東京都との交渉があくまで優先、尖閣諸島地権者の思いとは?

2012-07-22 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉

東京都との交渉があくまで優先、尖閣諸島地権者の思いとは?
2012年07月21日 12時22分 UPDATE [堀内彰宏,Business Media 誠]
 石原慎太郎都知事が、4月に講演で触れたことをきっかけに尖閣諸島の民間からの買い上げ問題。渦中にある、尖閣諸島を所有する一族の栗原弘行氏が交渉の現状や日中関係などについて説明した。その内容を詳しくお伝えする。
■まずは東京都への売買交渉が優先
栗原 私は政治家ではありませんし、政府の人間でもありません。一民間人でして、たまたま尖閣諸島を所有している一族の者です。いずれにしても、栗原家という部分については諸外国の方々も含めて、なかなか知っていただいていないので、「誤解などがあっては非常にまずいだろう」ということで、このような席をみなさまのご協力を得て、設けていただきました。
 私は本年で65歳になりますが、初代(所有者)の古賀辰四郎さんからの尖閣諸島のいろんな歴史などを学んでいます。まだまだ勉強不足ですが、みなさまに知っていただかなくてはいけないのかなと思っています。
 世界でも共通ですが、日本では特に三猿、「見ざる、聞かざる、言わざる」という言葉があります。今日に至りますと、触らず、思わざるということだったのですが、そういう心境です。そのような気持ちで今日はお答えしたいと思っています。
――尖閣諸島を最終的に国と東京都のどちらに売るのか、もし判断基準があれば教えてください。
栗原 スタートラインは東京都への売却ということで話し合いが全体で進んでいます。俎上に政府など(への売却)のお話がありますが、最初のお話を蹴飛ばしていきなり政府または国(への売却)というようなものは現在は私どもとしては考えていません。
 判断基準としては、Aさんとの売買交渉が終わっていない間に、Bさんに売ってしまおうかなというような心情の持ち合わせがないということです。
――栗原家はどのようにして尖閣諸島の所有権を得たのでしょうか。
栗原 尖閣諸島の名義は、私の兄と妹です。そもそも私たちに所有権が渡ったいきさつは前所有者の古賀家にお子さまがいらっしゃらなかったことと、私の父と古賀善次さんが友人関係だったことにあります。
 AさんからBさん、BさんからCさん、CさんからDさんと所有権がどんどん変わることで、古賀家の歴史が消滅してしまいます。それを維持してほしいということが第一目的です。もし栗原国起(栗原弘行氏の兄で所有権を持つ)が維持できない場合には、自治体や国(に所有権を渡す)ということが大前提の移譲です。経済的な目的で購入したのではありません。私たちも今、現在兄で17代の係属が存続していますので、古賀家の歴史、それから栗原家の歴史というものを重んじた行為です。
 私たちが所有して40年経っていますが、その間に経済的な要因で活動したことはありません。
――尖閣諸島ではどのような経済活動ができるとお考えですか。
栗原 人間が生きていくには食生活が重要で、日本は農耕民族ですが、なおかつ水産資源も必要な民族です。東シナ海は水産資源が非常に豊富なところですが、この開発をしていくためには冷凍庫や冷蔵庫などがないと至難です。
 その部分が確立して、日本人だけではなく、台湾の方も中国の方も生活があるわけですから、水産資源をお互いにうまくすることができれば経済活動としてはベストと考えています。
 東シナ海の外では、マグロなどの水産資源が非常に豊富です。これは先月、石垣の漁民が獲ったマグロです。約350キログラムあります。このような水産資源を多く開発していきたいと40年間、私たちも考えています。これが経済活動になりえるだろうと考えています。
■東京都の上陸申請は容認
――東京都が調査のため尖閣諸島に上陸することを申請していることについてどのようにお考えですか。
 これはあくまで一般論で考えていただきたいのですが、賃貸借契約を国と栗原家で締結しています。一般論で言うと、借主側が善良なる管理義務者ということになるので、阻害要因が起きるという考えがあれば、借主側が拒否するという状況だと思います。
 今回は(東京都への)売却ということがありますので、当然経済活動とのプラスマイナスを考えないといけませんから、そこの部分では当然、所有者側としての意志としては、上陸を許可というよりは、上陸をさせざるを得ない状況だと思います。
――私は1998年に栗原さんのお兄さん(栗原国起氏)にインタビューしたことがあります。その時もちょうど尖閣諸島で争いがありまして、お兄さんは「こういう問題は国と国が決めることだ」と答えました。今でもそう思いますか? また、なぜ石原都知事との交渉を続けているか、そして石原都知事や国以外にも交渉しに来る人はいますか。
栗原 実は一番びっくりしているのは、兄とお会いしたことがあるんですか。
――はい。
栗原 兄弟といえども初耳なので、質問の内容よりそちらの方がビックリしてしまいました。いずれにしても兄は古賀善次さんとの約束事がありますので、歴史が消えるような行為は一切やりません。すなわち民間には売らないということです。たまたま今回は結果的に石原さんが都知事だったということで、もし石原さんが衆議院議員だったら国との話し合いになっていたかもしれません。現時点で都知事であるということが重要です。
 先ほど少し申し上げましたように民間という意味合いでしたら、40年間の間に数十社はありましたが、すべて頭からお断りしました。
――栗原家に所有権が渡ったという1970年、沖縄はまだ米国占領下でした。どのように所有権が移転していったか教えてください。
栗原 1970年に最初に古賀さんと、北小島と南小島の売買の話からスタートしています。そして1972年の沖縄返還後、実質的に所有権が移転しています。次に、1978年に魚釣島の売買。そして最後に久場島が、1988年に私たちの方に来ています。
 久場島は米軍占領時から射爆場で使用していましたが、返還以降は現在まで使用していません。ただ、防衛省の那覇の施設局の方で賃貸借契約が継続されているというのが実情です。
――尖閣諸島は全体で何島あるんですか。
栗原 (栗原家が所有しているのは)4島です。大正島は国有地ですから全部で5島ですが、5島のうち4島が個人所有です。
――民間ではなく、外国からのアプローチはありましたか。
栗原 外国企業や外国人からのアプローチは、まったくありません。あくまでも日本企業などの形で来ています。その先について調査して、これはどこの国だ、これはあっちの国だというのは、一切やる必要性を感じていませんでした。
――東京都の尖閣諸島購入計画を批判していた丹羽宇一郎駐中国大使が先日、事情説明のために一時帰国しましたが、玄葉光一郎外務大臣は野党の更迭要求には応じないとしています。これについて感想をお聞かせください。
栗原 丹羽大使の発言は私人の発言と政府のコメントでは発表していますので、「一私人としての発言なんだな」ということしか私たちは解釈していません。
■海外にこの問題を知ってもらいたかった
――栗原家の中で見解の違いはありますか。また、なぜ今回会見されることになったのですか。
栗原 私たちは現在4人の兄弟しか残っていません。栗原家は長兄主義、長男が継承すればいいという覚悟があり、兄が右に向けと言えばはい、左に向けと言えばはいという状況で、兄弟の中でバラバラということはないので、私が申し上げることも兄弟が申し上げることもまったく一緒です。
 それと、現在の誤解などは、実際の売買の数値だけが走っていくことにあります。実際に相続の問題とかを考えると、尖閣諸島の場合は経済評価の付けようがない状況なんですね。そこの部分は東京都も栗原家側も経済の価値としてのプラスマイナスということを今、精査している最中です。どの数字が正しいかということは双方一切発表していませんので、ただ単に損得だけの話しっぷりのものも、週刊誌などで飛び交っているので、その辺は少し誤解という部分で最初に紹介しておきたいです。
 それとこのままエスカレートしていくと、栗原家側が欲張りでこういうことをやっているようにも思われるのではないだろうかという不安がちょっとあります。
 それと、国内ではある程度知られてきていますが、海外でほとんど知られていないという問題は、日本の経済を考えると、必ずしもプラス方向ではないでしょう。先ほど、尖閣諸島の経済問題で水産資源を活用したいという話を申し上げましたが、お互いにうまくできる状況を作るためにその辺をしっかりと定着させていきたいと考えています。
 これは私一個人の見解として聞いていただきたいのですが、誤解の部分にもう1個だけ付け加えたいのは、民間だろうが国だろうが、危機の予知能力は当然備えるべきです。危機の場合の迅速な判断ってどういうことが必要だろうと考えた時、膨張国家というのは旧ソビエト連邦は(建国から)74年で崩壊、日本も(明治維新から第二次世界大戦終結までの)77年で崩壊というのがあります。膨張国家のプロセスでは非常にいざこざが起きていきますから、これは世界の歴史的なことの中でご理解いただければと個人的には思っています。
――栗原さんがこの問題の存在を外国の人にも知ってもらいたいということで日本外国特派員協会にお越しになったのは誠に適切だったと思うのですが、日本の大衆に強く訴えるために日本記者クラブでの会見も有益だと思います。今まで日本記者クラブから話に来てくれとアプローチはあったのでしょうか、もしアプローチがあれば応じる用意はありますか。
栗原 今までの40年間、海外メディアでお目にかかったのは20~30年前にCNNだけです。今回は10社以上の海外メディアの方々がお越しいただいています。そういうことを含めまして、スタートラインがたまたま日本外国特派員協会ということになり、国内の方では各社が随時お出でいただいている関係で、日本記者クラブという形では過去現在においても一切ございません。
 そういうご要望があるなら、決して出向くことはやぶさかではございませんので、機会をとっていただければ考えさせていただきたいと思います。
――石原都知事は尖閣諸島について経済的な側面を見ているのではなく、国防という面で見ているように思います。石原都知事の考え方をどのように思われますか。
栗原 石原都知事は、私たちと約40年間くらい行き来があります。石原都知事はやはり経済活動というものがどういうものであるかということが根底にあるのではと。これは直接うかがっているわけではないですが、島嶼経済学という経済学があり、その島嶼経済学はなかなかご理解いただいていない部分が多いので、多分そこを省いているのではないかという気がします。これは私の個人の考え方です。
 島嶼経済学というのは、小さな島があります。この小さな島だけでは経済が成り立たない。そこで、その周辺の海を含めた部分で考えるのが島嶼経済学です。島単一では経済効果が低いですが、その周辺の海を考えた時にマクロ経済の原理になります。島嶼経済学というのが世界どこでも成立しているはずなので、1回ご確認いただきたいのですが、多分都知事はそこを言いたかったんだろうと思いますが、ほとんど知られていないので、時間を省いたのではないかと私はそんな感じがします。
 島が小さくて、周りの海が必要だと申し上げている中に当然水産資源ということがあるのですが、例えばリゾート地にした場合に海浜があったりと、例えばハワイ島がいい例ですね。そういう部分を考えていただくと島嶼経済学をご理解いただけるかなと思います。
 先ほどの誤解の部分というのはこの部分を含んでいるんですね。そういう考え方もあるのかとご理解いただければと思います。偉い人というのは、面倒くさいからそこを細かく説明しないんだと思います。それが石原都知事だったのではないかと推測します。
――2010年9月に発生した尖閣諸島付近での中国漁船と日本の巡視船との衝突事件について、どのように感じられていますか。
栗原 2010年9月の衝突事件はよく覚えています。まもなく海上保安庁のある方からビデオがリリースされた(YouTubeにアップされた)こともよく覚えています(参照記事)。当初はそういうビデオなどの映像を出さないことになっていたようでしたが。
 私は尖閣諸島にほとんど海上保安庁の船で行き来していたのですが、海上保安庁の人たちは自分たちの領海を守るために、必死に活動している方々なんですね。(ビデオが)流れた行為自体は賛否両論でどちらがいいかは分かりませんが、いずれにしてもあの事件は起こるべくして起きたのか、故意的に起きたのかという判断は私にはできません。ただ、起きた結果で言った場合にはあまりよろしくない状況だったのではないかと。すなわち船尾にぶつけているということですね、船では船尾にぶつけるのが一番危険です。
――衝突事件そのものが犯罪だと思いますか。
栗原 起きた結果で判断はできないと思います。そういう風に思う方もいらっしゃるかもしれませんし、偶発的と考える方もいるかもしれません。私は現時点ではどちらとも答えられないということです。ぶつかるまでの映像を見ておらず、ぶつかっているところしか分かっていないので私は判断できません。
■東京都と一個人の売買の方がスムーズなはず
――領有権の問題が起こっていることについてどのように感じていらっしゃいますか。
栗原 「このままいくと戦争になるのではないか」という話がよく出るのですが、世界的に考えた時にそのようにならない状況を作るためには、お互いにこういう風に言い返すような状況のものを設定しない方がいいと思うんですね。すなわち東京都と一個人の売買の方がスムーズなはずなんです。
 国が買おうとすると、余分な発言が出てきます。例えば、国が購入すると、尖閣諸島の領海内に中国の監視船が入ってきた時、当然日本の巡視船が「ここは日本の領海だから出て行け」と言い、(中国の監視船は)「ここは中国の領海だから出ていけ」とお互いがお互いに言い合える状況を設定してしまうリスクが非常に大きくなるでしょう。
 日本の船と中国の船がお互いに言い合ってしまうというような実例ですが、7月17日に「中国の明の時代に『尖閣諸島は明のものはない』と明記されている(参照リンク)」と日本政府からではないですが日本側から発信されると、翌日の7月18日には香港の方から、「旧日本陸軍が作った地図の中に尖閣諸島が入っていない、だから日本のものではない」と発信されました。
 1つのテーマが精査されないうちに、お互いの言い合いがエスカレートしていくととても危険です。すなわち中国ではあるか分かりませんが、日本政府にシンクタンクがないのが一番の難点なのかなと感じています。
――自治体や政府に尖閣諸島を売りたいということは、栗原家に子どもがいないことで維持できないからということですか。
栗原 兄に子どもがいないということもそうなのですが、もう兄は70歳なので体力的、知力的にせいぜい頑張っても5年生きるか生きないかという状況だと思います。自分が生きている間に次の世代にしっかりと渡しておきたいという気持ちだと理解しています。兄は40年間守っていますので、疲れたんじゃないでしょうか。
――先ほど将来の危険を予測して迅速な判断をすることが大切だとおっしゃいましたが、石原都知事と尖閣諸島の売買契約交渉をされているということは何か具体的な危険や危機を予測しての動きなのでしょうか。
栗原 私は危険予知と言っていませんので、危機という風にご理解いただきたいのですが、危機予知能力という部分で申し上げると、先ほど申し上げたように、兄はもう70歳ですから自分の余命という危機予知とご理解いただきたいと思います。
 さも戦争が起こるがごとくのような表現方法が非常に飛び交ってしまうのですが、冒頭に申し上げましたように、私は政府の人間ではありませんし、当然政治家でもなく、一民間人なので、一民間人が40年間守ってきたということを1つご理解していただきたいと感じます。少なくとも危機と危険とを勘違いしないでいただきたいということです。
――栗原家で持ち続ける方がいいのではないでしょうか。
栗原 栗原家で持っている時に、兄弟は4人しかおらず、高齢で順次亡くなっていきますので、かえって持っている方が危険だと思います。
――この問題をめぐって日本と中国の国民感情が、この前の世論調査では非常に悪化しています。栗原家の方は今の日中関係をどのようなお気持ちで受け止めていらっしゃるのか、この問題の解決に向かって何かもしご提言があれば教えてください。
(会見を調整した)アイダヒロフミ氏 栗原さんとお話ししていて、決して栗原さん自身は国同士の争いは当然のことながら望んでいません。
 栗原さんが考えていらっしゃるのは、今回の尖閣諸島、民間が持っているところで国同士の問題になっているというのは非常に珍しいケースということ、もう1つ栗原さんがよくおっしゃっているのは、「世界中すばらしい人たちがいる。みなさんの国それぞれどの国でもすばらしい人がいる。それなのに国の問題になってしまうと幼稚園児のような子どもの争いをしてしまう。ですから、せっかくの機会なので、一民間人として世界の方々に自分なりの問題提起をここにいらっしゃるジャーナリストのお力をお借りして、問題提起というと大げさかもしれませんが、みなさんで考えることをやっていただければ」ということです。それで私の方に栗原さんから依頼がありまして、この場を設けさせていただけました。
――本日の報道では国が避難港あるいは灯台を作ると提案するようですが(参照リンク)、国からそういった説明を受けていらっしゃるのでしょうか。
栗原 1970~80年代に沖縄漁民などの漁業という部分で、当時から灯台または避難港(が必要)というのがずっと1つのテーマになっています。それだけに(尖閣諸島の所有権が)国になろうと東京都になろうと、生活基盤を考えた時には灯台または避難港というのが一番いいと思います。
――国からの提案はあったのでしょうか。
栗原 1970~80年代にそのような話はありましたが、現在はございません。
――今日の中国側の世論調査で、尖閣諸島の主権問題で9割が武力行使してもいいという状況になっているのですが(参照リンク)、これでも売ったりするようなことを考えていますか。
栗原 非常に答えづらいのですが、なぜそこに結び付くのかよく理解できないですね。9割の方というのがマスコミの方たちも中国は13億人ですから、10億人の方々がそういう意見だということだと思うのですが、どのようにカウントしたのか分からないのでお答えのしようがありません。
 正直なところ言いまして、みなさんは見識あるジャーナリストの方たちと思いますので、戦争に持っていくようなコメントを控えていただくとありがたいと感じます。
――いつまでに売るといったようなタイムラインみたいなものはありますか。
栗原 現在、国と私たちで2013年3月いっぱいまで賃貸借契約が存在していますので、最終的にはこれが過ぎた後だと思います。なるべく早くにまとめられればと考えています。
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国防のためにすべきことを行わない国家には、領土も領海も存在しないに等しい 『新・堕落論』石原慎太郎 2012-07-21 | 政治〈領土/防衛/安全保障〉 

    

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田母神俊雄著『田母神国軍 たったこれだけで日本は普通の国になる』(産経新聞出版)
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自分の国は自分で守る決意/境外を保護するのは法律、正義、自由ではない。国際法も国力の強弱に依存2011-01-12


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