オバマ政権は尖閣を守るのか (ワシントン駐在客員特派員・古森義久)
ステージ風発 2013/06/11 14:12
米中首脳会談での尖閣問題に対するオバマ大統領の言明は公表されている範囲で判断する限り、日本にとっては失望のきわみでした。
日本をアメリカの同盟国として認識しているのか、と問いたくなります。
オバマ大統領が習近平国家主席に伝えたとされる言明で、おかしな点は以下です。
①現状をエスカレートさせているのは明らかに中国なのに、日本と中国を並列において、両方に均等に、ディエスカレートを呼びかけている。
②行動よりも会話を、という訴えも日中両国に均等に発信しているが、連日、日本領海に艦艇を侵入させるような行動をとっているのは中国である。
③アメリカは尖閣の主権では立場をとらないと述べたが、肝心の施政権については日本の保有が厳存することにまったく触れていない。
④尖閣は日米安保条約の適用範囲内であるという、同盟国としては最重要な点を中国側に対して述べなかった。
こうしたオバマ政権の尖閣問題に対する消極姿勢、不透明姿勢については私はすでに論評をしています。その記事を再度、紹介します。
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「尖閣」揺れるオバマ政権
産経新聞 2013.5.11 10:35[緯度経度]
オバマ政権の尖閣諸島(沖縄県石垣市)に対する姿勢がどうにもおかしい。同盟国の日本を同盟国扱いしないようなブレやズレがちらつくのだ。
ヘーゲル国防長官やケリー国務長官は尖閣問題では「現状を変えようとする行動や、いかなる力による一方的な行為にも反対」という言明を繰り返す。国防総省高官たちも尖閣の主権や施政権をめぐる対立は「平和的、外交的、国際法に沿った方法で」と公式に強調する。
尖閣の日本の主権や施政権の現状を一方的に、しかも力によって変えようとしているのは中国であることは歴然としている。公船だけでなく軍艦や戦闘機を動員して、日本の領海や領空に頻繁に侵入してくる、まさに「力による一方的な行為」が連日、米軍の目前で展開されているのだ。
だがオバマ政権は中国のその非を指摘しない。中国の名もあげず、単に日中両国を同等に並べて、「抑制を」と述べるだけである。
そもそも尖閣をめぐるいまの緊迫も必ずしも中国のせいではないという見解はオバマ政権周辺では珍しくない。民主党傾斜の外交政策の大手研究機関「外交問題評議会」のシーラ・スミス日本研究員は尖閣でのいまの日中対立の出発点を昨年9月の日本側の尖閣国有化だとして、日中両方のナショナリズムが対立をあおるという論文を発表した。
実際には尖閣は日中国交正常化での「棚上げ」で現状維持が合意されたのに、中国が1992年の「領海法」で一方的に領有を宣言した。
その後も政府に認知された不法侵入者が絶えず、2010年9月には中国漁船が領海侵入だけでなく日本側の巡視船に体当たりしてきたのだ。
「日中両方のナショナリズム」というが、中国での政府公認の大規模な日本の企業や商店の攻撃、破壊のような暴力的な「ナショナリズム」が日本のどこにあるというのか。
オバマ政権の対応でさらに気がかりなのは有事の尖閣防衛を明言しないことである。米側高官たちは「尖閣は日米安保条約の適用範囲内にある」と繰り返す。普通の解釈では、外部からの武力攻撃には米国も日本と共同で対処の行動をとるという同条約第5条の適用を意味するが、オバマ政権ではだれも「尖閣への武力攻撃には米軍もその防衛にあたる」という具体的な誓約までは言明しない。日本側としてはなんとも気になる曖昧さが残るのだ。
この点での不安材料は中国の海洋戦略の専門家マイケル・マクデビット氏の4月の証言である。米海軍少将から国防総省東アジア政策部長まで務めた同氏は議会諮問機関「米中経済安保調査委員会」の公聴会で「米国はこの無人島をめぐって中国人民解放軍との直接の戦闘に入ることは避けるべきだ」と述べたのだ。尖閣有事には米国は「偵察、兵站(へいたん)、技術助言など後方支援を提供すればよい」というのである。
同氏はオバマ政権に近いとされるが、尖閣の戦略的価値の軽視としては前述の外交問題評議会の問題提起でも「小さな無人島」と、ことさらの表現が使われていた。尖閣は日本側が抑制のためにあえて無人にしているという現実は無視なのだ。
中国との協調を優先させ、同盟国への誓約を曖昧にするということなのか。万が一にもオバマ政権が尖閣諸島を有事でも守らないという方向が明らかになったとき、日米同盟の歴史はその瞬間に変わるだろう。(ワシントン駐在客員特派員・古森義久)
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◆ 「尖閣」揺れるオバマ政権 後ろにいるのが中国 利害得失を踏まえて本気のコミットメントは控えるアメリカ 2013-05-11 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
・田母神俊雄著『田母神国軍 たったこれだけで日本は普通の国になる』(産経新聞出版)
p166~
わが国は戦後、アメリカに守ってもらうことを前提としてきましたので、自らやり返すという意思がありません。従ってやり返すための攻撃力も自衛隊は持っていないのです。専守防衛では抑止力にならないのです。
今後、多くの新興国の勃興によりアメリカの相対的国力はどんどん低下していくと思います。アメリカの抑止力は次第に弱くなっていくのです。そのような情勢下で、我が国の防衛がこれまでどおりアメリカの抑止力に全面的に依存することは無理があると思います。日中間の尖閣諸島における小競り合いでも、アメリカは中国と争うことがアメリカの国益に合致しないと判断したときは、日本を守らないと思います。
独立国家は、自分の国を自分で守ることが必要です。日本は世界のGDPの10%近くを占める経済大国なのです。(略)
そのためには、いま自衛隊に欠けている攻撃力を整備する必要があります。それがやられたらやり返すという明確な意思表示であり、我が国に対する侵略を抑止するのです。
具体的には諸外国が持っている空母、戦略爆撃機、地対地ミサイル、艦対地ミサイルを持つべきです。
p167~
現在、日本の自衛隊は空母を持っていません。
なぜ持っていないのかと言えば、空母が攻撃のための戦闘機を運ぶものだからです。隣国が空母を持つというのに、日本にはないのですから、我が国がどれほど自衛隊に攻撃力を持たせたくないかわかろうというものでしょう。
四方を海で囲まれた日本にとって、いつでも攻撃に出る用意があるという姿勢をとるためには空母が重要不可欠です。
中国は、通常型の国産空母の建造に乗り出しています。つまり、中国は着実に「恫喝」の準備を進めているのです。
このまま指をくわえてみていれば、いずれ中国の空母が東シナ海に出ようとしたとき、日本は何の対抗措置もとれないということになります。
中国との軍事力のバランスをとるためには、日本も空母を3隻は持たなければならないと私は思います。アメリカの第7艦隊に配備された原子力空母ジョージ・ワシントンと同じクラスの10万トン級相当を想定して、3隻です。もちろん、艦載機も必要です。
ただし、アメリカ海軍のように遠海を巡回させる必要はありません。日本周辺に置いておけば、それだけで抑止力になります。
p168~
例えば尖閣諸島や南沙・西沙諸島といった、中国が太平洋に進出するために通過しなければならないルートに置けばいいわけです。その地域に空母が存在し、海と空を支配することが、中国に対する抑止になる。(略)
p169~
我が国が核武装を目指す場合、国内的な合意を取ることが相当に難しいし、また核武装国はこれを邪魔しようとするでしょう。(略)
日本の核アレルギーは相当なもので、核をアメリカに落とされたことも忘れてしまっているほどですが、1番の問題は、国民も政治家も核兵器がどういう兵器なのか、わかっていないということです。核兵器は先制攻撃に利用するものだと思われていますが、国際社会では「核兵器は防御の兵器」というのが常識です。
核兵器はその破壊力があまりにも強大であるために、核戦争に勝者はいません。核で先制攻撃したところで必ず報復されますから、これもまた負けに等しい。
ですから核は、「やれるならやってみろ、だけどやったら報復するぞ」と思わせておいて、実際は誰も使いはしないし、使わせもしないという“防御的”な兵器なのです。
また、核兵器は、これまでの通常兵器のように戦力の均衡というものを必要としません。通常兵器の場合は、相手国が100で自国が1というほどの戦力差をつけられていれば、たとえ1を持っていようとも何の抑止にもなりません。しかし、核の場合は、アメリカやロシアがそれを何千発保有していようが、インドや北朝鮮が数発持つだけで十分に抑止力になります。
日本の場合は、核武装について議論をするだけでも、核抑止力は向上します。外交交渉力も向上するのです。それだけでも、国際社会の中で日本の発言力は高まります。しかし、「核武装はしません」と公言した途端に、世界中から相手にされなくなるのです。(略)
アメリカもロシアも、自分たち以外の国に核武装をさせたくないのが本音です。NPTという枠組みで世界的に核軍縮を呼びかけていますが、あれはタテマエでしかありません。アメリカもロシアも「核を廃絶する方向に行くよ」と単なるジェスチャーをしているの過ぎないのです。
「私たちも核廃絶に向けて努力するのだから、いまから核武装しようとは考えないでください」ということで、本音は、「皆さんが核武装を考えなければ、私たち核保有国の優位は永遠に続きます」と言っているわけです。
そんな核保有国の意図もわからずに、日本の首相はそれにまともに乗っかってしまう。2009年9月、ニューヨークの国連本部で開かれた核軍縮・核不拡散に関する安全保障理事会の会合で、鳩山由紀夫首相(当時)は非核三原則を堅持すると改めて宣言しました。
鳩山さん本人は心の底から、そうすれば世界から尊敬されると思っているのだから重症です。当然ながら、世界中の国が、「馬鹿な首相もいるな」と思ったはずです。誰も言わないけれど、世界中の失笑を買ったのは明らかです。
あの場では、「日本は唯一の被爆国だからこそ、二度と核攻撃されないためにも核武装する権利がある」と言うべきでした。鳩山氏、ひいては日本の政治家は、「国際政治を動かしているのが核兵器だ」ということを全く理解していないのだから、呆れるばかりです。 *強調(太字・着色)は来栖
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・石原慎太郎著『新・堕落論』 新潮選書2011/7/20発行
p79~
しかしその間中国の潜水艦は沖縄の島々の間の海峡を無断で通過するという侵犯を敢えて行い、日本側はそれに抗議するだけにとどまる不祥事がつづき、日本側は、本来なら警告の爆雷投下ぐらいはすべきだろうに放置してきました。これがもし日本の潜水艦が中国なり北朝鮮、いや韓国の領海にしても無断で押し入ったなら当然撃沈されるされるでしょう。それが「国防」というものだ。国防のためにすべきことを行わない国家にとっては、領土も領海も存在しないに等しい。
この尖閣問題はさらに今後過熱化され、日本、アメリカ、中国三者の関わりを占う鍵となるに違いない。要はアメリカは本気で日米安保を発動してまで協力して尖閣を守るかどうか。守るまい、守れはしまい。
p81~
尖閣諸島への中国の侵犯に見られる露骨な覇権主義が、チベットやモンゴルと同様、まぎれもなく、この国に及ぼうとしているのに最低限必要な措置としての自衛隊の現地駐留も行わずに、ただアメリカ高官の「尖閣は守ってやる」という言葉だけを信じて無為のままにいるこんな国に、実は日米安保条約は適応されえないということは、安保条約の第5条を読めばわかることなのに。後述するが、アメリカが日米安保にのっとって日本を守る義務は、日本の行政権が及ぶ所に軍事紛争が起こった時に限られているのです。
つまりあそこでいくら保安庁の船に中国の漁船と称してはいるが、あの衝突の(略)アメリカはそれを軍事衝突とはみないでしょう。ましてその後ろにいるのが中国としたら、アメリカの今後の利害得失を踏まえて本気のコミットメントは控えるに決まっている。
安保条約への誤解
ちなみに現時点ならば、核兵器に関しては別ですが日本が独自に保有する通常兵器での戦力は中国を上回っています。(p81~)F-152百機による航空集団はアメリカ空軍に次ぐ世界第2の戦闘能力があり、その訓練時間量は中国の寄せ集め機種での実力に勝っているし、制海権に関しても関しても保有する一次に7発のミサイルを発射し得る6隻のイージス艦を旗艦とする6艦隊は中国の現有勢力に十分対抗し得る。予定のイージス艦10隻保有が達成されれば日本独自で制海権を優に獲得し得る。ということを、政府は国民に知らしめた上で尖閣問題に堂々と対処したらいいのです。
もともと尖閣諸島に関する日中間の紛争についてアメリカは極めて冷淡で、中国や台湾がこれら島々の領有権について沖縄返還後横槍を入れてきていたので、日本はハーグの国際司法裁判所に提訴しようとアメリカに協力を申し入れたのに、アメリカは、確かに尖閣を含めて沖縄の行政権を正式に日本に返還したが、沖縄がいずれの国の領土かということに関して我々は責任を持たないと通告してきています。
さらに、かつて香港の活動家と称する、実は一部軍人が政府の意向に沿って民間船を使って尖閣に上陸し中国の国旗を掲げたことがありましたが、一方同時に沖縄本島ではアメリカ海兵隊の黒人兵3人が小学校5年生の女の子を強姦し県民が激怒する事件が重ねて起こりました。
p83~
その時アメリカの有力紙の記者がモンデール駐日大使に、尖閣の紛争がこれ以上拡大したら、アメリカ軍は安保条約にのっとって出動する可能性があるかと質したら、大使は言下にNOと答えた。
しかし不思議なことに日本のメディアはこれに言及せず、私一人が担当していたコラムに尖閣の紛争に関してアメリカの姿勢がそうしたものなら安保条約の意味はあり得ないと非難し、それがアメリカ議会にも伝わり当時野党だった共和党の政策スタッフがそれを受け、議員たちも動いてモンデール大使は5日後に更迭されました。
丁度その頃、アメリカでは中国本土からの指令で動くチャイナロビイストのクリントン政権への莫大な献金が問題化しスキャンダル化しかかっていたが、それとモンデールの発言との関連性ははたしてあったのかどうか。(略)
p84~
さて、尖閣諸島の安保による防衛に関してのモンデールの発言ですが、実はこの発言には、というよりも安保条約そのものにはある大切な伏線があるのです。はたして彼がそれを熟知して発言したのかどうかはわからないが。
彼だけではなしに、政治家も含めて日本人の多くは、安保条約なるものの内容をろくに知らずに、アメリカはことが起こればいつでも日本を守ることになっていると思っているが、それはとんでもない思い込み、というよりも危ない勘違いです。
「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全をあぶなくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続きに従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。
前記の武力攻撃およびその結果として執ったすべての措置は、国際連合憲章第51条の規定に従って直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し及び維持するために必要な措置を執ったときは、終止しなければならない」(日米安保条約第5条)
p85~
ここで規定されている日本領土への侵犯を受けての紛争とは、あくまで軍事による紛争です。尖閣でのもろもろの衝突事件は日米安保の対象になり得ないというアメリカの逃げ口上は条約上成り立ってしまう。
だからヒラリー国務長官がいくらアメリカは日本の尖閣を守ってやると大見得を切っても、その後彼女の子分のクローリー国務次官補が圧力をかけてきて日本の政府にああした措置をとらせてきたのです。
日米安保に関するもう一つの大きな不安要素については、ほとんどの日本人が知らずにいます。
それはアメリカのれっきとした法律、「戦争権限法」だ。これは戦争に関する大統領の権限を強く拘束制限する法律です。大統領はその権限を行使して新しい戦争を始めることは出来るが、それはあくまで剥こう60日限りのことで、その戦争のなりゆき次第で議会は60日を過ぎると行われている戦争に反対しそれを停止させることもできるのです。
しかしこれは彼等白人同士の結束で出来ているNATOが行う戦争には該当され得ない。
p86~
だから現在アフガンで行われている不毛な戦闘には適応され得ないが、彼等が作って一方的に押しつけた憲法にせよ、それをかざして集団自衛権も認めず、日本にとっても致命的なインド洋のタンカールートを守るための外国艦船への海上給油作業も止めてしまうような国での紛争に、果たして長い期間の戦闘を議会が認めるのかどうか。ここらは日本人も頭を冷やして考えた方がいい。
私の発言でモンデールが更迭された後、フォーリーが就任するまでなんと1年近くもの間アメリカの駐日大使は不在のままでした。つまり日本などという国には、ことさら大使を置かなくとも何の痛痒も感じないということだろう。
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◆ 米中首脳会談 習近平主席「尖閣~測量上陸の可能性」「太平洋には米中両国を受け入れる十分な空間がある」 2013-06-11 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
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◆ 【米中首脳会談】米側から開催を提案 / 中国高官、日本含む関係方面は「挑発やめ対話応ぜよ」 2013-06-10 | 国際/中国/アジア
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◆ 米中首脳会談 太平洋は2大国の空間か・・・アメリカにおける日本のプレゼンスがほとんどない 2013-06-09 | 国際/中国/アジア
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◆ 米中首脳会談 習近平国家主席の訪米、急遽決まった狙いは・・・ 2013-06-06 | 国際/中国/アジア
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◆ 「インテリジェンス 闇に消える内調加賀美正人参事官自殺/米国における日本のプレゼンスの低さ」佐藤優 2013-04-17 | 政治
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