トヨタ、巨体故にライバルに比べ業績回復の足取りは遅い

2009-12-21 | 社会
【底流 ニュースの裏側】トヨタ、プリウス依存症? 章男社長、苦渋の半年
産経ニュース2009.12.20 07:47
  トヨタ自動車の社長に創業家出身の豊田章男氏が就任して23日で半年がたつ。世界同時不況でひずみが露呈した拡大路線と決別。平成23年3月期の黒字転換を“公約”に掲げ、F1撤退や米ゼネラル・モーターズ(GM)との合弁工場閉鎖など矢継ぎ早に「苦渋の決断」を下した。だが、巨体故にライバルに比べ業績回復の足取りは遅い。米国でのアクセルペダルの無償改修や円高など難題も次々に降りかかってくる。トヨタ再生の前途は多難だ。(鈴木正行)
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 ■決断の連続
 「対応がまずかった面は否めない」
 ある幹部がこう認めざるを得ない米国でのフロアマット問題が、今のトヨタの現状を象徴している。
 米道路交通安全局が、トヨタの「レクサス」などで、アクセルペダルがマットに引っかかり、事故が起きる恐れがあると指摘したのが9月。トヨタはすぐにマットの取り外しを呼びかけた。
 トヨタは「問題はマットにある」との立場で米当局と調整を続けたが、11月下旬に「車体に欠陥は見つからなかった」としながらも、結局、約426万台のペダルを自主改修する事態に追い込まれた。費用は数百億円に上る見通しだ。
 「お客さまの安全を最優先にする」という豊田社長の決断だ。だが、2カ月もの時間を費やしたことで、それまで米国で築いてきたトヨタ車の安全性に対する信頼は大きく揺らいだ。
 ■大企業病
 就任からの半年はまさに決断の連続だった。
 11月4日には今季限りでF1レースから撤退することを発表。「ファンのことを考えると身につまされる思いだ」と唇をかんだ。今夏に参戦継続を決めていただけに、急転直下の方針転換に、「社長になって立場が変わった」と声を振り絞るしかなかった。
 8月には経営破綻(はたん)したGMとの合弁工場「NUMMI(ヌーミー)」(カリフォルニア州)の閉鎖も決めた。
 1984年に発足し、自ら社長を務めたこともあるヌーミーは、トヨタの米国本格進出の足場になると同時に、地元経済を支え、米国にとけ込む礎になった思い入れの深い工場だ。社内には「単独で存続させるべきだ」との声もあったが、米国の新車販売が急減し余剰生産能力が足かせとなる中、労務コストが高く、老朽化で生産性も低いヌーミーを抱え続けることはできなかった。
 トヨタに詳しい東海東京調査センターの加藤守・名古屋調査部副部長は「いわゆる大企業病をわずらっているトヨタでは、創業家出身の章男社長が決断するしかなかった」と指摘する。
 それでも、株式市場では「まだまだ対応が遅い」(アナリスト)との声が消えない。
 最大のライバルのホンダと比べると、業績回復の遅れは鮮明だ。ホンダの22年3月期決算は連結営業利益が前年同期比0・2%増の1900億円と増益を確保する見込み。対するトヨタは当初予想の8500億円の赤字から上方修正したとはいえ、3500億円の赤字と水面下のままだ。
 円高対応力でも見劣りする。ホンダの下期の想定レートが1ドル=85円に対し、1円の円高で300億円の収益が吹き飛ぶトヨタは90円。ペダルの改修費用と円高で業績が下振れするリスクはぬぐえない。
 日産自動車1社分に匹敵する300万台の余剰生産能力も、一部生産ラインの休止で対応しており、ヌーミー以外は手付かずだ。
 ■攻めと守り
 今月9日にはスズキと独フォルクスワーゲン(VW)が包括提携で合意。世界販売台数で昨年、GMを抜いて世界トップに立ったトヨタをしのぐ巨大グループが誕生した。
 トヨタでは「社長も数字を追わない考えだ」(布野幸利副社長)と意に介さない。だが、スズキ・VW連合は、小型車に強みを持ち小回りが利く。トヨタが出遅れているインドや中国などの新興国市場でもリードしており、大きな脅威だ。
 HV(ハイブリッド車)の「プリウス」は、国内新車販売ランキングで6カ月連続の首位を快走。2年後に家庭電源で充電できる「プリウスPHV(プラグイン・ハイブリッド)」を市販する計画をぶち上げるなど、エコカー戦略では着実に手を打っている。しかし、売れる車種が偏る「プリウス依存症」を指摘する声もある。
 「攻める分野と退く分野を今一度見定める」と就任時に語っていた豊田社長。黒字化の公約期限まで残された時間は1年半しかない。攻めと守りを同時に進める力量が試されている。
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