【米中首脳会談】 いずれ訪れる米中「二強」時代 中国の「平和的」台頭が重要

2013-06-11 | 国際/中国/アジア

新秩序の芽は見えたか 米中首脳会談
中日新聞 社説 2013年6月11日
 太平洋を挟んで向き合う米中両国の首脳が会談した。保養地、ノーネクタイという異例の舞台設定。二十一世紀の新しい国際秩序の芽は見えてきたのか。
  第二次世界大戦後、冷戦をも制し、今世紀初頭には「一強」と呼ばれた米国と、共産党の一党支配下、国内総生産(GDP)世界第二位の経済大国となり、いずれ米国を追い越すと予測される中国。
  オバマ米大統領が習近平中国国家主席を、政治の中心地ワシントンではなく、米西海岸に招いたのは、儀礼にとらわれず、胸襟を開いて、新時代の両国関係を話し合いたいとの意欲の表れでもある。
  大国の条件を胸に刻め
  習氏にとっては国家主席就任から三カ月足らずでの訪米だ。胡錦濤前主席の初訪米が就任二年半後だったことと比較しても、異例の早さと言える。
  中国はかつて「眠れる獅子」、アヘン戦争の敗北で東亜病夫(東洋の病人)とまで言われた。習氏は首脳会談を、十九世紀半ば以降の屈辱の歴史に完全に終止符を打ち、歴史と伝統に輝く「中華民族の復興」を世界に印象づける場と考えたに違いない。
  中国側が今回の会談で米側に求めたのは、世界の超大国・米国と「対等」であるとのお墨付きだ。習氏は「新しい形の大国関係構築を議論し、大統領と重要な合意に達した」と胸を張った。米中が対等な立場で国際問題を主導する「二大国時代」の到来を宣言したかったのだろう。
  この試みは成就しなかった。大統領は「中国の平和的台頭が重要であり、それが世界の問題に中国が対等な立場で取り組むことにつながる」と、条件を付けたのだ。
  沖縄県・尖閣諸島をめぐる挑発や国内で深刻な人権抑圧を続けるのなら、共に未来を描く国際的リーダーたり得ない、と。中国指導部は胸に刻むべきだ。
 *安保上の懸念は解消を
  二期目の米大統領はしばしば、歴史に名を刻む大きな業績を意識する、といわれる。
  米国史上初の黒人大統領となったオバマ氏は一期目に「国のかたち」に関わるとして保守派の徹底的な抵抗を受けたオバマケア(医療保険改革法)を実現した。
  巨額の戦費を強いたアフガン、イラク二つの戦争にも終止符を打った。景気、雇用に曙光(しょこう)がさしてようやく自国再建に専念できる状況を整えた。二〇一七年初めまでの残り任期に一歩踏み出し、米中を軸とした新秩序構築に布石を打つ気概があっても不思議でない。
  その際、障害となるのは新たな安全保障上の懸念だろう。
  北朝鮮核問題で両首脳は、非核化への協力促進で一致した。中国が一定の役割を果たしつつあることは歓迎したい。
  一方、尖閣諸島をめぐる緊張について、大統領は「対立をエスカレートさせず、外交的に対話で解決するよう求める」と促し、習氏は「関係各国が責任ある態度をとって挑発をやめ、対話を通じて問題を解決する路線に戻ることを望む」と述べた、という。
  中国は経済大国化に伴い、かつて小平氏が唱えた「韜光養晦(とうこうようかい)」(能力を隠して力を蓄える)の外交方針を転換した。軍事費増大や、東、南シナ海での海洋権益確保の動きこそ、米国のみならず、アジア諸国の懸念材料である。
  軍事的脅威を自ら振りまきながらも、相手国が原因をつくって挑発していると一方的に非難する態度を続けていては、アジア太平洋地域の平和と安定は望めまい。
  中国が発信源と米国がみているサイバー攻撃問題も同様だ。両首脳はサイバーセキュリティーの共通ルールづくりで合意したが、中国側が「われわれはサイバー攻撃の被害者だ」との不満も漏らす。
  中国は、利害が対立する問題で独善的な態度をとり続けることをやめ、国際社会の一員としての責任を積極的に果たすべきだ。
  八時間にわたる会談の全容は明らかではないが国際社会の基調となっている民主主義、法治、人権など普遍の原理をめぐる論議がほとんど聞こえてこなかったことには懸念を抱かざるを得ない。
  中国が、国内の言論統制、人権抑圧に対する国際社会の懸念を取り除くことなしに、自らの言う「新しい形の大国関係」の一翼を担うことなど、とてもできない。
 *創造的な外交、今こそ
  いずれ訪れる米中「二強」時代に、日本としてどう臨むべきか。
  日米同盟、アジア重視、国連中心は日本外交の太い三本柱だが、思考停止に陥らず、創造的で、したたかな外交を探るしかあるまい。
  平和希求の理念を掲げ、独自の文化、技術に磨きをかけておきたい。本格的な高齢化社会を世界に先駆けて迎え、いずれ経済大国でなくなっても、国際社会から必要とされ、頼られる国でありたい。
*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *
『帝国の終焉』(「スーパーパワー」でなくなった同盟国・アメリカ)日高義樹著 2012年2月13日第1版第1刷発行 PHP研究所 
p93~
第5部 どの国も民主主義になるわけではない
 人類の歴史を見れば明らかなように、確かに長い目で見れば、野蛮な時代から封建主義の時代に代わり、そして絶対主義の時代を経過し、民主主義が開花した。ヨーロッパの多くの国々はこういった過程を経て豊かになり、人々の暮らしが楽になるとともに、民主主義、人道主義へ移行していった。鍵になったのは「経済が良くなり、暮らしが楽になる」ということである。
 中国の場合は、明らかにヨーロッパの国々とは異なっている。そして日本とも全く違っている。中国は二十数年にわたって経済を拡大し続け、国家として見れば豊かになった。だが、すでに見てきたように貧富の差が激しくなるばかりで、国民は幸福にはなっていない。こう決めつけてしまうと親中国派の人々から指弾を受けるかもしれないが、中国国内の政治的な状況を見ると、依然として非人道的な政治が続いている。民主主義は全く育っていない。
 中国はもともと共産主義的資本主義と称して、共産党が資本主義国家と同じようなビジネスを行なってきた。中国という国家が資本主義のシステムを使ってビジネスを行ない、国営や公営の企業が世界中から稼ぎまくった。この結果、中国国家は経済的に繁栄したものの、中国人一人ひとりは幸福になっているようには見えない。
p95~
 「中国人は食べられさえすれば文句は言わない」
 中国の友人がよくこう言うが、中国人はそれ以上のことを望まないのかもしれない。つまり中国の人は「食べられる」以上のこと、つまり形而上学的な問題には関心がないのかもしれない。
 「民主主義、人道主義、国際主義といったものは我々には関係ない」
 こう言った中国の知人がいるが、中国だけではなく、ロシアの現状を見ても、封建主義から民主主義に至る政治的な変化を人類の向上とは考えない人々が大勢いるようだ。
p97~
 第2次大戦以来、人道主義と民主主義、そして平和主義を主張してきたアメリカのやり方が、アメリカ主義でありアメリカの勝手主義であると非難された。「アメリカ嫌い」という言葉が国際的に定着したのは、その結果であった。そうしたアメリカのやり方を、1つの考え方であり、1つの価値観に基づくものであると切り捨てているのが、ロシアの指導者であり、中国の指導者である。
p98~
 ヒットラーはドイツの誇りを掲げ、ユダヤ人を圧迫するとともに、反政府勢力を弾圧して経済の拡大を図った。中国もその通りのことをやっている。しかも、冷戦に敗れたロシアのプーチン前大統領が主張しているように、価値観の違った、そしてやり方の違った経済の競争が可能であるとうそぶいている。
 だが彼らの言う価値観の相違というのは、民主主義を無視し、人道主義を拒否し、国際主義に反対することである。中国やロシアについては、冷戦に敗れた国や第2次大戦に脇役しか与えられなかった国が自分たちのやり方で歴史の勝利者になろうとしているように見える。
p99~
 共産主義は冷戦の結果、民主主義とそれに伴う人道主義に敗北したはずである。ところが中国は、冷戦と同じ体制を維持しながら、経済の戦争には勝てるとばかり傲慢になっている。
 ヨーロッパの人々は中国の台頭をヒットラーの台頭になぞらえている。これに対して日本のジャーナリストや学者たちは驚きを隠さないようである。彼らは、ユダヤ人を抹殺しようとしたヒットラーと中国は異なっていると考えている。だが、共産党が絶対で、反対の意見を持つ者は犯罪者として牢獄に送り、言論の自由を認めていないという点では、中国はヒットラーと同じである。
 中国は明らかに人道主義を否定しているだけでなく、民主主義を理解しようとしていない。国際主義も分かろうとしない。
p100~
 ヨーロッパの人々は、歴史的な経験から中国が危険であるとして、ヒットラーと同じであると指摘しているが、歴史にナイーブな日本の人々は全くそのことに気がついていない。
 ヨーロッパの人々はヒットラーと戦い勝利を得たが、そのためにアメリカと同盟し手を携えて戦った。中国がヒットラーだという考えに驚くべきではない。新しいヒットラーである中国の共産主義の専制体制に対して世界の人々は、手を携えて戦わなくてはならなくなっている。「アメリカ嫌い」という言葉で中国の脅威から目を逸らす時代は終わったのである。
p146~
第1部 日本列島周辺が世界でいま最も危険である
 ワシントンの軍事消息筋によると、2012年から13年にかけて起きると懸念される最も危険な戦いは、中国による台湾攻撃である。(略)
 中国軍はここ数年、莫大な費用を注ぎ込んで近代化に力を入れ、2011年にはJ20と呼ばれるステルス戦闘機の開発に成功しただけでなく、アメリカの多くの専門家の予想に反して、ソビエトから買い受けた空母の実戦航海も開始している。台湾海峡を越えて攻撃できるミサイルを大量に配備し、在日米軍基地を攻撃できるミサイルや、アメリカ本土を攻撃できる長距離ミサイルも実戦配備を終えている。
 中国軍は2010年に第11次5か年計画を完了して、実戦態勢を完全に配備し終わっている。(略)
 中国が大方の予想を裏切って、2011年、早々と空母の実戦航海を始めたのは、アメリカ海軍に対する対抗措置を早期につくりあげるためであるといわれるが、これと並行して、小型艦艇にミサイルを搭載してアメリカ艦艇を攻撃する態勢を急速に充実させている。アメリカの艦艇を近寄らせず、中国の周辺を安全にしておく態勢とミサイル態勢を完備した以上、中国は必要とあらば、いつでも台湾を軍事的に占領できると考えている。
 中国政府はむろん、その考えをオクビにも出していない。アメリカ政府の首脳も、中国が台湾周辺で危険な行動を始めれば、世界中から非難され資源の輸入に支障が出ると見ている。
p148~
 したがって、中国は台湾を攻撃することはないと思っている。だが考えてみると必要があるのは、これから中国の指導者が代わり、国内の政治情勢も大きく変化すると予想されることである。
 「中国が軍事的な圧力を強化し、台湾を戦わずして占領するか、あるいは短い時間内で軍事的に制圧すれば、日本はもとより東南アジア諸国、そしてアメリカも中国の軍事力の前にひれ伏して、南シナ海も、東シナ海、尖閣諸島も中国の影響下におさまる」
 中国がこう考えてもおかしくはない。中国側が最も懸念しているのは、戦闘が長引き、西太平洋から極東にかけての海上輸送に支障が出た場合、中国経済に重大な危険が及ぶだけでなく、世界中から批判されて輸出に大きな支障が出ることである。中国の台湾制圧が成功するかどうかは、短期間にやれるかどうかにかかっているが、中国はいま述べた第1次軍事力整備計画の完成によって自信を強めているはずだ。
 中国が、南シナ海から東シナ海、そして日本周辺での軍事力を強化していることは、冷戦が終わった現在、世界で最も危険な地域が日本周辺であることをはっきりと示している。中国が大量に配備しているクルージングミサイルや中距離弾道ミサイルは、日本を簡単に攻撃できる。ミサイルの多くは、在日米軍基地を標的にしている。
p149~
 日本では、アメリカの軍事力が中国を封じ込めているので日本は安全だと信じられてきたが、情勢は逆転しつつある。中国国内の政治が不安定になれば、中国の新しい戦略が発動されて、日本を脅かす危険は十分にある。しかも中国だけでなく、北朝鮮も軍事力を強化している。ワシントンの軍事消息筋は、北朝鮮がすでに数十発の核弾頭を保有し、地対地ミサイルや小型艦艇に装備したミサイルで日本を攻撃する能力を持ったと見ている。 
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