木曽川・長良川連続リンチ殺人事件上告審 死刑の適否どう判断 元少年3人あす判決
中日新聞2011/03/09朝刊(抜粋)
(事件概要等、前段略)
「生きて償ってほしい」 被告と面会続ける遺族 会話重ね減軽の思いも
リンチ殺人事件の被害者遺族の中には、死刑判決を言い渡された被告との交流を重ねることで肉親の死を乗り越えようと試みる人もいる。刑の確定後は面会や文通が制限される。10日の最高裁判決を前に名古屋拘置所の面会室では、限られた時間を共有する被告と遺族の姿があった。
「お前が何か贈るって言ってたよな」
「はい。ご実家に」
「じゃあ、弟に線香あげとくわ」
冷え込み厳しい2月の午後。事件で弟を失った愛知県内の遺族の男性(43)がアクリル板越しに、大阪府松原市生まれの被告(35)に顔を近づけた。「迷惑かけると思わず何でも手紙に書いてこい。おれは友達だと思っているから」。被告は「私こそ、なれなれしく話してしまって」と、遠慮がちに答えた。
通算7回目の面会。男性は被告との会話を「真剣に話すと重くなる。直球じゃあかん。軽いカーブで」と言う。2009年4月の初面会。被告はひたすら「すみません」と男性に謝り続けた。それが次第に会話につながるようになった。
出発点は1審で無期懲役、2審で死刑判決を受けた被告が男性の家族に寄せた謝罪の手紙だった。反省を感じ、生きて償ってほしいと思うように。被告の弁護人に頼まれ、減軽の嘆願書を最高裁に提出したこともある。
なぜ許せるのか--。面会では事件のことに直接触れなくても直接向き合って話すことで言葉や性格から「被告が場の雰囲気に流されたのではないか」と思えるからだという。
「励まされます。寛大な気持ちを無にできない」。被告は、最高裁判決を前に本紙に寄せた手紙で2年近くになる男性との交流を振り返る。ただ、死刑の確定を強く望み、見舞金の受け取りを固く拒み続ける遺族の感情も意識する。手紙には「私のできることをさせていただきたい」と記されていた。
男性は今月4日も被告との面会に拘置所を訪問。別れ際、いつもと同じようにアクリル板越しに手を合わせた。
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〈来栖の独白〉
最初に、上記記事中の予断を指摘しておきたい。
>刑の確定後は面会や文通が制限される。
は、下される量刑を死刑と断定した記述ではないか。判決が懲役刑となり該当する行刑施設に収監されれば、新法では(2011年が見直し年にあたっているが)、他人であっても、比較的緩やかな交通が認められる。
上記記事に接し、落ち着かぬ気分を禁じえない。むろん私は、死刑を是としない。最高裁へ助命嘆願も、辞さない。が、上の記事の男性の如き振舞い---「友達だと思っている」「アクリル板越しに手を合わせ」---は、したくない。気持ちが悪い。“見舞金の受け取りを固く拒み続ける遺族”にこそ共感を覚える。
◆木曽川・長良川連続リンチ殺人事件 2011/3/10 最高裁判決2011-03-07
「息子の無念晴らして」=被害者遺族、極刑求め-連続リンチ殺人10日判決・最高裁
1994年に大阪、愛知、岐阜で男性4人が死亡した連続リンチ殺人事件で、強盗殺人などの罪に問われ、二審でいずれも死刑とされた当時18~19歳の元少年3被告に対する上告審判決が10日、最高裁第1小法廷(桜井龍子裁判長)で言い渡される。事件で長男江崎正史さん=当時(19)=を失った父恭平さん(66)=愛知県一宮市=は判決を前に、「息子の無念を晴らす判決を。死刑以外は望んでいない」ときっぱり語った。
事件から約16年半。「ようやく気持ちをコントロールできるようになった」と話す母テルミさん(65)だが、悲しみが消えることはない。「息子はいないと分かっていても、2階から下りてくるような気がする。いつも心のどこかで考えている」と悲痛な面持ちで語った。
裁判の焦点は少年だった3人に死刑が適用されるかどうか。恭平さんは「年齢ではなく、4人を殺したという行為によってのみ裁かれるべきだ」と強く訴える。3人からは手紙が届くが、「謝罪を受け入れる気持ちはない」。「裁判で責任を押し付け合う様子を見て、反省していないのが分かった。手紙にはきれい事しか書いていない」と怒りをあらわにする。
「最高裁判決は大きな区切り、新しい一歩」と2人。恭平さんは「息子の供養をしながら新しく生きる道を探したい」と笑顔を見せる。一方、テルミさんは「望みと違う結果でも、最後だから受け止めなければならない。どうなるだろうと考えて眠れない日がある」と不安を隠せない様子だ。(時事通信2011/03/06-14:27)
◆償いの言葉 響かない。無念 胸に11年。3被告見つめる遺族
◆死刑制度と裁判員制度を問う東海テレビ制作『罪と罰』2009-04-15
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◆正義のかたち「重い選択・日米の現場から」「死刑・日米家族の選択」「裁判官の告白」2010-04-12 | 死刑/重刑/生命犯 問題
・正義のかたち:重い選択・日米の現場から/1(1)難しい自白の判断 松山事件 2009-10-12 | 死刑〔重刑/生命犯〕問題
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