「お金は罪」 献金重ねた元信者 過去悔やむ
2023年7月9日 中日新聞
安倍晋三元首相が銃撃されて死亡した事件から八日で一年がたった。事件を機に世界平和統一家庭連合(旧統一教会)による霊感商法などの反社会的活動が注目され、政府は教団への解散命令請求に向けて調査を重ねているが、先行きは不透明だ。脱会者や支援者らは事件の風化を心配しつつ、「時間がかかったとしても、必ず解散命令請求をしてほしい」と見守る。(西山輝一)
安倍氏銃撃1年
安倍晋三元首相が銃撃されて死亡した事件から八日で一年がたった。事件を機に世界平和統一家庭連合(旧統一教会)による霊感商法などの反社会的活動が注目され、政府は教団への解散命令請求に向けて調査を重ねているが、先行きは不透明だ。脱会者や支援者らは事件の風化を心配しつつ、「時間がかかったとしても、必ず解散命令請求をしてほしい」と見守る。(西山輝一)
安倍氏銃撃1年
いまだ先行き不透明
「旧統一教会に対する世の中の関心が高まった。この流れを自然消滅させないように、政府には本腰を入れて取り組んでほしい」。全国統一教会被害者家族の会の会員で、中部地方で脱会者を支援する竹内俊隆さん(78)は訴える。
宗教法人法では、宗教法人が著しく公共の福祉を害する行為をした場合などに、所轄庁が載裁判所に解散命令を請求できるとと規定。これに基づき文化庁は、解散命令請求を視野に旧統一教会に報告を求める質問権を行使し、活動実態の把握を進めている。
「旧統一教会に対する世の中の関心が高まった。この流れを自然消滅させないように、政府には本腰を入れて取り組んでほしい」。全国統一教会被害者家族の会の会員で、中部地方で脱会者を支援する竹内俊隆さん(78)は訴える。
宗教法人法では、宗教法人が著しく公共の福祉を害する行為をした場合などに、所轄庁が載裁判所に解散命令を請求できるとと規定。これに基づき文化庁は、解散命令請求を視野に旧統一教会に報告を求める質問権を行使し、活動実態の把握を進めている。
事件では、殺人や銃刀法違反などの罪で起訴された山上徹也被告(42)の母親が教団に多額の献金を重ね、家庭崩壊に陥った背景が明らかになった。竹内さんは「信者らは『献金は神様や先祖のためだ』と教え込まれる」と内情を指摘する。
洗脳実態知る中部の支援者
二十代から十数年にわたり信者だった東海地方の六十代の女性脱会者もそうだった。洗脳され「お金を持つことが罪だと思うようになっていた」と振り返る。
きっかけはアルバイトだった。一緒に働いていた年配の女性から「姓名判断をしてみない?」と誘われ、女性宅へ。霊能者を名乗る別の女性がいた。姓名を基に自分の境遇を占ってもらうと、「当たっている」と感じた。勧められるがままに印鑑を買った。入信までに時間はかからなかった。
仕事の合間に教団施設に通い、祈り、献金を重ねた。シングルマザーで生活に余裕があったわけではない。「貯金はなく、生活はぎりぎりの状態だった」。母子手当まで献金に回した。
わが子をないがしろにするつもりはなかった。過去に最愛の親族との突然の別れを経験し、なぜこんなことが自分の身に起きるのか、と悩んできた。「苦しみは自分の代で終わりにする。子どもには苦労をかけさせたくない」。その一心で献金した。
四十代で教団を抜けた。韓国で開かれた大規模集会で、信者を軽んじるような教団幹部の言動などに触れ、「愛がない」と感じるようになった。だが、脱会後は別の苦悩もあった。「しばらく燃え尽きた気持ちになり、感情にふたをする時期が続いた」
銃撃事件から一年。女性は脱会者の心をケアする必要を訴えるとともに、事件を風化させまいと教団の問題を伝える市民活動にも携わっている。「脱会者に寄り添って話を聞く態勢を整えることで、声をあげる人が今後も増えると思う」
◎上記事は[中日新聞]からの転載・引用及び書き写し(=来栖)