春秋 2010/6/8付
この世には神も仏もいないのか。そう思いつめたと、伊藤忠商事の丹羽宇一郎相談役は著書「人は仕事で磨かれる」で振り返っている。30代半ば、米国駐在のとき。大豆の相場を読み誤り、会社の純利益に匹敵する損を抱えてしまった。
▼連日のように米国で干ばつの被害が報道され、丹羽さんは大豆が不作で高騰するとみて、どんどん買い込んだ。ところが突然、雨が降り始めた。農務省などの予想は一転して大豊作になり、相場は暴落。最終的には寒波が来て相場が上がり、丹羽さんは含み損を消すことができたが、一時は辞表を出す覚悟だった。
▼国際的な商品取引の怖さと駆け引きの難しさを若いころに、体でおぼえた丹羽さんが、次の中国大使に起用されると伝えられている。中国は老練な政治家がひしめいている。大豆の取引で窮地に追い詰められた一件を糧に、異例の民間人の大使が政治経済や外交の舞台で、どんな駆け引きを繰り広げるか興味深い。
▼丹羽さんは干ばつの情報で不作と判断したが、被害が深刻な畑は一部だけだった。以来、情報を得るときは自分で現場に行くことを習慣づけた。中国では日系の工場で、賃上げを求める従業員のストライキが起こった。丹羽さんにはぜひ現場主義で、進出した企業の様子も確かめ、日中の経済関係を深めてほしい。
この世には神も仏もいないのか。そう思いつめたと、伊藤忠商事の丹羽宇一郎相談役は著書「人は仕事で磨かれる」で振り返っている。30代半ば、米国駐在のとき。大豆の相場を読み誤り、会社の純利益に匹敵する損を抱えてしまった。
▼連日のように米国で干ばつの被害が報道され、丹羽さんは大豆が不作で高騰するとみて、どんどん買い込んだ。ところが突然、雨が降り始めた。農務省などの予想は一転して大豊作になり、相場は暴落。最終的には寒波が来て相場が上がり、丹羽さんは含み損を消すことができたが、一時は辞表を出す覚悟だった。
▼国際的な商品取引の怖さと駆け引きの難しさを若いころに、体でおぼえた丹羽さんが、次の中国大使に起用されると伝えられている。中国は老練な政治家がひしめいている。大豆の取引で窮地に追い詰められた一件を糧に、異例の民間人の大使が政治経済や外交の舞台で、どんな駆け引きを繰り広げるか興味深い。
▼丹羽さんは干ばつの情報で不作と判断したが、被害が深刻な畑は一部だけだった。以来、情報を得るときは自分で現場に行くことを習慣づけた。中国では日系の工場で、賃上げを求める従業員のストライキが起こった。丹羽さんにはぜひ現場主義で、進出した企業の様子も確かめ、日中の経済関係を深めてほしい。