【和歌山「正論」詳報】 対テロ、中韓…「日本が生き残るために保守も進化を」 2015.3.9 宮家邦彦氏

2015-03-09 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉

 産経WEST 2015.3.9 07:00更新  
【和歌山「正論」詳報】対テロ、中韓…「日本が生き残るために保守も進化を」 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹・宮家邦彦氏
 和歌山「正論」懇話会の第79回講演会が3月3日、和歌山市内で行われ、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦氏が「戦後七十年 問われる日本外交の情報発信力」をテーマに、過激組織「イスラム国」や東アジア情勢の変化などについて解説した。詳報は次の通り。

 政策目的のためにどのように情報を発信するか。最も大事なことは、政策をまず作ること。
 イスラム国は昨年6月から8月にかけて、イラク・バグダッドを含めて多くの地域を支配し、モスルを陥落させた。さらに、湯川遥菜さんと後藤健二さんを人質にとった。
 情報発信するときは相手を知らなければならない。まずは中東を理解しないとだめだ。今回の日本人殺害事件について、安倍晋三首相が1月に中東で、イスラム国を刺激するようなスピーチをするから湯川さんや後藤さんが殺されたという人は、中東を全く知らない。
 イスラム国は人質を取って、恐怖や衝撃を与え、敵を分断・弱体化し、イスラム国を作るために戦っている。人質や金が目的ではない。それが理解できないから首相のスピーチを批判する。イスラム国はイラクとシリアがまともな国になればあっという間にやられる人たち。これからそれが起きると思う。
 テロはグローバル化してしまった。日本が人道的援助であることを言っても相手はテロリスト。インターネットを活用して中東の一地域の憎悪や不満がリアルタイムで世界中の潜在的なテロリストに共有される。
 残念ながら、日本も例外ではない。また、日本が初めてテロのターゲットになったというのは嘘。国際テロ組織「アルカーイダ」の指導者だったウサマ・ビンラーディンは、2001年から日本のことを研究していた。2004年にもバグダッドで日本人男性が殺された。日本はずっとターゲットだ。
 対外情報機関の設置が大切で、こういうものを持たないと、素材がないから情報発信はできない。警察と外務省が一緒になって共通の目的を持ち、世界に通用する情報機関を作ればいいと思うが、官邸には置くべきではない。
 さて、中韓の問題。中国がアジアの海でやっていることは力による現状の変更。日本は、これは受け入れられない。また日中関係は正常化できない。領土問題が解決するということは、どっちかが領有権を放棄するということだが、するわけがない。尖閣の問題は“持病”としてつきあえばいい。
 韓国については、彼らの基本的な発想はバランスを取ること。それで最低限の独立を維持してきた。韓国にとって、最も大きな問題は仮に北朝鮮と統一した後、中国とどうつきあうか。それを考えたとたんに日米との関係が消える。そうした韓国の歴史的なDNAが戻ってきた。それほど東アジアの戦略関係は大きく変わってきている。
 こうした状況で、「日本は何をしたらいいのか」。島国は海洋国家であるため、大陸とは距離を取るべきで、過度な大陸への介入は国力を浪費するだけだ。シーレーンを確保し、自由貿易をする。これが島国の戦略。そして生き残らないといけない。
 日本は米国との協調で大陸との健全な距離を維持し、シーレーン、自由貿易を享受して民主主義を回復した。これが島国としての成功だと思う。日本がやらなければならないのは、現状を維持すること。中国はいずれ変わっていく。日本は10分の1の人口で中国がこけたときに生き延びなければならない。そして新しいパラダイム(規範)に乗る。
 伝統を守るには変化しなければならない。昔は領土を奪われたら戦争で取り返した。今、われわれが戦っている国際政治は過去の価値ではなく、現在の価値が大切。自由、民主、法の支配、人権、人道の「普遍的な価値」で保守的な価値を説明できれば、その価値は残る。説明できなければ、その価値は死ぬ。昔の事実を昔の価値で議論することは絶対にやってはいけない。昔の価値で戦っても勝てず、良くて引き分け、勝利はない。
 新しいパラダイムは間違いなく普遍的価値が重視される。だからこそわれわれの伝統は、普遍的価値で説明できなければならない。そうすれば生き残ることができ、中国、韓国との関係も変わる。
 老化する日本は、アベノミクスで元気になって活力を維持し、新たな変化が来るときまでに準備をして列強の一因(*)として生き残る。そのためにはどうしても保守が進化しないといけない。そのやり方が問われている。

 ◎上記事の著作権は[産経新聞]に帰属します
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〈来栖の独白〉
 全面、同意。
一因(*)
 「一員」ではないか。
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