〈来栖の独白〉
小沢氏が東京第5検察審査会の議決無効などを求めて提訴したことに対し、早くもさまざまな意見が表明されている。ここでは、仙谷官房長官との関連で考えてみたい。検察審査会の議決と民主党代表選とが、「同日」(9月14日)だった。到底、偶然の一致とは思えない。
14日に起訴相当で議決がなされることを、仙谷氏は知っていたのではないか。いや、仙谷氏がそのように画策したのではないか。代表選で小沢氏は負けたが、もし勝っていたら仙谷氏はどうしていたか。仙谷氏はすぐさま(14日当日)、このカードを切ったに違いない。「起訴議決」というカードを切って「小沢総理」を阻んだに違いない。そのように思えてしかたがない。
鳩山政権の頃から、仙谷氏は小沢氏を葬ろうと手を尽してきた(と、私は考える)。小沢氏の周辺は「これ(起訴議決)は、権力闘争です」と言っている。
なるほど、権力闘争であるだろう。権力闘争なら、市井の一国民である私にとってみれば、何としても小沢さんに勝ってもらいたい。検察官僚が小沢氏を追いつめるのを巧みに使い、政権を掌中にした仙谷氏にではなく、「政治主導」に生命をかけてきた小沢さんに勝ってもらいたい。
検察の暴走によって小沢氏は民主党代表を退かされ、幹事長を退かされ、代表選に敗れた。なぜ、検察はこれほどまでに小沢氏を追いつめたか。「検事総長を民間人から」「取り調べの全面可視化」「記者クラブの開放」などなど、官僚がこの国の主役なのではなく国民が主役になる(国民の代表が政治をする)ことを政策にしてきたからだ。
負けてほしくない。
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小沢氏の剛腕に戦々恐々の検察
魚住 ところが、石川さんから、ヤミ献金の事実はもちろん、小沢氏との共謀を裏付ける具体的な供述も得られなかった。このところの検察の暴走ぶりからすると、無罪判決覚悟で「小沢起訴」もあり得たかもしれない。そう考えると、今回、検察は小沢氏に関してはよく不起訴で踏みとどまりましたね。(笑)
三井さんは現役の検事時代、検察が調査活動費を裏ガネにしている実態を告発しようとして、2002年に大阪地検特捜部に逮捕・起訴されましたね。全くのでっちあげだと否認を続けられていましたが、有罪判決が出て実刑になりました。在職時代から現在までずっと検察庁を見てきて、いつごろから検察が劣化し始めたと思われますか。
三井 私は今年の1月18日まで静岡刑務所に服役していたのですが、興味があったので資料を取り寄せて、檻の中から小沢さんの事件を見ていました。私は「検察の捜査能力が落ちた」「見込み捜査」というよりも、検察による意図的な小沢・民主党つぶしという気がするんです。水谷元会長の供述そのものが怪しい、そのことぐらいは逮捕する前から検察だってわかっていたはずです。普通はもっと証拠を固めてから逮捕する。こんな杜撰な捜査はしませんから。
魚住 私は今回、検察が再び小沢さんの捜査に乗り出した一番の動機は昨年の西松建設事件の“失地回復”だと見ています。この事件で、小沢氏の公設第一秘書、大久保隆規氏の逮捕は小沢氏への入り口に過ぎないといわれながら、小沢氏にまで手が伸ばせなかった。逆に「不公正な捜査」だと世論の批判を浴びて、「小沢はこれだけ悪質だったんだ」ということを立証しなくてはいけない立場に検察が追い込まれた。その焦りが裏目に出たんじゃないでしょうか。
三井 確かに。以前は選挙に影響を及ぼす時期に強制捜査をしないということは不文律になっていた。でも、西松建設事件では09年3月3日という総選挙に影響のある時期に大久保秘書を逮捕した。ただ、検察独自の判断ではないでしょう。当時の麻生政権は断崖絶壁でしたし、長年握ってきた権益を手放したくない、そういった“権力筋”が土壇場でやったことかもしれない。
魚住 いや、検察は麻生さんの指示で動くような組織ではないでしょう。彼らは政治家を馬鹿にし自分たちがいちばんエライと思っている。国家の主役は俺たちだと。
緒方 いや、官邸主導の捜査というのはありえます。私のケースがそうです。私は07年6月28日に朝鮮総連本部の不動産売買をめぐり、事実無根の詐欺の疑いで東京地検に逮捕されましたが、これには当時の安晋三首相サイドの意向が強く反映しているんです。
魚住 どういうことですか。
緒方 朝鮮総連の会館の登記が私の経営していた会社に移ったのは6月8日でした。その日に当時の公安調査庁長官から総連会館を買った経緯について問い合わせの電話があったんです。理由を尋ねると「官邸に報告しなくてはならない」という。さらに休み明けの月曜日の朝、再度、長官から電話が来て「官邸からもっとよく聞くようにと言われたので人をやります」というんですね。翌日には検察からも話を聞きたいといってきた。そしてまさにその火曜日の12日の朝刊で毎日新聞が朝鮮総連本部の売却問題をトップ記事で書いたわけです。
魚住 なるほど。
緒方 驚いて、官邸にどういう報告をしたのか、公安調査庁の担当者に聞くと「緒方さんの言う通り、報告しました。井上義行首相秘書官(当時)が烈火のごとく怒ってましたよ」と言うんです。私は在日の北朝鮮の人たちのよりどころを守るために、大使館的な役割を果たしている総連会館を購入したわけですが、このことが、北朝鮮に対し厳しい態度を取っていた安倍首相に刃向かったと取られたのでしょう。その日のぶら下がり取材で、安倍首相は「元公安調査庁長官がこんなことをやるなんてとんでもない」と発言し、その翌日には特捜部が私に対する捜索差し押さえを実行しました。この流れを見れば、官邸の意向を忖度してやったのは明らかです。
魚住 そうですか。ところで、僕は小沢さんをターゲットにした二つ目の動機として、彼に対する恐怖心があると思うんです。小沢さんが政権の中心にずっと居座り続けるとなると、今まで検察が中軸になって守ってきた霞が関の秩序が、例えば事務次官会議の廃止などによってめちゃくちゃになる、という。
三井 霞が関というより検察を守るための“小沢つぶし”ですわ。民主党が取り調べの可視化法案を出したり、検察庁の人事にも手を突っ込むとにおわせたりしてるでしょう。検察にとって小沢さんは“目の上のたんこぶ”ですから。
魚住 特に、人事に手を突っ込まれることに対する恐怖感が強かったでしょうね。田中角栄元首相もロッキード事件で10年くらい検察とにらみ合っていましたが、あれほどの権力者でも検察人事には手を出せなかった。でも小沢氏ならやりかねない。
三井 私自身は人事に手を突っ込むことは良いことだと思います。外国では検事や裁判官を選挙で選ぶ国が結構あります。それがいちばん民意を反映するんです。今の検察や法務省人事はほとんど民意が反映されていませんから。
魚住 それから、三井さんが告発した“検察最大の恥部”裏ガネ問題を暴かれてしまうのではないかという強い恐れもあったと思います。私は、02年に鈴木宗男議員の汚職事件を無理やり摘発したのは、三井さんの裏ガネ告発から世間の注目をそらすためだったのではないかと疑っているくらいです。世間の耳目をひく事件をどんどん摘発していけばマスコミの関心はそちらに向く。裏ガネ問題にフタをするためには、常に新しい事件をやらなければならないという自転車操業体質が身についてしまったのではないでしょうか。
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官房長官、小沢氏の提訴方針に疑問
日本経済新聞2010/10/14 18:49
仙谷由人官房長官は14日の記者会見で、民主党の小沢一郎元代表が東京第5検察審査会が出した強制起訴議決の取り消しを求める行政訴訟を起こすことに関して「通常の手続きなら、刑事裁判の中で『事件として成り立たない』と申し立てる。行政訴訟はちょっとどうかと思う」と疑問を示した。「一般論では、刑事司法過程の処分は行政訴訟法の処分には該当しない」とも述べた。
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「新恭 提供:永田町異聞 BLOGOS 2010年10月16日」より
一方、阿部泰隆中央大教授(行政法)はかなり意見が異なっている。
「これまでの常識では、起訴は刑事手続きだから刑事裁判で争うべきで、行政訴訟で争うのは許されない」。ここまでは仙谷長官や土本名誉教授と同じようだが、「これまでの常識では」という但し書きがある。ポイントはこのあとだ。
「ただ、市民にとって刑事裁判で被告となるのは苦痛だ。今回は、検察審査会が2回目の議決で本来の審査対象を超えた部分を犯罪事実に含めたのは違法ではないかということが論点。通常の起訴の議論とは異なり、この点は行政訴訟で判断すべきではないか。起訴という国家権力を行使するという点で検察審査会も検察官と同じで、合理的証拠がなく起訴したとすれば、国家賠償責任が認められる可能性もある」
阿部教授は「2回目の議決で本来の審査対象を超えた部分を犯罪事実に含めたのは違法ではないかということが論点」と、今回の議決の異常さをふまえて、一般論に流れるのを避けた発言をしている。
識者のコメント内容に、対象に向き合う誠実さがあるかどうかというのは、このように見れば、はっきりと読み取れるものである。
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◆「徹底的に闘いましょう。これは権力闘争だ」と側近議員に煽られ、小沢氏は目に涙を浮かべて「そうだな」
◆小沢排除は三権協調して行われた/森英介元法相「小沢事務所の大久保秘書逮捕=あれは私が指示した事件だ」