<いのちの響き>知的障害者更生、帰住先が支え 広がらぬ受け入れ施設

2017-04-27 | Life 死と隣合わせ

<いのちの響き>知的障害者更生、帰住先が支え 広がらぬ受け入れ施設
中日新聞 2017年4月27日 朝刊
 20日、21日付の「いのちの響き」では、罪を犯して服役後、就労訓練に励む知的障害者の男性を取材した。ただ、男性のように、支援を得て再出発できる人ばかりではない。帰る場所がなく生活苦に陥り、再び犯罪に手を染める人も少なくない。2009年から各都道府県に「地域生活定着支援センター」が設置されるなど態勢の拡充が図られているが、受け入れる施設が広がっているとはいえないのが現状だ。 (添田隆典)
 「逮捕歴がある人の受け入れ先はなんとか見つけているのが実情。高齢者よりも入居できる施設が少ない障害者はなおさら…」。服役した高齢者や障害者が、出所後に必要な公的サービスを受けられるよう調整する愛知県のセンターの担当者は、そう打ち明ける。
 センターは厚生労働省の委託事業として〇九年度から設置が始まり、一一年度末までに全都道府県に置かれた。愛知県では一〇年に障害者のグループホームなどを運営するNPO法人「くらし応援ネットワーク」(本部・名古屋市熱田区)が県の委託を受け開設した。
 支援するのは、釈放後の住居がない高齢者や障害者の希望者。保護観察所を通じて情報が寄せられる。九人のスタッフが服役中から本人と面談して希望などを聞き取り、関係機関と連携しながら障害者手帳の取得手続きをしたり、受け入れ可能な施設やアパートを探したりする。開設以来、住まいを確保できた知的障害者は計六十人。本人が途中で辞退した場合を除き、全員分の手配をした。
 全国にセンターが置かれる前の〇六年に法務省が実施した調査によると、知的障害のある受刑者のうち四割以上が、出所時に帰る先が決まっていなかった。しかし、一四年二~三月にかけての調査では、全国の刑事施設から出所した知的障害者六十六人のうち、帰る先がなかったのは一割以下まで減っていた=グラフ。
 知的障害者による犯罪では窃盗が多い。出所後の仕事や帰る先がないなどの生活苦が原因の一つに指摘されている。服役中は食事に困らず、孤立することもないため、刑務所に戻りたいという動機で罪を犯す人もいる。出所後一年未満の再犯率は〇六年の調査では六割に達していたが、一四年には出所一年を過ぎても約二割まで減少。出所後の居住先の確保とともに、再犯率も低下している。
 しかし、受け入れる施設や個人が増えているわけでは決してない。一六年度、愛知県のセンターではNPOが運営する名古屋市内のグループホームに、知的や精神障害者を中心に十七人を受け入れた。同市以外の出身地や住み慣れた地域に戻ることを希望していたものの、受け入れ先が見つからず、NPOの施設で生活している人もいるという。
 二十日からのいのちの響きで取材した男性を支援する施設代表(67)も「他に行き先がないからと、近隣の自治体からも依頼がくる」と明かす。
*「対処の仕方確立が必要」 
 触法障害者の支援に詳しい福島大大学院人間発達文化研究科の生島浩教授は、施設が受け入れに消極的な現状について「支援の必要性は理解しているものの、触法の対象者と関わった経験がなく、適切なアプローチの仕方が確立していないのが大きい」と指摘する。こうした障害者の立ち直りに直接関わる司法や福祉関係者向けの研修会を開く自治体もあるが、「自治体によって開催状況に大きな開きがある」という。
 障害者福祉サービスでは一般に、障害の程度が重いほど報酬が高くなる仕組みになっている。ただ、生島教授は「障害が重いからといって立ち直りが難しいとは限らない」と指摘。厚労省は、触法障害者を受け入れた施設が必要な支援を提供した場合、一律で報酬を上乗せしているが、「立ち直りの難しさに応じて報酬を手厚くしないと、効果は上がっていかない」と疑問を投げかけた。

 ◎上記事は[中日新聞]からの転載・引用です
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<いのちの響き>ある知的障害者の更生 (上)自分を見つめ直し償い (下)自立こそ一番の恩返し  
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◇ 出所後受刑者の生活支援。 高齢者がJR下関駅に放火した事件、犯行動機に「再び刑務所に入るため」 2008-08-07 
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