日経新聞 社説2 首相はなお口をつぐむのか(11/27)
もはや「個人の資金だった」という説明だけでは済まない。
鳩山由紀夫首相の偽装献金問題は虚偽記載の総額が4億円を超え、さらに首相の実母から巨額の資金提供があった疑いが浮上した。会計処理のずさんさに驚くとともに、首相の資金問題への疑惑は深まっている。
首相が6月末の記者会見で公表した資金管理団体への架空の個人献金は2005~08年の合計で2177万円。名前の記載義務がない小口献金でも、04~08年の収支報告書に記載された1億7717万円の大半が鳩山家の資産管理会社「六幸商会」の資金だとみられている。
首相は資金の引き出し時に署名した事実を認めつつ、虚偽報告については「完全に秘書を信頼していた」と一切の関与を否定している。原資もすべて個人資金だと強調し、親族の財産の流用などは「ないと信じている」と繰り返してきた。
ところが関係者の証言などによると、首相の母親は首相側の依頼に応じ04年ごろから5年間で約9億円を資金提供し、一部が偽装献金の原資に充てられていたという。
政治家本人の資金管理団体への寄付は年間1千万円、個人の寄付は150万円の量的制限がある。このため資金はいずれも「貸付金」だったとされる。そうだとすれば「貸付の名義や返済期限、金利はどうなっていたのか」「本当に元秘書の一存だったのか」という疑問が生じる。
政治資金規正法は政治家が絡む資金の流れを透明化するとともに、資産家が選挙や政治活動で極端に有利にならないようルールを定めている。ずさんな会計処理は、こうした立法趣旨を真っ向から否定する行為である。
首相は献金問題の全容解明について「捜査を待ちたい」とし、国会での説明も「国対(国会対策委員会)に任せている」と人ごとのような発言に終始している。自民党は「実質的な贈与税や相続税逃れの疑いが濃厚だ」と批判しており、このままでは疑惑は深まるばかりだ。
首相が自ら説明責任を果たさないのであれば、国会での集中審議や参考人招致などを視野に入れるべきではないか。「政治とカネ」を巡る問題への与党の姿勢も問われている。
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鳩山献金疑惑―「ずさん」にも限度がある
朝日新聞 社説2009/11/26
鳩山由紀夫首相の資金管理団体をめぐる偽装献金問題に絡んで、また新たな問題が浮上した。首相の母親の資金が、偽装献金の原資だった疑いが出てきたのである。
一連の問題ではまず、資金管理団体の政治資金収支報告書に記載された個人献金者として、亡くなった人や献金した覚えのない人の名前が含まれていたことが発覚。東京地検は、1件5万円以下で氏名を記す必要のない献金の大半と合わせ、2億円超を偽装と見て、元公設第1秘書を政治資金規正法違反(虚偽記載)の疑いで立件する方向で詰めの捜査に入っている。
焦点のひとつが、偽装献金の原資はだれのカネか、である。首相は6月の記者会見で、首相個人の資金だったと説明した。今月4日の衆院予算委員会で、母親からの資金が含まれるか聞かれた際も「知る範囲でそのようなことはないと信じている」と答弁した。
ところが関係者によると、04年から08年に、数千万円の母親の資金が原資に充てられていた疑いがあるという。事実とすると、問題は新たな局面に入ることになる。
政治家本人以外の個人が資金管理団体に献金できるのは年150万円までであり、今回の疑惑はこの上限を大きく超える。首相への贈与なら贈与税が生じる可能性がある。首相への貸し付けだったとすればそうした問題は起きないが、すべて自分の資金だと言ってきた従来の説明と明らかに食い違う。
首相は母親の資金が充てられた疑惑について「私の知らないところで何が行われていたのか。真実が見えないところもあって大変驚いている」と記者団にコメントした。首相は先に、恵まれた家庭に育ったことを理由に挙げて「資産管理が極めてずさんだった」と記者団に語ったが、事実なのに知らなかったとすれば、もはやずさんという言葉で言いあらわすこともできない。
首相は予算委で、政治改革に取り組んできた自らの原点について「おカネを持っている持っていないではなく、青雲の志を持った人間が国会議員になれる道をつくろうというところがスタートラインだった」と語った。
だが、実際は金持ちの有利さを最大限に活用してきたのではないのか。うさんくさい企業からのカネではなく、自分のカネなのだから問題ないと高をくくっていたとすれば、思い違いもはなはだしい。
もし、首相がこうした献金偽装の内実を承知していたとすれば、自身が法律違反に問われることになる。事態の重大さを認識しているのだろうか。
首相は所信表明などで国民へのおわびを語っているが、疑惑は次から次へとわいて出る。自民党などが求める衆院予算委での集中審議に応じ、献金をめぐる追及に正面から答えるべきだ。
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〈来栖のつぶやき〉
生活に困窮を極める国民、庶民の生活感覚とは、あまりに懸け離れている。鳩山氏は口を濁すばかりだ。うんざりだ、もう。逃げないで下さい。
もはや「個人の資金だった」という説明だけでは済まない。
鳩山由紀夫首相の偽装献金問題は虚偽記載の総額が4億円を超え、さらに首相の実母から巨額の資金提供があった疑いが浮上した。会計処理のずさんさに驚くとともに、首相の資金問題への疑惑は深まっている。
首相が6月末の記者会見で公表した資金管理団体への架空の個人献金は2005~08年の合計で2177万円。名前の記載義務がない小口献金でも、04~08年の収支報告書に記載された1億7717万円の大半が鳩山家の資産管理会社「六幸商会」の資金だとみられている。
首相は資金の引き出し時に署名した事実を認めつつ、虚偽報告については「完全に秘書を信頼していた」と一切の関与を否定している。原資もすべて個人資金だと強調し、親族の財産の流用などは「ないと信じている」と繰り返してきた。
ところが関係者の証言などによると、首相の母親は首相側の依頼に応じ04年ごろから5年間で約9億円を資金提供し、一部が偽装献金の原資に充てられていたという。
政治家本人の資金管理団体への寄付は年間1千万円、個人の寄付は150万円の量的制限がある。このため資金はいずれも「貸付金」だったとされる。そうだとすれば「貸付の名義や返済期限、金利はどうなっていたのか」「本当に元秘書の一存だったのか」という疑問が生じる。
政治資金規正法は政治家が絡む資金の流れを透明化するとともに、資産家が選挙や政治活動で極端に有利にならないようルールを定めている。ずさんな会計処理は、こうした立法趣旨を真っ向から否定する行為である。
首相は献金問題の全容解明について「捜査を待ちたい」とし、国会での説明も「国対(国会対策委員会)に任せている」と人ごとのような発言に終始している。自民党は「実質的な贈与税や相続税逃れの疑いが濃厚だ」と批判しており、このままでは疑惑は深まるばかりだ。
首相が自ら説明責任を果たさないのであれば、国会での集中審議や参考人招致などを視野に入れるべきではないか。「政治とカネ」を巡る問題への与党の姿勢も問われている。
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鳩山献金疑惑―「ずさん」にも限度がある
朝日新聞 社説2009/11/26
鳩山由紀夫首相の資金管理団体をめぐる偽装献金問題に絡んで、また新たな問題が浮上した。首相の母親の資金が、偽装献金の原資だった疑いが出てきたのである。
一連の問題ではまず、資金管理団体の政治資金収支報告書に記載された個人献金者として、亡くなった人や献金した覚えのない人の名前が含まれていたことが発覚。東京地検は、1件5万円以下で氏名を記す必要のない献金の大半と合わせ、2億円超を偽装と見て、元公設第1秘書を政治資金規正法違反(虚偽記載)の疑いで立件する方向で詰めの捜査に入っている。
焦点のひとつが、偽装献金の原資はだれのカネか、である。首相は6月の記者会見で、首相個人の資金だったと説明した。今月4日の衆院予算委員会で、母親からの資金が含まれるか聞かれた際も「知る範囲でそのようなことはないと信じている」と答弁した。
ところが関係者によると、04年から08年に、数千万円の母親の資金が原資に充てられていた疑いがあるという。事実とすると、問題は新たな局面に入ることになる。
政治家本人以外の個人が資金管理団体に献金できるのは年150万円までであり、今回の疑惑はこの上限を大きく超える。首相への贈与なら贈与税が生じる可能性がある。首相への貸し付けだったとすればそうした問題は起きないが、すべて自分の資金だと言ってきた従来の説明と明らかに食い違う。
首相は母親の資金が充てられた疑惑について「私の知らないところで何が行われていたのか。真実が見えないところもあって大変驚いている」と記者団にコメントした。首相は先に、恵まれた家庭に育ったことを理由に挙げて「資産管理が極めてずさんだった」と記者団に語ったが、事実なのに知らなかったとすれば、もはやずさんという言葉で言いあらわすこともできない。
首相は予算委で、政治改革に取り組んできた自らの原点について「おカネを持っている持っていないではなく、青雲の志を持った人間が国会議員になれる道をつくろうというところがスタートラインだった」と語った。
だが、実際は金持ちの有利さを最大限に活用してきたのではないのか。うさんくさい企業からのカネではなく、自分のカネなのだから問題ないと高をくくっていたとすれば、思い違いもはなはだしい。
もし、首相がこうした献金偽装の内実を承知していたとすれば、自身が法律違反に問われることになる。事態の重大さを認識しているのだろうか。
首相は所信表明などで国民へのおわびを語っているが、疑惑は次から次へとわいて出る。自民党などが求める衆院予算委での集中審議に応じ、献金をめぐる追及に正面から答えるべきだ。
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〈来栖のつぶやき〉
生活に困窮を極める国民、庶民の生活感覚とは、あまりに懸け離れている。鳩山氏は口を濁すばかりだ。うんざりだ、もう。逃げないで下さい。