ネット掲示板「匿名でも名誉棄損成立」の衝撃 静岡地裁浜松支部が業者に発信者情報開示命令

2011-06-13 | 社会

ネット掲示板「匿名でも名誉棄損成立」の衝撃
webR25 2011.06.03
 タレントの麻木久仁子さんが、インターネット掲示板「2ちゃんねる」への書き込みを巡って、プロバイダーを相手に発信者情報の名前と住所、メールアドレスの開示を求めた訴訟で、静岡地裁浜松支部は5月26日、発信者の個人情報開示を命令。この判決に対し、ネットユーザーの間で動揺が広がっている。
 この裁判は、2ちゃんねるへの書き込みが名誉棄損にあたるとして、麻木さんが裁判所に情報開示を訴えていたもの。裁判所は、書き込みの内容が事実無根であること、ならびに名誉棄損にあたることを認め、請求通りプロバイダーに対し書き込みをした人物の個人情報の開示を求める判決を下した。
 だがネット住民の検証によると、今回問題とされた書き込みは、麻木さん本人を中傷したものではなく、麻木さんの16歳になる長女を中傷したもの。しかもその書き込みには、麻木さん本人や、長女の名前は一文字も明記されておらず、文章自体もコピペ(≒定型文)を改変したものだったという。そのため、当初誹謗中傷は断罪されるべきとしていたネット住民からも、
 「誰のこと言ってんのかすらわからねーじゃん」
 「個人を特定してないのにこれでアウトなのか」
 と、驚きの声が上がり、なかには、
 「個人特定してないんだから良い弁護士つけりゃ(編集註:訴えられても裁判で)勝てんだろ」
 「芸能人ならスルーしろ」
 と、暴論を吐く者も現れた。
 今回の静岡地裁の判決は、「個人名を書き込まなくても、名誉棄損が成立する」とと司法が判断した点で、従来より一歩踏み込んだ印象をネットユーザーたちに与えたようだ。これにより、性質の悪い中傷が少なからず存在していたネット掲示板への書き込みが、多少なりとも減ることになるか、今後の展開が注目される。
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麻木久仁子さんネット中傷 地裁浜松支部が業者に発信者情報開示命令
 中日新聞【静岡】2011年5月27日
 インターネット掲示板の書き込みで名誉を傷つけられたとして、タレントの麻木久仁子さんがプロバイダー(接続業者)の浜松ケーブルテレビに発信者情報の開示を求めた訴訟の判決が26日、静岡地裁浜松支部であった。中野琢郎裁判官は「名誉毀損は明らか」として請求通り名前と住所、メールアドレスの開示を命じた。
 訴訟は同社が積極的に争う姿勢を示さず、即日結審していた。
 判決によると、問題の書き込みは1月4日、同社を経由して掲示板「2ちゃんねる」に載った。
 判決理由で中野裁判官は「記載内容が社会的信用を低下させるのは明らかで、真実でもない」と述べ、損害賠償と謝罪広告を請求するために開示を求めた原告側の主張を全面的に認めた。
自主開示まれ 裁判所頼み
 ネット上の匿名投稿の被害者は、「権利侵害が明白」で「損害賠償請求など開示を受ける正当な理由」があれば、接続業者に発信者情報の開示を請求できる。ただ、発信者の同意なく接続業者が開示する例は少なく、加害者を知るには提訴せざるを得ないケースが大半との指摘もある。
 接続業者などの業界団体は2007年、プロバイダー責任制限法に基づく発信者情報開示の指針を策定。指針では、裁判例を引用し「権利侵害の明白性」の判断基準を示す一方、「明白性に疑義がある場合は裁判所の判断に基づく開示が原則」とくぎを刺している。
 業界に詳しい弁護士は「明白性を自主判断して開示に応じる業者もある」と話す。ただ、業界団体の関係者は「開示すれば、逆に発信者から損害賠償を求めて訴えられる恐れもある。裁判所の判断に委ねるのが無難と考えがち」と解説する。
 総務省によると、ことしで公布10年を迎えた同法について、昨年10月から有識者による作業部会で検証。裁判を受ける権利の保障や発信者情報開示の迅速化に向け、開示の要件緩和や接続業者の努力義務を求める意見も出た。しかし、表現の自由や通信の秘密を守るため「安易な開示は避けるべきだ」として、法改正が必要との結論には至らない見通しだ。


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