絶望的な状況…聞こえたのは「希望」

2020-05-09 | 文化 思索

2020年5月9日
 中日春秋
 絶望的な状況にある主人公はラジオの雑音の中から、かすかな言葉を聞き取る。スティーブン・キングのホラー小説にそんな場面があった。聞こえたのは「希望」である。空耳かもしれなかったが、主人公は危険を押して、はるか遠くの地を目指す決意をする
▼あらゆる災厄が世に飛び出した後、最後に希望が残されるというパンドラの箱の神話のようでもあり、印象深い場面だ。絶望的な状況で、かすかに響くような「希望」もあるのだろうとも思わされる
▼飛び出した災厄に次々に襲われるように、イタリアはいち早くコロナ禍に見舞われた。医療崩壊を感じさせる光景が報じられたが、感染の山が過ぎたと思われるいま、よく見れば災厄の中にこの国らしい希望があったことにも気づかされる
▼報道によると、ボランティアが活躍している。各地でお年寄りの買い物などを担う人が数多い。医療施設をつくるとなれば、建設作業に多くが集まった。食料品などの寄付はいまも盛んだ
▼「イタリア最大の産業はボランティア」という言葉があるとイタリア在住のTVディレクター、仲宗根雅則さんが、ネットに書いていた。引退した数千人の老医師が感染の恐れを押し、ボランティアに名乗りをあげたという話も紹介している
▼助け合う精神の健在は今後の希望である。日本も似た精神があろう。長い闘いの中で、再認識したい。

 ◎上記事は[中日新聞]からの転載・引用です


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