「野菜は根っこや葉っぱまで食べなきゃ」が口癖だった。健診も異常なし。それが突然、脳梗塞で倒れ、わずか3日後に亡くなった時には、思わず周囲も「あの健康好きの人がね」と驚いた。
 健康にこだわりすぎれば、あるいはピンコロへの道も開けるのかもしれない。
 デイサービスの現場で働くスタッフは言う。
「ここまで来たらオレの人生は終わり、と達観しているようなお年寄りはアッサリと死にますね。介護を受けるのが大嫌いだった80代のおじいちゃんがそうでした。『みんなに迷惑をかけたくない』が口癖のおじいちゃんもそう。そういうことを、気を引こうと、これ見よがしに家族の前で言うこともなく、『故人は生前、こんなことを話していました』と伝えて家族が驚くというパターン。家族のことを思いやるような人は、スコンと死ぬ率が高いです」

Posted on 2016年10月5日 5:55 AM 
苦しまずにあっさりと…「ピンコロ往生」こうすればできる!(3)医師が告白「救急車は呼ぶな」
 ピンコロの鍵となるものに「コーフン」もある。いわゆる「腹上死」もそうだが、他にも死に至るコーフンはある。「夫婦ゲンカピンコロ」がその一つ。
 70代前半だったAさん。タバコは好きだが酒は飲まず、やや高血圧なくらい。子供は独立して、夫婦2人の生活。妻との仲は悪くなかったが、ある晩、些細なことで夫婦ゲンカとなり、そのコーフンの最中、Aさんは倒れた。駆け寄る妻に「お前の世話になんかなるか!」と言い放ち、タクシーで地元の小さな病院へ。ところが着いたらもう意識はなく、半日後に亡くなった。本当に奥さんの世話にならずに、あっさり逝ってしまったのだ。死因は心筋梗塞。米山氏は、
「大病院でなく、タクシーで小さな病院に行ったのが生死の分かれ目ではないか」
 と推測する。これが救急車だと、多くは大病院の救急センターに運ばれ、意外に助けられてしまうのだ。私の父親も、突然気を失った時に気が動転しすぎた母親が体を揺すって起こそうとするなど、なかなか救急車を呼べなかった。
 かつて数人の医師に「どうしたらぽっくり死ねるか」と尋ねた際、皆が「急な異変で救急車を呼ばないことですよ。延命のベルトコンベアに乗ってしまうから」と答えた。救急車は「生かす」ためにあるからだ。ただし、前出・米山氏は、こんな現実も指摘する。
「家で脳梗塞や心筋梗塞で倒れて、発見者が放置するなんてできますか。やはり救急車呼ぶでしょ。でなきゃ、殺人になりかねない。そううまくピンコロなんてできません」
 その結果、こうした病気で倒れても、死亡率は1割未満。特に脳梗塞などは、生き残って後遺症に悩まされるケースが少なくない。
 ではどうするか。「事前指定書」というものがある。病気などで意識がなくなり、自分の意思を伝えられなくなった時のためのものだ。どんな治療を望む、あるいは拒みたいかが書かれたもので、これによっていたずらな延命治療を受けず、よりスムーズな健康寿命死を遂げることも可能になる。
 ところで、ピンコロ往生を目指すなら、どうやら長野県に住むのがいいらしい。長野が発信地となっている「PPK(ピンピンコロリ)運動」なるものがある。ラジオ体操の改良版というか、ラジオ体操をしながら足首のツボを押したり耳を引っ張ったりするものだ。漢方を含め、こうした東洋医学的なアプローチのメリットは、ピンコロ往生にとって大きいという。
 さらには、「粗食=長生き」のイメージを覆す調査結果も。ある研究所が東京と秋田に住む65歳以上の1500人を対象に、10年間にわたってライフスタイルと長寿との関係を追ったところ、粗食は健康を害したり、寿命を縮める可能性が高いことがわかったという。「健康な長寿者」に共通していたのはタンパク質をきちんととっていたこと。「肉食=悪」ではなく、粗食はピンコロの敵なのだ。

Posted on 2016年10月6日 5:55 AM 
苦しまずにあっさりと…「ピンコロ往生」こうすればできる!(4)「ぽっくり寺」を参拝しよう
 ここまでいろいろ論じてきたが、事前指定書を書いたうえで、健康オタクとしてPPK運動にいそしみ、肉をよく食べ、冬場に風呂で倒れてもすぐに救急車を呼ばなければ願いはかなうのか。ピンコロ往生を実現するためには結局、何が必要なのか。米山氏はたったひと言、こう答えた。
「運」
 むー、そうか。万全を期し、あとは運。だとすれば「神頼み」ならぬ「仏頼み」も繰り出すしかない。
 参拝すればピンコロがかなう「ぽっくり寺」なるものが全国に数十は存在する。その代表的存在といえばやはり、奈良県斑鳩町(いかるがちょう)の吉田寺(きちでんじ)だろう。1972年、認知症をテーマにした小説「恍惚の人」が大ヒットしたのをきっかけに、世の中あげての「ぽっくり死にたい」ブームが到来。たまたまテレビで「ぽっくり往生の寺」として紹介された吉田寺に参拝客が殺到するようになり、「ぽっくり寺なら吉田寺」のイメージが定着した。木魚の穴に「ピンコロで死ねますように」と願い事を書いた紙を入れるならわしでも知られている。
 福島県の「会津ころり三観音」も人気だ。弘安寺、如法寺、恵隆寺の各寺に祭られる三観音像を拝むとともに、観音堂の中にある「抱きつき柱」にすがればぽっくり往生の大願が成就する、と言われている。ぜひ柱をハグしに行ってほしい。
 東京では八王子市の龍泉寺がよく知られている。本堂には「ぽっくり観音」が安置され、春夏のお彼岸の季節にだけ、観音様がご開帳される。まさしく「秘仏」である。そしてその時期は、ピンコロを願うお年寄りで大にぎわい。住職の武田道生師によれば、
「お参りにいらっしゃる方も変わりました。30~40年前は、お子さんに連れられてようやくたどりついた、という感じの方(高齢者)が多かったのに、今は70代くらいでもお若い。ウオーキング感覚のようなお元気な方が多いです」
 龍泉寺では江戸時代から「ぽっくり信仰」が続いているのだが、近年は高齢化とピンコロ願望の広がりもあって、「ウチも『ボケなし観音』を置くことにした」という寺が続出しているらしい。何だか「ピンコロブーム」到来の兆しなのだ。
 そしてもう1カ所。東京の王子駅から歩いて20分余り、バス停「豊島六丁目」のすぐ前にひっそりと建つ祠に置かれた「ぽっくり地蔵」もぜひ参拝してほしい。地元住民によれば、
「時たま、お年寄りがじっとお祈りしている姿を見ますね」
 街の風景の中にさりげなく存在するたたずまいが、何ともピンコロの夢をかなえてくれそうな気がするのだが。ピンコロ往生への道は険しい。しかし挑戦あるのみ!
*山中伊知郎(健康ジャーナリスト)
 1954年生まれ。著書に「ぽっくり往生するには」(長崎出版)など。友人たちと「ぴんころ倶楽部」なる団体を設立し、ピンコロ往生を実現した人たちのエピソードを集めたブログ「ピンコロ往生伝」を運営。10月4日(火)に新宿・ゴールデン街「ビッグリバー」にて午後7時から「ピンコロ往生を語る会」開催。どうすればピンコロ往生できるかを、徹底的に語り合う。参加者募集中。

 ◎上記事は[アサ芸プラス]からの転載・引用です 


1 コメント

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私の父が90代前半 (淡水真珠)
2016-10-26 15:59:13
だから76歳は早死にだね。平幹次郎さんが典型的なピンコロ往生だと言うコメントを見たけど浴槽で亡くなっていたそうだから、ちと恥ずかしい(>_<)
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