「世界と比べてここがおかしい日本国憲法」 “唯一の平和憲法”という誤解 西 修

2015-04-24 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉

 産経WEST 2015.4.24 10:00更新
【奈良「正論」懇話会】「世界と比べてここがおかしい日本国憲法」 “唯一の平和憲法”という誤解 西修・駒澤大名誉教授
 奈良市の奈良ホテルで3月23日に開かれた奈良「正論」懇話会で、駒澤大名誉教授の西修氏が「世界と比べてここがおかしい日本国憲法」をテーマに講演した。その要旨は以下の通り。
■“古い”日本国憲法
 1940年代までに制定された憲法と、改正された実態を調べてみると、「新憲法」と呼ばれる日本国憲法は実は古いことが分かる。そして、これまで約70年間、一度も改正されていない。「新憲法」と言っているうちに、世界でも新しい憲法と思ってしまい、さらに改正をしないことで憲法改正は大変なことだという誤解が広まっているのではないか。
 結論から言えば、世界で成文化された憲法を持つ188カ国中、日本国憲法は古い方から14番目になっている。しかも、70年間一度も改正されていないのは日本しかない。
 世界の憲法を調べる中で、ノルウェーの憲法について資料を取り寄せたが、何回改正されたか分からなかったので、大使館にメールで問い合わせた。答えは「私たちも分からない」だった。憲法改正というのは、天地がひっくり返るような出来事ではないということがよく分かる。
 新しい憲法を見ると、スイスは2000年1月に新憲法を制定したが、2014年5月までに33回も改正している。世界では、憲法は時代とともに変わっていくのが当たり前になっている。
■平和条項も当たり前
 もう一つ、日本国憲法は、「世界で唯一の平和憲法で、ノーベル平和賞に匹敵する」という議論を否定しておきたい。
 誤解を与えているのは9条だが、世界の憲法にも日本と同じように平和主義に関する条項がある。188カ国の中で、1項目でも平和に関する条項がある憲法は158カ国と、84%に上る。
 外国軍隊の通過禁止や、核兵器・生物兵器・化学兵器の禁止・排除をうたっている憲法もある。日本は良いか悪いかは別として「平和憲法」などと呼ばれているが、米軍が駐留しているし、核兵器の禁止、排除は憲法でうたっていない。そういう意味では、日本より進んだ条項を持つ憲法が世界にはかなりある。
 自衛隊は憲法違反だという人もいるが、憲法9条1項の「国際紛争を解決する手段としての戦争放棄」を比較憲法的に見るとどうか。アゼルバイジャンやエクアドルはほぼ同じ条項を持っているが、徴兵制の国だ。
 「国際紛争を解決する手段としての戦争」の紛争というのは、あくまで侵略戦争であって自衛戦争は禁じられていない。わが国の憲法学説は、「井の中の蛙」的な解釈だということが、比較の中で分かってくる。
 ベルリンの壁崩壊など、世界情勢がめまぐるしく動いた1990年以降の20年間に、102カ国が新しい憲法を制定している。
 条項を見ると、環境の権利は89%、プライバシーの権利は84%、家族の保護は85%に盛り込まれた。平和主義も2カ国を除く100カ国、98%に書かれている。
 また、国家の非常事態への対処が書かれていない憲法は皆無だった。平和条項は大切なものだが、もしその平和が侵害された場合、一時的に国民の権利を制限して対処する。これも、もう当たり前のことになっている。
■憲法は「国の形」
 憲法にはもっぱら、権力を縛るものであるという議論が良く出てくる。これを全く否定することはできないが、憲法というのは「国の形」のことだ。
 立憲主義は、ヨーロッパで絶対王政があった頃の民主化の過程の中で出てきた考え方だ。現代では、民主化も進んで「国家対国民」という対立関係ではない。そういう意味で、憲法というのは、われわれが作り上げている国家の形として、作っていかなければならない。
 日本国憲法には、文化、伝統、アイデンティティーというものがない。土台がしっかりしていない。
 土台の上に個人があり、家族があり、地域社会があり、地方自治体、国家がある。今の憲法には個人に関する記述はあるが、世界人権宣言や、国際人権規約に「家族は国家社会の基礎的単位である」と書かれている「家族」への言及がない。
 家族は国家の基礎的な単位であり、地域社会やコミュニティーというのも、憲法で示す必要がある。個人を尊重しながらも、コミュニティーがしっかりしていれば、さまざまな危険を防ぐことができる。
 次いで、地方自治体とか国家、国際社会、自然環境が来る。こうした観点に立って憲法を体系的に考える必要がある。
 憲法改正について、今の国民投票は、一つの改定に対して投票することになっているが、私は新憲法案を示して、全体についてイエスかノーかを問いかけていくべきだと考えている。
 憲法の成立過程、比較憲法から見ると、戦後70年という節目の中で、まず憲法をきちんと変えていくことが大きな目標になるだろう。
 ◎上記事の著作権は[産経新聞]に帰属します
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