6キロ引きずり死、懲役17年を求刑-地裁堺支部公判 被疑者国選弁護-捜査段階から攻防激しく

2009-07-17 | 裁判員裁判/被害者参加/強制起訴
<6キロ引きずり死>懲役17年を求刑…地裁堺支部公判
(毎日新聞 - 07月17日 23:03)
 大阪府富田林市で08年11月、毎日新聞販売所アルバイト、東川達也さん(当時16歳)がひき逃げされ約6.6キロ引きずられて死亡した事件で殺人と道路交通法違反(ひき逃げ、酒気帯び運転)の罪に問われた大工、市川保被告(42)=大阪府河内長野市=の論告求刑公判が17日、大阪地裁堺支部(岩倉広修裁判長)であった。検察側は「残酷、悪質で人命軽視の態度は言語道断」と懲役17年を求刑した。弁護側は殺意を否認し「早期に社会復帰できる刑が相当」と主張した。判決は8月21日。
 市川被告は酒気帯び運転とひき逃げを認め、殺意の有無が争点。殺意を認めたとされる自白調書について弁護側は「公判での供述と食い違い信用できない」と述べ「被告は過失で命を奪った。殺人罪適用は誤り」とした。
 東川さんの母親が公判に参加。弁護士は「酒に酔い、引きずっていることに気づかなかったという被告の言い訳は、遺族をさらに苦しめている。可能な限り厳罰に処すべきだ」と求刑意見を述べた。【山田英之】
--------------------------------
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090327/trl0903272005016-n1.htm
【裁く時】第2部変貌する「現場」(5)完 被疑者国選弁護 捜査段階から攻防激しく
2009.3.27 20:04
 報道陣のカメラが取り巻く大阪地検(大阪市福島区)に弁護士の下村忠利(60)が入っていった。
 昨年10月。通行人をひいた上、そのまま引きずって死亡させたとして殺人などの容疑で逮捕された男が地検に送検されていた。
 男は逮捕後、「弁護士はいらない」と投げやりな態度だった。が、マスコミに大きく取り上げられたことから重大事件とみた大阪弁護士会が逮捕翌日、“刑事弁護専門”の下村の派遣を決めたのだ。
 下村は男が面会に応じるまで数時間待ち続けた。ようやく顔を合わせても不信の目を向ける男に、穏やかに「心配だから来た」と語りかけた。やがて男は下村が国選弁護人になることを受け入れた。
 「引きずっていることに気付かなかった」という男に対する警察の追及は厳しかった。下村は若手弁護士と交代で毎日接見を重ね、「意思に反する調書は作らせないように」と助言した。男は殺人や道交法違反(ひき逃げ)などの罪で起訴されたが、下村は今、公判前整理手続きで殺意などを争っている。
 「弁護士が付いていなければ、すべて検察が描く構図通りに進んでいたかもしれない」
× × ×
 裁判員制度の導入を控えて、捜査段階から弁護士と警察・検察の攻防が激しさを増してきた。
 裁判員裁判では争点を絞る公判前整理手続きが必ず実施され、公判で新たな主張をすることが制限される。弁護人は早い段階で事件内容や否認・自白など取り調べ状況を見極め、弁護方針を練り上げる必要がある。既に「現場」で裁判員裁判を見据えた弁護活動が繰り広げられているのだ。
 容疑者段階から弁護人を付ける被疑者国選弁護制度が平成18年10月、殺人など重大事件で導入され、裁判員制度が始まる今年5月21日からは対象が拡充、大半の事件が対象となる。
 逮捕権、そして捜査員を集中的に投入した証拠収集能力をもつ捜査機関に比べ、圧倒的に不利な弁護人の間で有効な弁護手法として広がりつつあるのが「被疑者ノート」である。
 違法な取り調べを防ごうと大阪弁護士会が15年に導入し、全国に広がった。容疑者は弁護人が差し入れたノートに取り調べ内容などを自らの視点で記録する。裁判で証拠採用され、検察の主張を突き崩す「武器」になったケースもある。
× × ×
 被疑者国選事件は5月21日以降、起訴されればそのまま裁判員裁判となる事件も多い。全国の弁護士会は現在、国選受任候補者名簿の作り直しを進めている。「数」の確保が裁判員制度の成否に直結するからだ。
 日本弁護士連合会の試算(19年)によると、弁護士1人あたりの被疑者国選の年間担当件数は、弁護士数が最多の東京都で1・18件、続く大阪府で1・90件。一方、栃木県11・86件▽滋賀県10・59件▽山口県10・07件-など、弁護士数が少ない地方都市では対象事件が増えるほど一人ひとりの負担が重くなる。
 ただ、大都市も「名簿の半数が若手」と下村がもらすように、経験不足の弁護士ばかりで不安が残る。ベテランが被疑者国選や裁判員裁判の受任を避ける傾向も指摘されている。
 裁判員裁判で質、量ともに充実した弁護活動を維持できるのか。弁護士の「覚悟」が迫られている。
       =敬称略
(第2部は牧野克也、加納裕子が担当しました)

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。