死を望む妻、引き留め続けた夫「裁判所は深い同情を感じています。命の大切さを確かめ、生き抜いてほしい」

2010-03-06 | Life 死と隣合わせ

「もう限界、お願い」「つらかったね」妻殺害時の会話
asahi.com2010年3月6日9時39分
 難病の長男の求めに応じて殺して執行猶予となった妻(当時65)から「死にたい」と頼まれて殺害したとして嘱託殺人罪に問われた神奈川県相模原市、運転手菅野幸信被告(66)が5日、横浜地裁で懲役3年執行猶予5年を言い渡された。
 「妻の最期の表情は、本当に楽そうだった。息子のところへ足早に行ったかのように思いました」。菅野被告は2月の被告人質問で話した。穏やかな口調だった。
 死を望む妻と、引き留め続けた夫。3回の公判で明らかになった本人や家族の証言からは、苦悩し続けた夫婦の姿が浮かび上がる。
 昨年10月12日未明。菅野被告は相模原市の自宅で初子さんと向き合った。この夜、初子さんは布団に包丁を持ち込んでいた。「もう限界。一両日中に絶対にやるからね」。菅野被告に訴えた。
 初子さんは有罪判決を受けた後、執行猶予中の06年に自殺を図るなど、長男と一緒に死ねなかったことを悔やみ続けていた。菅野被告もまた、「長男の看病を任せ、自分自身も妻を追いつめた」という負い目を消せないでいたという。
 「妻が息子のために息子を死なせたように、妻のために妻を殺そう」。菅野被告は決意し早朝に2人で家を出た。だが、車中で図った心中は失敗。再び自宅に戻った。
 初子さんは台所から包丁を持ち出した。「お父さんに罪を着せられない」と、自ら菅野被告の前で首を刺した。
 「できないよ」。死にきれずに懇願する初子さん。「いいのか」。問いかける菅野被告に、初子さんは「お願いします。ここだよお父さん」と首を指さした。初子さんは悲鳴もあげなかった。
 最期をみとった菅野被告はこう声をかけたという。「今まで長い間つらかったね。これで楽になったな」。時計は午後2時半を指していた。
 被告人質問で菅野被告は心境を語っている。「家内を殺したことに後悔はないです。しかし、どんな理由があろうと人をあやめるべきではなく、反省しています」(波戸健一、田村剛)
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妻から頼まれて殺害 夫に執行猶予付き判決 横浜地裁
 asahi.com2010年3月5日19時34分
 難病の長男の求めに応じて殺して執行猶予となった妻(当時65)から「死にたい」と頼まれて殺害したとして嘱託殺人罪に問われた神奈川県相模原市、運転手菅野幸信被告(66)の公判が5日、横浜地裁であった。川口政明裁判長は「長年連れ添った妻を自らの手で死なせた苦悩、葛藤(かっとう)は想像の及ぶところではない」として懲役3年執行猶予5年(求刑懲役3年)を言い渡した。
 川口裁判長は「裁判所はあなたに深い同情を感じています」と述べ、「自身で命の大切さを確かめ、生き抜いてほしい」と励ました。
 判決によると、菅野被告は昨年10月12日、自宅で妻初子さんから殺害を頼まれ、首を包丁で刺して失血死させた。初子さんは2004年8月、難病の筋萎縮(いしゅく)性側索硬化症(ALS)を患った長男(当時40)の求めに応じて人工呼吸器の電源を切り、窒息死させたとして、やはり嘱託殺人罪で懲役3年執行猶予5年の有罪判決を受けていた。
 初子さんはその後、長男と一緒に死ねなかった苦悩から日常的に自殺願望を口にしたが、今回の事件までの約5年間、菅野被告が支え、励まし続けたという。

◆ 妻(ALSだった長男の殺人罪で執行猶予中)の嘱託殺人罪で夫に執行猶予判決
◆ 愛する者の苦しみを取り除くために、その命を絶つ行為は罪か--妻は「これでやっと楽になれる」と遺書


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