主かばい盲導犬事故死 運転手らに中部協会が賠償請求
2008年2月5日 中日新聞 夕刊
事故で犠牲になったサフィー
目の不自由なお年寄りをかばって、トラックにはねられ交通事故で死んだ盲導犬を無償で貸与していた中部盲導犬協会(名古屋市港区)が、高知県のトラック運転手とその建築・運送会社を相手取り、約540万円の損害賠償を求める訴えを名古屋地裁に起こした。
訴状などによると、2005年9月26日午前10時ごろ、静岡県吉田町の信号交差点で、横断歩道を渡っていた視覚障害の男性(72)と盲導犬「サフィー」(メス6歳、ラブラドルレトリバー)が右折してきた大型トラックにはねられた。男性の前にサフィーが立ちはだかったため、トラックはサフィーをはね飛ばし、その後男性をひいた。サフィーが緩衝材のような役割をしたせいか、男性は頭などを強く打つ全治2カ月の重傷を負ったものの、命に別条はなかった。サフィーは即死した。
中部盲導犬協会は、サフィーを訓練した2000年当時、サフィーを含む10頭の育成費用は年間で人件費、飼育費、訓練費などで総額約3880万円だったため、サフィーを失った損害として1頭当たり約388万円かかったと算定。さらに慰謝料100万円などを合算し約540万円を請求することにした。
訴訟前の交渉では、運転手と会社らは「子犬価格は10万円」などとして、約20万円の支払いを提示していた。
中部盲導犬協会は「盲導犬を育成するのには、長い時間と労力、費用がかかる」と指摘。「『盲導犬サーブ』のように、視覚障害者に寄り添う盲導犬は人間の身体の一部であることを理解してほしい」と話している。
運送会社の社長は「弁護士に一任しているので、コメントできない」としている。
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「サフィー、歩くから応援してね」 盲導犬事故死で主人の熊沢さん
2008年2月6日 中日新聞朝刊
トラックにはねられ、盲導犬「サフィー」=当時6歳、メス=は死んだ。事故の直前もいつも通りしっぽを誇らしげに振りながら、目の不自由なお年寄りに寄り添って横断歩道を歩いていた。サフィーを訓練し、無償で貸与していた中部盲導犬協会(名古屋市港区)は希少な盲導犬を失ったとして、トラックの運転手らに約540万円の損害賠償を求める訴訟を名古屋地裁に起こした。トラックの前に身を挺(てい)してくれたおかげで命を拾った静岡県吉田町の熊沢尚(たかし)さん(72)は、サフィーを今でも忘れることはない。 (社会部・長田弘己)
事故は2005年9月26日午前10時ごろに起きた。町内の信号交差点を渡っていた熊沢さんとサフィーの左側に、右折してきた大型トラックが突っ込んできた。熊沢さんの左側を歩いていたサフィーが最初に衝突。その直後に熊沢さんもはねられたが、サフィーが間に入ったおかげで頭などに全治2カ月間の重傷を負いながらも、傷は癒えた。
即死だった。事故の記憶はあまりないが「サフィーが守ってくれた」と思っている。サフィーだけなら逃げることができたのに、危険を知らせるために「自分の横で、重い石のように動かなくなった」に違いないと。中部盲導犬協会の田嶋順治所長(45)も「とっさに主(あるじ)を守る行動をとったのかもしれない」と話す。
熊沢さんは50歳ごろから病気で視力が落ち、今はほぼ全盲。サフィーが初めての盲導犬だった。出会ったのは2歳の時。熊沢さんの足元へ走り寄ってくると、ひざにゴツゴツと頭を下げてなすりつけてきた。「人なつっこいなあ」。すぐにいとおしく思えた。
おとなしい性格で、子どもたちが歓声を上げて駆け寄ってきても、動じなかった。クリーム色の美しい毛並みは近所のアイドルとなり、ほめられると自信たっぷりに歩く様子が伝わってきた。音楽が大好きで、熊沢さんが童謡を歌うと、リズムを取るように前脚を「お手」をするように交互に預け、控えめに甘えてきた。
今は、新しい盲導犬を迎えた。それでも熊沢さんは時々、サフィーの首輪をさする。「父さんは元気になったよ。歩くから応援してね」。サフィーのかけがえのなさは、誰よりも分かっている。
◇1頭育成に500万円 国内では絶対数不足
目の不自由な人に寄り添う盲導犬は、厳しい訓練を経て一人前に成長する。訓練が長期間にわたるため、育成費用は、1頭当たり約500万円。協会の運営資金とあわせて、ほとんどが寄付金でまかなわれている。
誕生して親犬の元で2カ月間過ごした後は、すぐに「パピーウォーカー」と呼ばれる“育ての親”に託される。家庭の中で人間が愛情をかけて育てることで、人との基本的な信頼関係を学ぶ。その後、訓練センターへ戻ると、約1年間を費やして盲導犬として特訓され適性を検査。ここで認められると、視覚障害者との共同訓練を4-6週間かけて行い、再び適性が認められるとようやく盲導犬としてデビューすることができる。
中部盲導犬協会によると、性格や視覚障害者との相性が大切なため、盲導犬になれるのは訓練を受けた4割ほど。協会では年間約10頭の盲導犬を世に送り出しているが、国内では慢性的に不足しているという。
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◇ 飼い主を守り死亡した盲導犬サフィー/感動した岐阜の男性 盲導犬繁殖施設建設費 生前寄付 2012-04-12
飼い主守り犠牲、盲導犬に感動 岐阜・羽島の男性、施設建設費に生前寄付
中日新聞2012/4/12 Thu.
中部盲導犬協会の盲導犬総合訓練センター(名古屋市港区)敷地に、全国2カ所目の盲導犬繁殖施設が誕生する。建設費を全額寄付しながら、病死した岐阜県羽島市の繊維製造業田中忠司(ただし)さん=享年75=の遺志を継ぎ、羽島ライオンズクラブが建設する。ただ費用を負担するのではなく、基礎工事から内外装までを会員が手掛ける異色の支援だ。(蜘手美鶴)
繁殖施設建設のきっかけをつくったのは、中部盲導犬協会が送り出した盲導犬サフィーだ。サフィーは静岡県内の男性の元で働いていた2005年、飼い主を守ろうとしてトラックにはねられ死んだ。
交通事故で犠牲になったサフィー(中部盲導犬協会提供)
子どものころから「自分のご飯は半分でいいから、犬にあげてほしい」と親に言うほど犬好きだった田中さんは、サフィーの悲劇を伝える新聞記事に胸を打たれた。「この子は本当によく頑張った。盲導犬を育てる手伝いができれば」と09年、ライオンズクラブに寄付を申し出た。
クラブは協会に支援内容を打診。ちょうど協会は繁殖施設の建設を計画していた。専用の繁殖施設がないために出産・子育てできるのは、年間8頭が限度で、障害者の求めに応じきれない。施設が整えば、年間15頭まで増やせる。協会は運営が苦しくなっても建設するしかないと、建設会社に依頼し、7000万円弱との見積もりが出ていた。
クラブは「会員には設計士も建築士も土建業者もいる。資金を出すだけじゃなく私たちに建てさせてほしい」と持ちかけ、会員が設計書や見積書を見直した。見積もりより1000万円ほど安い約6000万円で試算。しかも、子犬飼育場に床暖房を付けたり、子犬がけがをしないよう内装を柔らかい素材にしたり、細部にこだわった。
だが、建設話が進んでいた10年、田中さんが亡くなった。生前、田中さんは「私の名前は伏せて、クラブとしてやってほしい」と話し、建設は姉妹クラブの鹿児島ライオンズクラブとの合同事業という形で進められた。
長女の陽子さん(49)は「入院中は『あとはクラブに任せた。みんながやりやすいようにやってほしい』と言っていた。お父ちゃんらしい」と振り返る。
当時の会長の大島茂さん(63)は「新施設で子犬を育て、全国に盲導犬が普及してほしい。それが田中さんの思い」。センターの田嶋順治所長は「生きているうちに、子犬をいっぱい育てて見せてあげたかった」と話す。
11日、関係者が集まり地鎮祭があった。施設は夏ごろに完成し早ければ年末にも子犬が生まれる予定だ。
盲導犬サフィー 静岡県吉田町で全盲の男性と横断歩道を横断中、トラックにはねられ死んだ。男性は重傷を負い、事故を起こした運送会社などに育成費用や慰謝料など約600万円を求めた損害賠償訴訟を中部盲導犬協会とともに起こした。会社側は「盲導犬は車いすなどと同じ装具で慰謝料は発生しない」と主張していたが、名古屋地裁は「盲導犬は視覚障害者の歩行補助具ではなく、目の代わりで精神的支え」として、約290万円を支払うよう命じる判決を言い渡した。
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◇ 盲導犬の育成価値認める 誘導中交通死で賠償命令 「サフィー、歩くから応援してね」2010/3/5Fri.
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◇ 盲導犬、飼い主守ろうとバスの前に飛び出す NY 2015-06-10
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◇ 盲導犬ヴァルデス号と男性死亡 トラック運転の被告に禁錮2年 執行猶予4年 判決 徳島地裁 2016/5/30
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もう、泣いてしまいました。ほんとに、何という・・・。天の国はこのようなもののためにある、と思います。ゆうこさんが書いていらしたアンちゃんと大石さんのこと、思い出しました。
http://www.k4.dion.ne.jp/~yuko-k/adagio/essay-ohisi.htm
ご冥福を祈ります。
盲導犬は、外出先で支障を来さぬよう、排泄もコントロールします。「強制ワンツー」とかいって、強制的に排泄させたりもします。食事も制限があります。亜矢ちゃんとアンちゃんが拙宅へ来たことがあり、それらを目の当たりにしました。
何もかも、訓練によって、献身一筋の生涯なのです。可愛そうと思ってはいけない、喜んで献身しているのです、等々、以前、盲導犬クイールの本を音訳した時に知りました。でも、可愛そう、と思ってしまいます。
アンちゃんは、昨年退役して、今は亜矢ちゃんの実家でペット生活です。セロシアちゃんが、新アイメイトです。
http://blog.goo.ne.jp/kanayame_47/e/a4401c31add2f1c450efe8ad041e59cc
サフィーが死んでしまった時は泣きそうになりました…。
ずっと一緒に居てた犬が死んでしまうのは
悲しい事です…。