習政権「NSC谷内正太郎局長厚遇」の理由…まさに抑止力あっての外交 [石平のChina Watch]

2015-07-30 | 国際/中国/アジア

 産経ニュース 2015.7.30 09:44更新
【石平のChina Watch】習政権「谷内氏厚遇」の理由
 今月中旬、訪中した国家安全保障会議(NSC)の谷内正太郎局長に対し、中国側は「ハイレベル」な連続会談で対処した。
 16日には外交を統括する楊潔篪国務委員が夕食を挟み、5時間半にわたって会談し、翌日午前には、常万全国防相が会談に応じた。そして、その日の午後、会談に出てきたのは党内序列ナンバー2で首相の李克強氏である。
 外交上の格式を重んじる中国で外国の「事務方官僚」へのこのような厚遇は前代未聞である。
 それは谷内氏が単なる「一官僚」にとどまらず、安倍晋三首相の信頼が厚く、日本外交のキーマンであることを、中国側がよく知っているゆえの対応であろう。
 そのことは、中国の指導部が今、安倍首相を非常に丁重に取り扱おうとしていることの証拠だ。安倍首相を粗末にできないと思っているからこそ、「腹心官僚」の谷内氏を手厚く歓待したのである。
 昨年11月、習近平政権下の最初の日中首脳会談が北京で行われたとき、習主席は客である安倍首相を先に立たせて、自分が後になって出てくるという無礼千万な態度を取った。
 今回の対応ぶりとは雲泥の差である。この間、日中の間で一体何が起きたのか。
 日本側の動きから見れば、まずは今年4月下旬、安倍首相が訪米し、オバマ大統領との間で日米同盟の強化で合意した。
 5月21日には、安倍首相が今後5年間、アジアに1100億ドルのインフラ投資を行う計画を表明した。そして谷内局長訪中の当日、東京では、安保法案が衆院を通過して成立のメドが立った。
 この一連の動きは、中国側の目から見れば、まさに習政権が進めるアジア太平洋戦略に「真っ向から対抗する」ものである。
 今、南シナ海問題をめぐって米中が激しく対立する中、日米同盟の強化は当然、両国が連携して中国の南シナ海進出を牽制する意味合いがある。
 実際、常にアメリカと共同して中国の海洋拡張を強く批判しているのは安倍首相だ。そして、集団的自衛権の行使を可能にする安保法案が成立すれば、今後日本は、同盟国や準同盟国と連携して、中国の南シナ海支配を実力で封じ込めることもできるようになるのだ。
 その一方、安倍首相が表明した「1100億ドルのアジア投資計画」は、誰の目から見ても、まさに中国主導のAIIB(アジアインフラ投資銀行)計画への対抗措置であり、安倍首相による「AIIB潰し」ともいうべきものであろう。
 つまり、習政権が進めるアジア太平洋戦略の要となる南シナ海進出とAIIB計画に対し、日本の安倍政権は今や「大いなる邪魔」となっているのである。
 そして、安倍政権の今後の出方によっては、習政権肝いりのこの2つの「目玉戦略」は大きく頓挫してしまう可能性もあるのだ。
 したがって習政権としては、安倍政権をそれ以上「野放し」にすることはもはやできなくなった。だからこそ、安倍首相と真剣に向き合って対話しなければならないと思ったのであろう。
 今回、中国指導部は安倍首相の「腹心官僚」の谷内氏をあれほど厚遇して、9月の安倍首相訪中を積極的に働きかけた。楊国務委員が谷内氏と5時間半にもわたって会談したことは、まさに中国側の本気さの表れである。
 対話から何かが生まれるかは今後次第だが、少なくとも、中国への日本の対抗力が強化されたことが、習政権を日本との真剣対話に引き出したといえるであろう。「抑止力あっての外交」とは、まさにそういうことではないのか。
【プロフィル】石平 せき・へい
 1962年中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。平成19年、日本国籍を取得。
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