山地悠紀夫・前上博死刑囚(大阪拘)、陳徳通死刑囚(東京拘)に刑執行=森英介法相 2009.7.28

2009-07-28 | 死刑/重刑/生命犯

姉妹強殺の山地、自殺サイト連続殺人の前上死刑囚ら3人を執行 法務省が会見
産経ニュース2009.7.28 11:13
 法務省は28日、大阪で姉妹を殺害した山地悠紀夫(25)、自殺サイトで知り合った男女を殺害した前上博(40)=いずれも大阪拘置所、中国人男女5人を殺傷した陳徳通(41)=東京拘置所=の3死刑囚に対する死刑を執行したと発表した。
 死刑執行は今年1月29日以来半年ぶり。森英介法相就任後は3度目で計9人。
 確定判決などによると、山地死刑囚は平成17年11月、大阪市浪速区のマンションに侵入し、帰宅した姉=当時(27)、妹=同(19)=を殺害。現金などを奪った後、放火した。山地死刑囚は、事件の前年に中等少年院を退院していた。一審で死刑判決後、弁護側が控訴したが、山地死刑囚は控訴取り下げ書を提出し、確定した。
 前上死刑囚は、人を窒息死させて快感を得ようと、平成17年2~6月、インターネットの自殺サイトを通じて知り合った大阪府豊中市の無職女性=当時(25)=と神戸市の中学3年の男子生徒=同(14)、大阪府東大阪市の男子大学生=同(21)=を相次いで口をふさぐなどして殺害し、遺体を遺棄。さらに男子生徒の殺害後、父親に身代金を要求する電話をかけて脅迫した。 
 陳徳通死刑囚は、親類の中国人ら7人と共謀し、川崎市のマンションで同居していた中国人男女5人をテープで縛り、現金約5万3000円を強奪。その後、単独で5人の胸や背中などをサバイバルナイフで次々と刺し、当時23歳と30歳の男性2人、27歳の女性1人を殺害。男女2人に重軽傷を負わせた。同居人から家賃の未払いなどを理由に暴行されたことを恨んでの犯行だった。
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「事実を踏まえ命令」「裁判員裁判の時期意識せず」死刑執行で法相
産経2009.7.28 11:52
3人の死刑執行を発表する森法相=28日午前、法務省 大阪市で姉妹を殺害した山地悠紀夫死刑囚(25)ら3人の死刑が執行されたのを受け、森英介法相は28日、記者会見し、「いずれも実に身勝手な理由から被害者の尊い人命を奪った誠に残忍な事案であり、被害者、遺族にとって無念この上ない事件。事実を踏まえ、慎重な検討を加えたうえで死刑の執行を命令した」と述べた。
 裁判員裁判が来週8月3日から行われるのを前にして死刑執行となったが、「関係記録を十分に精査し、再審、恩赦など情状の有無などの事由がないと認めた場合に死刑執行命令を発する。時期などはまったく意識していない」と述べた。
 今回の執行で、未執行の死刑確定囚は101人となったが、このうち再審請求中が63人、恩赦出願が16人いるという。
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「望んだ結果」 刺殺された姉妹の父 山地死刑囚を執行
産経2009.7.28 11:51
 「どちらが先に死を迎えるのか、それが一番気掛かりだった」。大阪市浪速区のマンションで平成17年11月、姉妹を刺殺したとして殺人罪などに問われた山地悠紀夫死刑囚(25)の死刑が執行された28日、姉妹の父、上原和男さん(60)が取材に応じ、「人間として最低の言葉かもしれないが、望んだ結果。それ以上も以下もありません」と語った。
 奈良県平群町の住宅街にある姉妹の実家。白い布に包んだ姉妹の遺骨は、事件から4年近くたった今も納骨しないまま仏壇に置かれている。事件後、家族はすっかり変わってしまった。妻の百合子さん(55)もほとんど外出しなくなり、和男さんも体重が15キロも落ちた。髪は真っ白になり、最近は右目の視力も悪化、昨年7月には脳梗塞(こうそく)で倒れた。「私の方が先に逝ってしまうかもしれない」。弱気になり、ふさぎ込んだこともあったという。
 公判では極刑を訴え続けた和男さんだったが、「これで2人が帰ってくるわけではないし、怒りや悲しみが和らぐこともない」とも話した。
 死刑確定から2年余りでの執行については「長かったです。この間もどれだけ苦しい思いをしてきたか。遺族が納得できる法律が日本にはないのかと疑問に思ったこともある」と話した。
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<死刑>3人に執行 森法相3回目
(毎日新聞 - 07月28日 11:43)
 法務省は28日、大阪市の姉妹殺害事件の山地悠紀夫死刑囚(25)=大阪拘置所=や、自殺サイトを悪用した男女3人連続殺人事件の前上博死刑囚(40)=同=ら3人の死刑を執行したと発表した。死刑執行は1月29日以来6カ月ぶりで今年2回目。森英介法相の執行命令は3回目。これで確定死刑囚は101人になった。
 執行は5月21日の裁判員制度施行後初めて。07年12月の死刑執行以降、執行はほぼ2カ月に1回のペースだったが、今回は国会審議に加え、同制度の施行準備や、足利事件の再審開始決定(6月)をめぐる対応などで間隔が空いたとみられる。
 確定判決などによると、山地死刑囚は05年11月17日未明、大阪市浪速区のマンションに侵入。当時27歳と19歳の姉妹を刺殺し、現金を奪って室内に放火した。16歳だった00年に母親を殺害して少年院送致となり、03年10月に退院していた。大阪地裁判決(06年12月)は人格の偏りが極端な人格障害や性的サディズム障害としながら、完全責任能力を認定。07年5月に本人が控訴を取り下げた。
 前上死刑囚は人が窒息して苦しむ表情から性的快感を得ており、練炭自殺を装ってインターネットの自殺サイトへの投稿者を勧誘。05年2~6月、大阪府内で、当時14~25歳の中学生や大学生ら男女3人を窒息させ殺害した。地裁公判で「死刑判決の場合、半年以内に手続きを終えてほしい」と述べていた。
 他に執行された陳徳通死刑囚(41)=東京拘置所=は99年5月、川崎市のマンションで同居していた中国人男女から家賃の未払いなどを理由に暴行されたことを恨み、当時23歳と30歳の男性2人と27歳の女性1人の計3人を殺害した。
 死刑確定から執行までの期間は、山地死刑囚が2年1カ月、前上死刑囚が2年、陳死刑囚が3年だった。【石川淳一】
◇実情透明化を
 裁判員制度施行後初めてとなる28日の死刑執行は、前回から約半年の間隔があり、ほぼ2カ月間隔が続いた時期からペースダウンした。背景には再審請求中の死刑確定者が、現在63人と6割強に上っている現状が挙げられる。
 法務省は再審請求中の死刑執行を避ける傾向にある。確定から一定期間の後、請求準備に入る死刑確定者は多いが、ある幹部は「多くが執行逃れのための請求」と指摘する。再審請求が棄却された直後に再度、請求する動きがある一方で、請求のない死刑囚が確定から2年前後の早さで執行される実情もある。
 裁判員制度では、裁判員が死刑判決にかかわりたくないとの理由で辞退したいとの声もあり、最大の関心事となっている。森英介法相は「死刑について国民的議論が起きるのは歓迎すべきだ」と指摘している。執行順や時期がどう決まるかなど、まずは執行の現実を透明化し、議論の材料とすべきだろう。【石川淳一】
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〈来栖の独白〉
再審請求が棄却された直後に再度、請求する動きがある一方で、請求のない死刑囚が確定から2年前後の早さで執行される実情もある。
 安田好弘弁護士は 【国家と死刑と戦争と】(『2007 年報・死刑廃止』インパクト出版会)のなかで、次のように言う。
 どこまでも抵抗して生き続けるんだ、そうするのが死刑に直面させられている者のたたかいであり、同時に他の人と一緒にたたかっていくことであり、他の人の生命を支えていくことであるという、この考え方で、死刑廃止運動はやってこれたし、やってきたと思います。私の弁護活動も、この考え方と全く軌を一にしていました。ですから、「オウム事件」でも裁判所の横暴な公判進行に対して私たちは抵抗し続けてきました。それは生命を守るたたかいであり、生命を永らえるためのたたかいである、それが死刑廃止運動の真髄であり本質だろうと思います。「人を殺してはならない」というのが死刑廃止の基本的な考え方だという人がいらっしゃる。しかし「殺してはならない」という倫理あるいは規範は死刑判決自らが言っていることであるし、死刑制度そのものを維持し乱発している国家が言っていることです。そういう国家的なものが介在する中ではなく、私たちは個人として国家とどう対峙していくかという哲学をもつならば、「殺してはならない」ということではなく、個として、あるいは個々のつながりとして、「どこまでも生き続ける」「生き延びる」という思想あるいは理念が必要ではないかと思います。  
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【裁く時】第3部 (3)井垣康弘元判事/山地悠紀夫死刑囚=母親を撲殺、出院1年半で姉妹を殺害(大阪事件)  
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『死刑でいいです 孤立が生んだ二つの殺人』(山地悠紀夫死刑囚 2009/7/28 刑死) 池谷孝司著 共同通信社

   

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陳徳通死刑囚  06.6.27 最高裁 確定
 * 中国、邦人に死刑執行(通告)。日本でも中国人《陳徳通死刑囚》に2009/07/28死刑執行している 
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前上博死刑囚  07.7.5 本人控訴取り下げ、確定
 * 自殺サイト殺人事件・前上博死刑囚(2009/7/28Tue.刑執行)=「自分を研究材料にしてほしい」 2009-08-02 
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