◆小沢一郎氏裁判 12回公判 NHK全/(1)秘書との関係は~(11)秘書の裁量からの続き
被告人質問 2日目
小沢氏裁判(12)現金受け渡しは
NHKニュース1月11日 13時27分
小沢元代表への被告人質問の2日目。検察官役の指定弁護士は土地を購入する際に用意した4億円について、小沢元代表に質問しました。法廷での主なやりとりの概要は次のとおりです。
(指定弁護士)10月に石川さんに渡した4億円は、元赤坂タワーズで渡したということでいいですか。
(小沢元代表)そうだったと思います。
(指定弁護士)石川さんは『1億円ずつビニールコーティングされた状態で、4つの紙袋に分けられていた』と話しているが、それでいいですか?
(小沢元代表)私の記憶で、そう残っているわけではありません。1億円のパックもあったかもしれないが、バラのものと1つにまとめたものもあったかとも思い、正確には覚えていません。
(指定弁護士)全部がビニールの1億ずつとは断定できないわけですか?
(小沢元代表)記憶がはっきりしていないので、それを違うとも断定できません。
(指定弁護士)中には1億のパックもありましたか?
(小沢元代表)あったと思います。
(指定弁護士)包んだのは、あなたや関係者ですか?
(小沢元代表)いやそうではありません。
(指定弁護士)銀行から下ろしたときの状態?
(小沢元代表)だったと思います。
(指定弁護士)銀行から下ろしたままのものがあったということですか?
(小沢元代表)はい。
(指定弁護士)どの銀行ですか?
(小沢元代表)事情聴取を受けるに当たり、自分の手元に親から引き継いだ以外の現金も持っていました。しかし、手元にあったというのは客観的に明らかにできないので、金融機関に残っていないかと資料の問い合わせを要請しました。もう10年も、それ以上も前のことで、資料はないとのことだったが、なんとかしてくれと資料は出してもらいましたが、すべてを銀行側自体がよく分からないというところだったが、その中で確認できたのが、私が文京区の自宅を売って、世田谷に新しい土地を購入したこと。そのときはバブルの始まりのときで、思った以上に高い値段で旧来の自宅の売却ができました。その差額もかなりの額でありました。その出入りを示す資料を銀行から得られませんでした。そこで最小限の銀行からおろしたお金が2億円の出金の記録がありました。もう1つの銀行で、私が心臓でもって倒れて入院したあとと思いますが、万が一のことを当時、考えたと思いますが、銀行に預けていた分に手持ちの金を加えて預金しました。その預金は、確か金融危機のあたりでしょうか、そういったこともあり、その他、個人的事情もあり、解約しました。金額は3億円。その後、6000から7000万円も解約しました。この2つの記録が、せいいっぱい、銀行に要請して確認できたもので、合わせて5億6000万円から7000万円になります。
(指定弁護士)私はどこの銀行から下ろしたものかと聞いたのだが、そういった質問は検察官からも聞かれましたか?
(小沢元代表)それは検察官は、すべてを知っていましたので。
(指定弁護士)あなたに尋ねましたか?
(小沢元代表)質問の前後は覚えていません。私が言ったかもしれません。
小沢氏裁判(13)銀行取り引きは
1月11日 13時27分
(指定弁護士)4億円の原資について、1月23日付けの供述調書に『昭和60年に湯島の自宅を売却して、深沢の自宅の土地を購入し、建物を建てた際、残ったおよそ2億円を積み立てていた銀行の私の口座から、平成元年11月21日に引き出した現金2億円、信託銀行の家族名義の口座から平成9年12月15日に現金で引き出した合計3億円、同じ口座から平成14年4月3日に現金で引き出した6000万円の合計5億6000万円のうち、平成16年10月に元赤坂タワーズの事務所の金庫に残っていた4億数千万円のうちの4億円です』とありますが?
(小沢元代表)ご存じと思いますが、検察の事情聴取では、私が資料を持って話しているわけではありません。何月何日にどこの銀行で、というのは答えていません。それは検察の調査でそうなったのだろうし、私としては日付までは覚えていないので、調書はそういう記載になったのだと思います。
(指定弁護士)今、話したことは調書と同じ趣旨ですか?
(小沢元代表)はい、そうです。
(指定弁護士)信託銀行の3億円については、その日のうちに小沢和子さん名義の口座に2億9800万円が入金されていることが分かって、後に供述を変えたんですか?
(小沢元代表)変えていません。和子名義の口座に入金があったことについては具体的には分かってなかったと思います。
(指定弁護士)その後、検察が資金の流れを追っていったら、和子への入金が分かって、その後、あなたが供述を変えたことはありますか?
(小沢元代表)和子に振り込まれた金が安田の3億円そのものであるかどうかは私は分かりません。
(指定弁護士)これは一問一答の調書ですが、あなたは『信託銀行から出金した3億円について、銀行の和子さん名義の口座に2億9800万円の振込があることが確認できましたので、その振込は信託銀行から出金した3億円の中から振り込んだものだと思います。3億円の出金は私が指示をして和子が入れたのかもしれません』と供述しています。また、別の調書では『私としては4億円が自己資金に由来するものであることは間違いないと言える』と供述しています。こういうやりとりが検察官との間でなされたことはありましたか?
(小沢元代表)そうかもしれないが、正確な記憶はありません。信託銀行の金そのものという認識はありませんでした。
(指定弁護士)4億円の出どころについて、あなたは調査はしましたか?
(小沢元代表)銀行に再三、金の出入りの明細や資料を教えてくれと言いましたが、銀行もないのか分かりませんが、そういう古いものはないということでした。
(指定弁護士)信託銀行から出金した3億円が、石川さんに渡した4億円に含まれるという見解ですか?
(小沢元代表)手持ちの金もあったが、客観的資料でお示しできるものではないので、金融機関に尋ねたわけです。しかし、結果として詳細な資料はありませんでした。私としては信託銀行からおろした金も金に色はついていませんので、トータルの原資になったと思います。
(指定弁護士)あなたはこれまで金融機関から億単位の引き出しをしたことは、ままあったのでしょうか?
(小沢元代表)はっきりしたのは自宅の転居の際の売買代金です。しかし、売買代金を出した記録は銀行からもらえませんでした。湯島の自宅を売って、世田谷の自宅を購入した際の差額はかなりあったと思いますが、銀行から出てきたのは2億円。そのほかもあったと思いますが、説明できる資料はありません。
(指定弁護士)じゃあ、こういう聴き方をしましょうか。4億円の現金は元赤坂タワーズにいつごろからあったんでしょうか?
(小沢元代表)年月日までは分かりません。しかし、現金を手元に置くのはずっと以前からそうしていました。4、5億円の現金が元赤坂にいつからあったかは分かりませんが、かなり前からあったと思います。
(指定弁護士)感覚の違いかも知れないが、私からすると億単位の現金を自宅に置いておくというのは想像ができない。現金を置いておくのはどういう考えからなのですか?
(小沢元代表)一つは何かの必要があるときにすぐに対応できる。感覚の違いとおっしゃいましたが、手元にあることは安全でもあるし、私どもの感覚としてはそれほど離れたことではないと思います。
(指定弁護士)話を変えます。平成16年10月に銀行の衆議院支店に個人口座をお持ちでしたよね?
(小沢元代表)いつからかは分かりませんが、もっておったと思います。
(指定弁護士)あなたの事務所で通帳を管理していたんですか?
(小沢元代表)はい。ずっとそうだったと思います。
(指定弁護士)その口座にはどういうお金が入るんですか?
(小沢元代表)歳費。それと顧問をしている会社の顧問料。新聞、雑誌の出演料というのか執筆料もそこに振り込まれていました。まとまったのでいうと、日本改造計画の印税も何冊かの本を出した印税もかなりの額に上ったと思います。
(指定弁護士)あなたの収入は基本的にはこの口座に振り込まれるのか?
(小沢元代表)はい、そうだと思います。
(指定弁護士)石川さんに渡した4億円は、この口座からも出ていますか?
(小沢元代表)通常使っていた口座からではないと思います。記録がないので客観的資料に基づいていませんが、売買代金には違う口座を使ったのではないかと資料から判定できるので、その口座は解約されているので一時的な臨時の口座でした。売買の最後の2億円しか資料からは提示されませんでしたので。
小沢氏裁判(14)金の取り扱い
1月11日 16時5分
(指定弁護士)4億はビニールパックであって、紙袋に詰めて渡したということだが、事務所の金庫には、紙袋に入った状態であったのですか?
(小沢元代表)それは記憶しておりません。
(指定弁護士)では聞き方を変えましょう。金庫から出してから紙袋に入れたのですか?
(小沢元代表)ですから具体的な状況は記憶しておりません。紙袋であったのか、私が詰めたのか、明確な記憶はありません。
(指定弁護士)あなたといえども、金庫から億単位の金を出したことはないんですよね?
(小沢元代表)はい。
(指定弁護士)それなのに具体的な記憶がないんですか?
(小沢元代表)具体的な個別の記憶はありません。
(指定弁護士)1億は10キロありますよね?
(小沢元代表)分かりません。
(指定弁護士)紙袋に入れる前はどういう状態なのですか?持ちやすい?
(小沢元代表)持ちやすい状態かというと、そうではないと思います。
(指定弁護士)石川さんは「4億はビニールパックで新聞紙に包まれ、外から分からない状態だった」ということだが、誰がそういう状態にしたのですか?
(小沢元代表)それはたぶん、僕だと思います。その日にしたかどうか分かりません。
(指定弁護士)1億は10キロと重いものだが、紙袋に入れて新聞に見れなくするという作業を、どうして秘書にさせないんですか?あなたは忙しいのに。
(小沢元代表)私のプライベートな資金ですので、それについて秘書に金庫についても秘書にはさせておりませんでした。今は通帳を持っていますが、以前は通帳もはんこも預けていたのではなく、私の机の鍵のかかっていないところに一緒にしていて、見ようと思えば見ることができました。
(指定弁護士)通帳やはんこを秘書が使った場合、報告はあるのですか?
(小沢元代表)いや必要な作業であれば、なかったと思います。付随して、今思い出したので言いますが、土地を購入する際の四百数十万円の金利について検事に言われましたが、それが私個人の口座から出ていたというのも、この事件まで知りませんでした。
(指定弁護士)平成19年に4億は返された?
(小沢元代表)平成19年かどうか覚えていませんが、しばらくして返してもらったと思います。
(指定弁護士)現金で?
(小沢元代表)だと思います。
(指定弁護士)どこで?
(小沢元代表)元赤坂だったのかなと。
(指定弁護士)誰が返したのですか?
(小沢元代表)石川か池田だったと。
(指定弁護士)石川さんは、このとき秘書をやめていますよ?
(小沢元代表)では池田です。
(指定弁護士)あなたの指示だと思いますか?
(小沢元代表)元赤坂という場所からすると、そうだと思います。
(指定弁護士)現金で返すように、とも?
(小沢元代表)格別「現金で」とは言っていません。現金で用立てたので、感覚としては現金で返すのだろうと私も秘書も思ったと思います。
(指定弁護士)感覚の違いと言われるかもしれないが、銀行に戻ってきた金なら、あなたの、りそな銀行に振り込めばよかったのではないかと思いますが?
(小沢元代表)先ほども申し上げましたとおり、手元にいつ何があっても使い勝手がいいようにある程度の現金を持っていました。従って、現金で返してもらっても不自然ではありません。
(指定弁護士)これも感覚の違いと言われればそれまでなのかもしれませんが、陸山会の口座に入っていた金を現金にして届けたようですが、銀行の口座からあなたに金を移すなら、あなた個人の口座に振り込めばよいと思うのですが、なぜ現金にしたのですか?
(小沢元代表)先ほど申し上げたとおり、手元にいつ何があっても使い勝手がいいように、いつも手元にある程度の現金を持っていました。したがって、手元に現金で返させたことは不自然ではありませんし、銀行の口座は一定の収入についての口座として使っているので、現金で金を受け取るというのは不自然さも違和感もない。
小沢氏裁判(15)秘書は“家族”
1月11日 16時43分
(指定弁護士)土地の代金を支払うまでの間に石川議員たちは売り主や仲介役とさまざまな交渉をしていますが、その経緯については聞いていないのですか?
(小沢元代表)聞いていません。
(指定弁護士)私の感覚だと、あなたの意見も聞かずに登記を翌年にずらしたり、その一方で、予定どおりにお金を支払ったりすることを秘書が決めるというのは不自然だと思うのですが?
(小沢元代表)法廷でも申したところでございますが、役所や企業の上下関係とは違って、本当にひたすら人間の信頼関係で成り立っているのが政治家と秘書であります。私の秘書は学生時代から書生として寝食をともにしてきた者たちがほとんどでありまして、その意味では家族のような存在です。政治家の仕事という意味でも、秘書の裁量や能力でできることなら任せるものなのです。そうしないと、本来の天下国家のことに集中できません。そういった両面からの意味でも事務的なことは彼らの裁量に任せていました。
(指定弁護士)10月29日付けの融資申し込み書を示します。あなたがサインしたもので間違いないですか?
(小沢元代表)はい。
(指定弁護士)2つは同じときにサインしたものですか?
(小沢元代表)そうかもしれないし、そうでないかもしれないし、場所時期については正確に分かっていません。
(指定弁護士)サイン以外の部分は、すでに記載されていましたか?
(小沢元代表)さあ。分かりません。
(指定弁護士)約束手形の4億円という金額は記載されていましたか?
(小沢元代表)覚えていません。
(指定弁護士)サインを求めてきたのは、石川さんですか?
(小沢元代表)何となくの記憶では、石川と銀行の人が一緒のような明確ではありませんが、そんな記憶を持っています。
(指定弁護士)4億円を借りる書類だということは分かっていましたか?
(小沢元代表)私が借りるという認識を持っていたわけではありません。ただ、こういう形式を取る、そのために私のサインが必要なんだという認識です。
(指定弁護士)書類を見れば借りる書類だと分かるのでは?
(小沢元代表)書類を正確に見たかどうかは分かりません。サインしろと言うからしたということだと思います。
(指定弁護士)形式的には、サインはあなただが実質は違うという説明はありましたか?
(小沢元代表)ありません。
(指定弁護士)石川さんからなぜサインが必要か説明がなかったのですか?
(小沢元代表)ありません。以前にも形のうえで、私が金を借りることはあったと思いますので、また、銀行との間でそういうことになったのかなあというだけの話です。
(指定弁護士)石川さんは預金担保で金を借りて不動産の支払いにしますなどと説明したと証言していますが、(説明が)なかったのですか?
(小沢元代表)細かい説明を受けた記憶はありません。ただ、銀行と仕組みを考え、その結果、サインが必要になったのだろうと考えただけです。
(指定弁護士)どんな仕組みだと理解しましたか?
(小沢元代表)私が決済の債務者、責任者ということでしょうから、そういうやり方だろうと思ったが、いずれにせよ、細かなことにはまったく関心がありませんでした。
(指定弁護士)(サインをするときに)売買代金は払われていると思いましたか?まだ払われていないと思いましたか?
(小沢元代表)具体的なことは考えていません。
(指定弁護士)金を借りるためのものということは分かるでしょう?
(小沢元代表)具体的な中身は任せた以上、彼らが相談してやったことだと思っただけです。法的にどうとかどういう手続きだとか、一切関係ありません。
(指定弁護士)これから融資を受けるための書類だということも分からなかったんですか?
(小沢元代表)多分、分かっていたと思うが、そういう類のことに注意関心がなく、したがって記憶にないということだと思います。
(指定弁護士)(サインの)直前に代金を支払っていることを今はご存知ですよね。
(小沢元代表)この法廷で証言を聞いたことだったんでしょうか。申し訳ありません、覚えが悪くて。
(指定弁護士)同じ日の9時半から10時の間に関係者が銀行に集まって、代金を支払っているが、今もご存知ない?
(小沢元代表)ええ。聞いたような気はしますが、明確に関心をもっているわけではないので、記憶はありません。
(指定弁護士)金を払ったことすら石川さんは言ってないんですか?
(小沢元代表)聞いておりません。
(指定弁護士)石川さんが隠さなくてはいけない理由はあるんですか。
(小沢元代表)聞かされていないし、聞く必要性も感じていないです。
(指定弁護士)これから融資を求めるということは、何らかの説明があったのでは?
(小沢元代表)ずっと前に署名したことで残る話ではないので、署名のときの話をされても。
(指定弁護士)石川さんが銀行から融資を受ける話は以前からありましたか?
(小沢元代表)なかったと思います。
(指定弁護士)初めてということですか?
(小沢元代表)お願いしますということだったと思います。
小沢氏裁判(16)4億円の金利は
1月11日 17時3分
(指定弁護士)銀行から4億円を借りることの利払いだが、利払いを払うのは、陸山会と考えていいか?
(小沢元代表)だろうと思います。
(指定弁護士)そうすると、当然、負担は、小沢さんではなくて、陸山会が負担する?
(小沢元代表)日常の政治家と秘書の間で、話したとおり事務は任せていたので、いろいろと考えた記憶はない。
(指定弁護士)任せても、むだなことは任せていませんよね?
(小沢元代表)金利のことですか?
(指定弁護士)コピーの裏用紙を使うことも許さなかった?
(小沢元代表)許さなかったとか、主従の関係ではない。倹約や環境、当たり前のことを言っただけです。
(指定弁護士)厳格に対応していた?
(小沢元代表)そうです。むだにしないようにやっていたと思う。
(指定弁護士)金利負担について、疑問があれば秘書に任せる問題ではなかったとは分からないのですか?
(小沢元代表)いいえ。実際の融資を受けて金利を支払うことは別次元の話。現実に金融機関との話し合いでそうなることで、それと日常のむだ遣いとは次元が違う話だ。
(指定弁護士)4億円を用立てるのに年何百万円の金利を支払う借入の合理性はどう考えていたか?
(小沢元代表)何度も言いますが、理詰めで考えていない。実際の実行にあたり、金融機関と相談して、そういう手法を取ったので、不合理、おかしいという認識はない。
(指定弁護士)秘書がやったことの合理性は考えなかったのですか?
(小沢元代表)意味が分かりませんが。
(指定弁護士)それについてのチェックはしなかったのですか?
(小沢元代表)金利うんぬんとか、石川うんぬんとかいう疑念は一切もちませんでした。
(指定弁護士)4億円の返済はどうするつもりだったのですか?
(小沢元代表)私は、特別考えていませんでした。
(指定弁護士)定期預金から2億円を返し、残りの2億円は平成18年3月に定期預金を解約して返しているが、こうした予定だったのですか?
(小沢元代表)それはまったく分かりません。
⇒小沢一郎氏裁判 13回公判 《中》指定弁護士からの質問/(17)供述の変遷~(24)調書の内容2012-01-11
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〈来栖の独白2012/01/11 Wed.〉
当然のことながら、指定弁護士の努力にもかかわらず、「水谷」の文字は遠く、出てこない。
しかしながら、私は強い不安を禁じ得ない。
>現金を手元に置くのはずっと以前からそうしていました。4、5億円の現金が元赤坂にいつからあったかは分かりませんが、かなり前からあったと思います。
>4億はビニールパックであって、紙袋に詰めて渡したということだが、事務所の金庫には、紙袋に入った状態であったのですか?
>それは記憶しておりません。
>金庫から出してから紙袋に入れたのですか?
>ですから具体的な状況は記憶しておりません。紙袋であったのか、私が詰めたのか、明確な記憶はありません。
>金庫から億単位の金を出したことはないんですよね?それなのに具体的な記憶がないんですか?
>具体的な個別の記憶はありません。
>1億は10キロと重いものだが、紙袋に入れて新聞に見れなくするという作業を、どうして秘書にさせないんですか?
>四百数十万円の金利について・・・それが私個人の口座から・・・、この事件まで知りませんでした。
>平成19年に4億は返された?
>しばらくして返してもらったと思います。
>4億円を借りる書類だということは分かっていましたか?
>書類を正確に見たかどうかは分かりません。サインしろと言うからしたということだと思います。
これらの言葉に幾人の国民が共感するだろう。「国民の生活が第一。」とのフレーズが、私の胸に空疎に響く。4億円といえば巨額であるが、「4億円を借りる書類」について「書類を正確に見たかどうかは分かりません。サインしろと言うからした」と言う。
「私の関心事は天下国家のこと」と云いながら「1億は10キロと重いものだが、紙袋に入れて新聞に見れなくするという作業を、どうして秘書にさせないんですか?あなたは忙しいのに」との指定弁護士の質問に「私のプライベートな資金ですので、それについて秘書に金庫についても秘書にはさせておりませんでした」と答え、然るに、「土地を購入する際の四百数十万円の金利について・・・それが私個人の口座から出ていたというのも、この事件まで知りませんでした」などとも云う。
「疑惑」に関与していないとの主張に走りすぎて、破綻したか。裁判とは恐ろしい生きものだ。このような陥穽が待っている。
元々検察は小沢氏を有罪に持ち込みたかったわけではない。小沢一郎という政治家の政治生命を断てば、目的は達せられる。
◆『悪党 小沢一郎に仕えて』マスメディアと東京地検特捜部/石川知裕氏×佐藤優氏 緊急対談〈1〉2011-07-30
*秘書が見た小沢一郎の裸
佐藤:ところで、小沢さんについてですが、政治家が一番隠したがるのは健康の話です。今回、『悪党』には、その辺りもしっかり書いてあった。小沢さんの裸の姿を何度も見た事があるんですね?
石川:そうですね。書生の時は、風呂上がりを見ますから。都市伝説に『イギリスに行って心臓手術をやった』とか、『小沢の胸には心臓手術の傷がある』なんて言われていましたが、そんな傷はまったくなかった。こうした都市伝説をひとつひとつ正して行くべきです。
佐藤:ただ、心臓病は間違いないんでしょ。
石川:心臓病は持っています。私が事務所に入る前に心筋梗塞をやっているはずです。スーツの左ポケットに、ニトログリセリンが入ってますよね。
佐藤:それから印象に残ったのが、小沢さんと一緒に食事しても、彼は手酌なんですね。『お注ぎします、先生』と言われると、『いや、計ってるから』って。
石川:必ずビールもお銚子も、自分で何本飲んだか分かるように計ってます。私もふたりで飲みに行った場合は、お互いに手酌です。
佐藤:石川さんに教えてもらったんだけれど、小沢さんは医者から3つのうち2つを止めろと言われたんでしょ?
石川:肉とタバコと酒です。心臓病を患った後、酒は人生の楽しみだから止められない。それで、タバコと肉を止めました。でも、節目節目のトンカツは食べてましたが。
佐藤:せっかくこういった機会ですので、Twitterで質問を受け付けます。キツい質問でも、できるだけ逃げませんから、是非送って下さい。双方向性を担保したいと思いますので。
さて、小沢さんの所でお仕えしていた石川さんですが、本の中に面白いエピソードがありました。小沢さんがゴミ箱をあさって、捨てられたレトルトカレーを見つけて来て、『なんで、捨てたんだ!』って叱られる。
石川:あれはビックリしましたね。蓼科の別荘での出来事なんですが、賞味期限が切れていたし、当然ゴミ箱に捨てるでしょう? 一年に1回しか、そこに行かないんですよ。だから棚にあるものを整理して捨てていたら、後からそれを持ち出して、ネチネチ虐めるわけですよ。『確かめれば、食べられるだろう』とね。
佐藤:小沢さんって、ケチなの?
石川:ん~、ケチと言えば、ケチですけれど。
佐藤:でも、石川さんだって、今回の事件では4億円ものお金が、ズズズッと出てきた訳でしょう? そんな大金が行ったり来たりしている状況で、捨てたカレーを持ち出して来るのか......(笑)。
石川:本にも書きましたけれど、締めるところは締めて、使う所は使えと。
佐藤:カレーに関しては、締める所と認識している訳ですね。
石川:あと言われていたのが、『人とは、実際に会って自分で判断しろ』と。つまり、カレーも自分で味見して確かめるべきだった。このような教訓めいたことを教えたかったんでしょう。でも、まさかゴミ箱から、取り出して来るとは思いもよりませんでしたが(笑)。
佐藤:ゴミ箱チェックをしてるって事ですよね。猜疑心が相当強いのかな。
石川:そうですね。後藤謙次(共同通信社元記者)さんの本にも、猜疑心の事が書かれていました。例えば、メール事件(2006年の堀江メール事件)がありましたよね。小沢さんだったら、あのような事にはならなかったと思います。二重チェック、三重チェックでその人物を調べていたと、当時も思いましたから。
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◆小沢一郎元代表の「暗黒人民裁判」は、実は「市民感覚=貧民感覚裁判」だった2012年01月12日
板垣 英憲(いたがき えいけん)「マスコミに出ない政治経済の裏話」
小沢一郎元代表の「暗黒人民裁判」は、1月10日、11日の被告人質問というクライマックスを終えた。
この裁判の最大の特徴は、大多数の下層民(貧乏人)が、富裕層(金持ち)を裁判にかけて糾弾する構図にあった。
それは、フランス革命の最中、ダントン、ロベスピエールなどの革命家が王族や富裕層を人民裁判にかけて糾弾し、どんどん有罪判決を下して断頭台に送った姿を彷彿とさせる。
小沢一郎元代表にとって、「4億円」は、「たかだか4億円」にすぎない。自民党幹事長時代、東京都心の大企業をグルッと回って、20億円~30億円を平気でかき集めてきていた。
当時、政治資金規正法には、いまのように厳しい規制条項はなく、政治資金収支報告書も、限りなく大ざっぱに記載するよう選挙管理委員会が指導していたくらいである。
この意味で、小沢一郎元代表自身が政治資金規正法の改正に関与しているうちに、「大ざっぱ」なことではできなくなったのは事実だ。
政治資金規正法が厳しくなったのは、1993年5月23日、自民党羽田派44人が離党し、新生党(羽田孜、小沢一郎代表幹事)を結成して以降のことである。
小沢一郎元代表は、「お金」に恵まれた人である。言い換えれば、「お金」がどんどん集まる運勢を持っている。親の資産はもとより、和子夫人の実家である「福田組」関係から集まる資金、大中小企業はもとより個人、あるいは多種団体からも勝手に資金が集まってくる。このほかにも、創価学会の池田大作名誉会長とは、英国など海外で資金運用をともにしていた時期もある。
ある時、不動産協会の役員が、私にこう明かしていた。
「役員2人で、小沢一郎さんの部屋に政治資金をもって行ったことがある。すると、秘書や事務所の人たちを全員部屋の外に出した。3000万円を入れた紙袋を手渡すと、中味を見ることなく、ただ一言『オッ』と言った。何かお言葉があると思ったが、それだけだったので、拍子抜けしたことがある」
そのとき私は、
「それは、現金をを受け取ったとか、お礼を言うとか何か会話を交わすと、あとで問題になったとき、お互いに都合悪くなる。不動産協会には、業界団体としての要望をきちんと実現することでお返ししていることだろう」
と解説をしたところ、納得していた。
この種の「お金」が湯水の如く集まってくるので、小沢一郎元代表本人には、「4億円程度のお金」は、決して大金ではなく、政治闘争、選挙活動の「軍資金」でしかない。私服をこやしてはおらず、ましてや、本人にしてみれば「4億円」の出入り内訳の詳細は、わからなくなっているはずである。つまり、いつ、だれからもらったお金であるかの区別はつかなくなっている。
本人にも説明できない「お金」であるから、部外の人にわかろうはずもない。
検事はもとより、今回の「暗黒人民裁判」で検察官役の指定弁護士も、「4億円」の中味について、具体的に不正を証明することも、出入りを証明することもできるわけがない。本人に聞いても、よくわからなくなっているので、説明が二転、三転するのは当然である。
ということは、この裁判は、限りなく疑いは濃厚でありながら、「疑わしきは、被告人の利益に」という大原則を適用せざるを得ない類のものである。
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◆小沢一郎氏裁判/検察の「小沢許すまじ」の執念に始まり、マスコミを引き連れ、起訴にまで持ち込んだ2012-01-12
小沢一郎元代表への被告人質問でヤマを越した「陸山会事件」の持つ意味と露呈した刑事司法改革の難しさ
現代ビジネス「ニュースの深層」2012年01月12日(木)伊藤 博敏
読まされる方も報道する方も、いささか食傷気味だった「陸山会事件」が、10日、11日の両日、行われた小沢一郎元民主党代表への被告人質問でヤマを越した。
事件発生から3年が経過、最初は小沢事務所の巨大裏ガネ疑惑を追及していたが、途中で諦め、最後は秘書宅取得資金の4億円が政治資金規正法違反にあたるか否かを問う事件となった。
小沢一郎という日本を左右する大物政治家の「政治とカネ」に関する事件だけに、意味がないとは言わないが、検察の「小沢許すまじ」といった執念から始まり、マスコミを引き連れ、ようやく起訴にまで持ち込んだという背景を考えれば、「小沢叩き」に与する気が失せる。
むしろ国民は、検察が主導してきた刑事司法が、特捜検察の制度疲労によって改革の時を迎えているだけに、「陸山会事件」は、その岐路を象徴する事件だと理解すべきではないだろうか。
実際、「小沢逮捕」にかける検察の執念は異様だった。その"見立て"が間違っていたことは、12月16日、第10回公判で法廷に立った前田恒彦元大阪地検特捜部検事(証拠隠滅罪で実刑確定)が、「私が裁判官なら無罪判決を書く」と述べたことでも明らかだ。
検察に切られ、地位と身分を失った前田元検事に怖いものはない。前田元検事は、「初日に主任検事から『特捜部と小沢の全面戦争。小沢をあげられなかったら特捜部の負けだ』と言われた」といい、当時、「4億円は複数の企業からもらったという"妄想"を抱く幹部がいた」と、辛辣に批判した。
つまり、「小沢逮捕ありき」で捜査は進み、裏ガネがあると"妄想"した検察幹部によって、事件が組み立てられていった。「小沢公判」に先立つ「秘書公判」で、検察が水谷建設からの1億円の裏ガネを立証したかったのは、事件に関係はなくとも、「小沢事務所はクロ」と印象付けたかったからだ。
特捜検察が手がける事件の多くが「強引なシナリオ捜査」で仕掛けられると指摘されてきたが、検察の"身内"がそれを暴露したことになる。
小沢元代表は、検察には起訴されなかったが、検察審査会に強制起訴された。それは、強引に取られた調書によって審査員に「おかしなカネ集めをする事務所」という意識が刷り込まれていたからだと主張した。
10月の初公判の「意見陳述」で、「本件が特に許せないのは、国民の負託を受けていない検察が、議会制民主主義を踏みにじり、国民主権を冒涜したことだ。(中略)恣意的な権力行使が許されるなら、民主主義国家とはいえない」と、小沢元代表は検察をののしった。当否はともかく"怒り"は理解できる。
しかし、だからこそ「検察改革」なのである。取り調べの全面可視化も含め、検察は変わろうとしている。前田元検事が犯した大阪地検特捜部事件と合わせ、東京地検特捜部の「陸山会事件」は、明らかな行き過ぎであり捜査の失敗。その修正は始まっている。
まず検察は、特捜部が手がける独自捜査を少なくし、「ノルマに縛られない捜査」を目指すことになった。むしろ国税当局、公正取引委員会、証券取引等監視委員会など外部と連動、時には警視庁と組む。
同時に、有罪率100%を目指し、強引な自白調書を散るような取り調べはしない。調書至上主義からの脱却。また、全面可視化を目指すことも決めており、白黒は法廷でつければいいと考えるようになった。
その分、有罪率は低下するが、起訴すればほとんど有罪。有罪率99・9%という数字が間違っていたのであって、裁判所は、検察側最終弁論で判決文を書くような"手抜き"が許されなくなる。
検察が無理をしないということは、裁判所に被告が否認している案件が数多く持ち込まれるということだ。裁判官は、有罪を前提に量刑だけ決めればいいというこれまでの刑事司法から一転、自分の頭で公判資料を読み込み、尋問をし、自ら判断を下さねばならなくなった。
「陸山会事件」の秘書公判で、東京地裁の登石郁朗裁判長は、特捜部の強引で恣意的な捜査を批判、供述調書の主要部分を認めず、「検察に対立するのか」と、訴訟指揮の評判は悪かった。しかし、「反検察」だったわけではない、裁判所もまた変わろうとしていた。
それは、検察と"癒着"することで成り立つヤメ検弁護士の世界にも変化をもたらす。ヤメ検と言えば、罪を認めさせる代わりに、保釈を早くし、執行猶予判決を取ることが主な"役割"だった。だが、それは正しい刑事司法の姿ではない。
争うべきは争う---。そう発想する人権派弁護士への依頼が増え、小沢元代表に就いたのが、冤罪の村木厚子事件で無罪を勝ち取った弘中惇一郎弁護士であるところに、それは表れている。
司法マスコミもそうである。裁判所にタダ同然で記者クラブを置き、検察と一体となって報じていればいい記事、社内で評価の高い記事が書けていたのだから、検察と一心同体だった。だが、村木事件と小沢事件を経て、ネットジャーナリズムが雑誌ジャーナリズムと連帯、「検察べったりの司法マスコミ」を批判するようになった。
検察自身が、制度疲労を認め、変革しようとしているのだから、司法マスコミも自立しなくてはならない。かつては考えられないことだが、検察批判、裁判批判が堂々と論じられるようになった。
そういう意味で、「陸山会事件」は、法曹3者に司法マスコミも加えた刑事司法の関係者が、自立を始めるきっかけとなった事件であり、公判だと位置づけられよう。
むろん素人を裁判に巻き込む裁判員裁判と合わせ、定着は容易ではない。自立を目指していた秘書公判の登石裁判長は、結局、検察の主張通りの判決を下したし、司法マスコミは横一線で形式犯に過ぎない「陸山会事件」を、微に入り細に入り報じ、「なぜ、いつまでも裁判が続いているのか」という、国民の声には答えていない。
それだけ刑事司法改革は難しく、検察がすべてのシナリオを描く司法を郷愁する向きもある。だが、回り始めた歯車は元に戻せない。国民も含め、それそれが自分の頭で刑事事件を考えるしかなく、そうすることが、冤罪を生む強引な捜査からの決別になると信じたい。
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