莫言氏 ノーベル文学賞受賞/共産党に反対の者は牢獄に送り、言論の自由を認めない中国はヒットラーと同じ

2012-10-12 | 国際/中国/アジア

ノーベル文学賞の莫言氏「雪国」など日本文学が影響 中国社会の矛盾あぶり出す
zakzak2012.10.12
 中国籍で初めてノーベル文学賞に決まった莫言氏(57)の作品は、チャン・イーモウ監督が映画化した「赤い高梁」をはじめ多くが邦訳され、日本の読者にも親しみが深い。当局の検閲をくぐり抜けるためにフォークナー(米)やガルシア・マルケス(コロンビア)らから受け継いだ魔術的リアリズムの手法を使い、社会主義下の残酷な現実に切り込む作風は内外で高く評価されてきた。
 中国山東省の農家に生まれ、文化大革命のあおりで小学校を中退。「作家は社会のあらゆる出来事に注目しないといけない」。苛烈な歴史の中で貧困や差別に苦しんだ原体験が、タブーを恐れない批評的な視点がはぐくまれた。人民解放軍に入隊したのは「軍に入れば毎日ギョーザを食べられる」という噂を聞いたから。少年時代から草地に寝転がり空想を巡らし、青年期からそれを文字にし始めた。たんに「革命小説」をまねをしていた莫言氏を大きく変えたのは、実は軍の芸術学院で読んだ日本の文学作品だった。川端康成の「雪国」に秋田犬が出てくる場面には、小説が本来持つ「自由」に目覚めさせられたという。
 「物資がとぼしい時代に生きてきたが、喜びもたくさんあった」。そう述懐する莫言氏が、強く悔いているのが、軍在籍当時に自らの昇進のために身ごもった妻に中絶を強いたこと。その悔恨は「神の手」とあがめられた産科医の転落を重層的な構成で描いた最新作「蛙鳴」だった。
 本名は管謨業。ペンネームの「莫言」は「しゃべりすぎるな」の意味。これまでは政治色を排して言葉を慎んでいるように装いつつ、中国社会の矛盾をあぶり出してきた。ノーベル文学賞受賞で体制におもねるのか、それとも高まった影響力を変革に注ぐのか。作家の真価が問われるのはこれからだ。
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 莫言氏の受賞は、日中韓といった東アジアを中心に活動する作家では、1994(平成6)年の大江健三郎氏(77)以来となる快挙だ。文学賞の歴代受賞者は、昨年のスウェーデンをはじめ独、仏、英など欧州系が目立つ。過去30年は約7割が欧米から出ており、選考が欧米偏重との声も。これに対し、選考を担当するスウェーデン・アカデミーは「バランスを欠いた状況は解消される」として、是正の意向を示していた。
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愛国主義、政治利用の可能性 「初の快挙」沸く中国 
産経ニュース2012.10.12 11:14
 中国の代表的作家、莫言氏が今年のノーベル文学賞に選ばれ、中国国内は「中国人」による初の快挙だとして沸いている。沖縄県・尖閣諸島をめぐり日中関係が悪化する中、有力候補とされていた村上春樹氏を抑えての受賞だけに、今後、当局が「民族主義」「愛国主義」の高揚に莫氏を政治利用することが危惧される。
 中国とノーベル賞の歴史をひもとくと、1989年にはチベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世、2010年には民主活動家、劉暁波氏(国家政権転覆扇動罪で服役中)が平和賞を、00年にはフランスに亡命した高行健氏が文学賞を受賞している。しかし、「反体制派」による受賞が中国国内で大きく宣伝され、たたえられることはなかった。
 高氏の受賞を当時の最高指導者、江沢民氏は「賞の名声を自ら傷つけた反中的出来事だ」と批判。莫氏が現在、副主席を務める中国作家協会も「政治的な基準による授与だ」とのコメントを発表した。
 中国共産党政権は昨年来、「国家文化のソフトパワー」を増強するためのガイドラインを採択。文化振興による国際競争力、影響力の強化に力を入れている。中国文壇の重鎮である莫氏の文学賞受賞は当局にとっても、党の指導の正しさをアピールする格好の宣伝材料といえる。
 ただ、現実と幻想の世界が融合するマジックリアリズム表現を駆使したその著作には「中国の恥部をさらけ出した」との批判もある。「酒国」(1992年)では地方政府幹部の汚職を批判、「蛙鳴」では「一人っ子政策」の問題点を突いた。代表作「赤い高粱」や、性的描写などを理由に一時発禁処分になった「豊乳肥臀」では人間性あふれる日本人を描いて批判された。
 2006年、福岡アジア文化賞大賞を受賞した莫氏は、日中関係について曲折を予想しながら、「一人前の大人は理性で自己を制御し、衝突を避けるべきだ」と述べている。
 ノーベル賞の政治性を批判してきた中国当局が、今後政治的判断で莫氏の思想や日本観を歪(わい)曲(きょく)することがないか懸念される。 (川越一)
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『帝国の終焉』(「スーパーパワー」でなくなった同盟国・アメリカ)日高義樹著 2012年2月13日第1版第1刷発行 PHP研究所
(抜粋)

     

第5部 どの国も民主主義になるわけではない
 人類の歴史を見れば明らかなように、確かに長い目で見れば、野蛮な時代から封建主義の時代に代わり、そして絶対主義の時代を経過し、民主主義が開花した。ヨーロッパの多くの国々はこういった過程を経て豊かになり、人々の暮らしが楽になるとともに、民主主義、人道主義へ移行していった。鍵になったのは「経済が良くなり、暮らしが楽になる」ということである。
 中国の場合は、明らかにヨーロッパの国々とは異なっている。そして日本とも全く違っている。中国は二十数年にわたって経済を拡大し続け、国家として見れば豊かになった。だが、すでに見てきたように貧富の差が激しくなるばかりで、国民は幸福にはなっていない。こう決めつけてしまうと親中国派の人々から指弾を受けるかもしれないが、中国国内の政治的な状況を見ると、依然として非人道的な政治が続いている。民主主義は全く育っていない。
 中国はもともと共産主義的資本主義と称して、共産党が資本主義国家と同じようなビジネスを行なってきた。中国という国家が資本主義のシステムを使ってビジネスを行ない、国営や公営の企業が世界中から稼ぎまくった。この結果、中国国家は経済的に繁栄したものの、中国人一人ひとりは幸福になっているようには見えない。
p95~
 「中国人は食べられさえすれば文句は言わない」
 中国の友人がよくこう言うが、中国人はそれ以上のことを望まないのかもしれない。つまり中国の人は「食べられる」以上のこと、つまり形而上学的な問題には関心がないのかもしれない。
 「民主主義、人道主義、国際主義といったものは我々には関係ない」
 こう言った中国の知人がいるが、中国だけではなく、ロシアの現状を見ても、封建主義から民主主義に至る政治的な変化を人類の向上とは考えない人々が大勢いるようだ。
p97~
 第2次大戦以来、人道主義と民主主義、そして平和主義を主張してきたアメリカのやり方が、アメリカ主義でありアメリカの勝手主義であると非難された。「アメリカ嫌い」という言葉が国際的に定着したのは、その結果であった。そうしたアメリカのやり方を、1つの考え方であり、1つの価値観に基づくものであると切り捨てているのが、ロシアの指導者であり、中国の指導者である。
p98~
 ヒットラーはドイツの誇りを掲げ、ユダヤ人を圧迫するとともに、反政府勢力を弾圧して経済の拡大を図った。中国もその通りのことをやっている。しかも、冷戦に敗れたロシアのプーチン前大統領が主張しているように、価値観の違った、そしてやり方の違った経済の競争が可能であるとうそぶいている。
 だが彼らの言う価値観の相違というのは、民主主義を無視し、人道主義を拒否し、国際主義に反対することである。中国やロシアについては、冷戦に敗れた国や第2次大戦に脇役しか与えられなかった国が自分たちのやり方で歴史の勝利者になろうとしているように見える。
p99~
 共産主義は冷戦の結果、民主主義とそれに伴う人道主義に敗北したはずである。ところが中国は、冷戦と同じ体制を維持しながら、経済の戦争には勝てるとばかり傲慢になっている。
 ヨーロッパの人々は中国の台頭をヒットラーの台頭になぞらえている。これに対して日本のジャーナリストや学者たちは驚きを隠さないようである。彼らは、ユダヤ人を抹殺しようとしたヒットラーと中国は異なっていると考えている。だが、共産党が絶対で、反対の意見を持つ者は犯罪者として牢獄に送り、言論の自由を認めていないという点では、中国はヒットラーと同じである。
 中国は明らかに人道主義を否定しているだけでなく、民主主義を理解しようとしていない。国際主義も分かろうとしない。
p100~
 ヨーロッパの人々は、歴史的な経験から中国が危険であるとして、ヒットラーと同じであると指摘しているが、歴史にナイーブな日本の人々は全くそのことに気がついていない。
 ヨーロッパの人々はヒットラーと戦い勝利を得たが、そのためにアメリカと同盟し手を携えて戦った。中国がヒットラーだという考えに驚くべきではない。新しいヒットラーである中国の共産主義の専制体制に対して世界の人々は、手を携えて戦わなくてはならなくなっている。「アメリカ嫌い」という言葉で中国の脅威から目を逸らす時代は終わったのである。
 *強調(太字・着色)、リンクは来栖


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